Plural-episode-4-


その日から私は毎日宮藤さんと話をした。
宮藤さんは私の世話をよくしてくれて、基地の案内もしてくれた。
私達は敵と戦うために各国から集められたらしい。
敵――ネウロイ
まだこの目で見たことは無いが資料では読んだ。
あんな物と自分は戦っていたんだと思うと、記憶は無いけど怖くなる
今の自分には魔力の使い方もストライカーでの飛び方もまるで覚えていない
なんでも私と宮藤さんは新人で私の方がほんの少しだけ先輩らしい。
宮藤さんが基地に来た時は私が案内したらしい。

「わたしとリネットさんの部屋は隣同士なんだよ。部屋に戻れるようになったらいつでも来てね」

リネットさん
彼女は私の事をそう呼ぶ。リーネという愛称ではなく。
それは‘今の‘私と‘昔の‘私を別けているようで少し寂しくなる。
宮藤さんと私は親友だったらしい。私は芳佳ちゃんと名前で呼んでいたらしい
呼びたいな名前・・・・

「あの・・宮藤さん」
「んなに?」
「あっあのね・・昔呼んでたみたいに私達名前と愛称で呼んじゃ駄目かな?」
「えっ・・」
「ほっほら昔と少しでも同じようにすれば、記憶も戻るかもしれないから・・・・駄目かな・・・」
「そんな事無いよ!よろしくねリーネちゃん」
「うん芳佳ちゃん」

よかった。芳佳ちゃんの笑顔は不安な私の心を晴らしてくれる。
きっと芳佳ちゃんが居なかったら私は病室に篭もりっきりだっただろうに・・・

「さっ次はハンガーだよ。ここはストライカーが置いてあったり武器を保管してるんだよ」

ストライカー
これで私は空を飛んだんだろうか?
全然想像できない

「あれ?坂本さん?」

ふと見ると坂本少佐が居た
芳佳ちゃんと同じ国の人、気がついた私に今の状況を説明してくれた人だ。

「あぁ宮藤にリーネかもう歩いても大丈夫なのか?」
「はい」
「そうか大分良くなったんだな」
「ところで坂本さんは訓練ですか?」
「いや違うリーネのストライカーと銃が届いたんでなそれの受け取りだ」
「私の?・・・でも私は」
「なに記憶の無いお前に戦いに出ろとは言わんさ、ただいつ記憶が戻っても大丈夫なように準備だけはしとかないとな」

本当に私の記憶は戻るんだろうか?
みんなはいつかきっと戻ると言ってくれる。私個人としてももちろん記憶は取り戻したい。
ただホントに戻るのか?
どうしても不安が絶えない

「そうだリーネ撃ってみるか?」
「えっ!」
「坂本さん!」

いかなり宮藤さんが怒鳴った
坂本少佐もかなり驚いたようだった

「リーネちゃんはまだ病み上がりなんですよ?そんな無茶させないでください!」
「あっあぁすまなかった、銃でも撃ってみたら記憶でも戻るかと思ったんだが、すまない軽率だったな」
「あっいえ・・・私も怒鳴ってすみませんでした」

驚いた
こんなに感情をあらわにする所なんて初めて見たからだ。
・・・・銃かぁ
確かに昔の私は銃を撃って戦っていたらしい
なら戦闘の時に無くした記憶なら、少しでもそれに近いことをすれば・・・

「私やります」
「リーネちゃん!」

芳佳ちゃんが悲痛な声で私を呼んだ

「ごめんね心配してくれたのに・・でも私は記憶を取り戻したいの」
「・・・・・」
「大丈夫なのかリーネ?なにも今日無理にしなくても・・・」
「大丈夫ですやらせてください」
「・・・・そうか」

そう言って坂本少佐は銃を持ってきてくれた


「・・・・大きい」

思わず声に出してしまうほどの大きさだった
ホントにこんな大きな銃を私は持っていたんだろうか?

「持てるか?」

とてもじゃないが無理だ
どうやってこんな鉄の塊を持っていたんだろう?

「魔力は使えるか?そうすれば持てるんだが・・・」

そう言われて自然と魔力の解放が出来た。特に意識もせず普通に

「あっあれ?尻尾?」
「ほぅ記憶は無くとも体は覚えてるもんだな」

なんとなくこうかな?という風に力を入れただけだ
力が溢れてくる
あれだけ重そうだった銃が今では普通に持てている

「よしなら付いてこい」

そう言われ射撃場へと付いてって。



連れて行かれた先は海だった。

「向こうに的がある撃ってみろ」
「えっ!?」

マトって何処に?目の前には海しか見えない

「お前は視力を強化する魔法が使える。だから戦闘ではいつも長距離からの狙撃をしていたんだ」

だからこんなに大きな銃なのか

「今回は500m先に目標がある。本調子なら余裕だろうが病み上がりだしな」
「はい」

とりあえず銃を構えてみる
あれ?なんで構え方知ってるんだろ?
そう思いながらも自然と安全装置を外す
銃の扱い方なんて、記憶を失ってからもちろん学んでもないし撃ったこともない。
けれどなぜか自然と手に馴染む銃

「いいか集中しろ。目で見ようとするな頭で見ろ。遠くを見えるようにイメージするんだ」

難しい
イメージ??
とにかくどれだけ目で見ようとしてもまったく見えないので、言われた通りイメージしてみることにした。
向こうには的がある――距離500m
遠くを見る―目で見るんじゃない―想像するんだ―もっと――もっと遠くを――


「ッ!」


パン!
耳元で大きな音が鳴った
耳がキーンとして耳鳴りがする

「ほうさすがだなど真ん中に命中だ」
「えっ?あれ?」

当たった?
確かに遠くのマトが見えた気がする・・・
見えた瞬間とっさに引き金を引いたてしまった。
まさかできるとは思ってもみなかった。

「よし、今日はこれくらいにしておけ。ゆっくり休むんだぞ」
「あっ・・・はい」

なんだか頭がフワフワする
ホントに自分はウィッチであんな大きな銃で敵と戦ってたんだなぁと改めて実感した。
これだけ銃の扱い方を覚えていたんだ、きっと記憶だっていつか戻るかもしれない。
そう考えると少し希望が見てきた。





芳佳ちゃんは訓練の時からずっと黙ったままだった。
どうしよう・・・なにか話を・・・けど目覚めたばかりの私には話のネタなんてなくて無い。
どうしようと?と考えていた時

「・・・・リーネちゃん」
「なっなに?」
「リーネちゃんはまた飛ぶの?」
「えっ・・・」
「またリーネちゃんは飛んでネウロイと戦うの?」


ネウロイ―私達の敵
確かに私はネウロイと戦うためにここに居るらしい
今日は記憶を取り戻す足がけだと思い銃を撃ってみた。
なら次はたぶんストライカーで飛ぶ。
不思議と空を飛ぶのは怖くなかったたぶん私は知っている。
そらの飛び方を――

「私はリーネちゃんには飛んで欲しくない、銃だって撃って欲しくない」

自然と足が止まっていた

「もし・・・もしまた落とされたら・・・そう考えると怖くてリーネちゃんを飛ばすことなんか出来ない」

泣きそうな顔で語る彼女
本当に大切にされてたんだなと思う。
ホントは私だって怖い
未知の敵と戦うんだ怖いに決まってる
でも――

「ごめんね芳佳ちゃん・・・それでも私は飛ぶよ」

分かって欲しい私が飛ぶのは別にネウロイが倒したい訳では無いことを、私はあなたのために飛ぶんだと

「リーネちゃん!」

そんな悲しそうな顔をしないで欲しい
私だって悲しくなる。
芳佳ちゃんの気持ちももちろん分かるつもりだ
あれだけ懇親的に世話を焼いてくれたんだそれぐらい判る
ただこれ以上彼女を私で縛りたくはない。
いつまでも私への罪悪感に縛られたままになんかしておけない。
だから私は記憶を取り戻す。



to be continued next episode



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