豹変
コンコン
私の部屋のドアがノックされる
「シャーリー♪」
そう言って私の胸に飛び込んでくる彼女を抱きしめる
私は部隊の中で一番背が大きいが、彼女は一番小さい
今年で13才
ほんの二ヶ月間だが私との年の差は3歳になる
「ん?どうした」
抱きしめつつ考える
彼女は私に何を求めているのだろうか?
自由奔放は彼女が私に懐いてくれるのは嬉しい
けど、それは私を母親の代わりを求めているのでは?
それでも嬉しいのだが、私としては少し寂しくもある
・・・・・ダメだな最近この事ばかり考えている
「んー別に用はないよ。ただシャーリーにくっつきたいだけ」
「ははっ嬉しいこと言ってくれるじゃないか」
「・・・・ねぇシャーリー、私今年で13歳になるんだよ?」
「知ってるよ、その割にはツルペタだよな」
「むー私はこれからなの!そっちが育ちすぎなだけ!」
「私がお前くらいの時は、もうある程度大きかったけどな」
「うぅ私は後からおっきくなるタイプなんだよ・・・・たぶん」
「まっ胸の大きさなんてたいした問題じゃ無いって」
「そっそうだよね!それに私は今年で13歳だよ?どう?大人っぽい?」
そう言っていろいろポーズを取ってみるが
正直幼児体型だなぁというくらしか感想は無かったが
まぁルッキーニの魅力は容姿だけでは無いので私は構わない
「うん大人っぽい大人っぽい」
「あーシャーリー馬鹿にしてる?」
「そんな事無いって、それにほら最近少し背も伸びただろ」
「えっ!ホント?」
「あぁ」
「でもシャーリーとはまだまだ遠いなぁ」
身長差約20㎝
正面に立つと彼女の頭は私の胸のあたり
見下ろす私と見上げる彼女
「早くシャーリーと同じくらい大きくなりたいなぁ」
「私は今のままでも可愛いからいいけどな」
「えへへありがと。でもさ二人で町に行っても姉妹くらいにしか見られないじゃない?
私としてはシャーリーと対等に見て欲しいの。あ~ぁ早く大人にならないかなぁ」
「いいじゃないか姉妹に見られても」
「んーまぁ町の人にそう見られても別に構わないんだけどね。
私はシャーリーに子供扱いされなければ」
「私に?」
「そう」
いつのまにか彼女の目が細くなっている
まるで狩をする動物のようだ
この目に弱い動けなくなる
「・・・・・ねぇシャーリー私の事好き?」
「もちろん」
「それはどうゆ意味で?」
「どうって・・・・」
「シャーリーは私の事を好きと言ってくれる。私の事を大切にしてくれる」
「・・・・・・あぁ」
「でも、おでこにしかキスしてくれない
体も触ってくれない、それはなんで?」
「・・・」
「私がまだ子供だから?違うよね?」
彼女の私への気持ちは
母親にむける無邪気な愛情では?
絶対的な信頼の現れでは?
心の中でその考えが邪魔する
いつかこの子は私の元を離れるのでは?
自由奔放な彼女が好き
だから彼女を縛ることはしたくない
「ねぇ?何を怖がってるの?」
「っ!」
まるで心を覗かれたようだ
戦闘の時意外見たことの無い真剣な顔
「シャーリーが何を怖がってるのかは分からないけど
でもね、私はいつまでも待ち続けるのは性分に合わないの」
跳躍
まるで猫のようなしなやかさで、私の首に手を回し
唇を押しつけてきた
「んっ」
「おっおい」
「えへへしちゃったね」
そう言って私の首元に匂いを付けるように頭をすりつけてくる
いきなりの事に頭が付いていかない
ビックリして床にへたり込んでしまった
「ねぇシャーリー?」
ぐっと彼女に肩を押されて
「シャーリーは私の物なんだから、私の側から居なくなっちゃダメだよ?」
ドサリと押し倒され
四つん這いの彼女に押さえられる
ずっと子供だと思っていた
いつもいつも無邪気にたわむれているだけ
でも違った彼女はもう立派に狩ができる年なのだ
今頃気がついたどうやら私は狩られてしまっていたらしい
しなやかな体
かすかに香る草の匂い
彼女は黒豹
私は兎
捕まえられたらもう逃げられない――
終わり