星と願いと狼の牙


――貴女が欲しい――

そんな事、いくら祈ったところで無駄だと分かっているけれど、何もしないよりかはマシだと、私は毎晩夜空を見る。

「…ミーナ中佐…」


――星と願いと狼の牙――


「なにかしら、リーネさん」
「ミミミミミーナ中佐っ…!!なっ、なんでここにっ…!」
「私も時々、ここへ夜空を観に来ているの。ここから見える夜空って綺麗よね」
「…はい…。
この夜空に願いをかけると、その願いがなんだか叶うような気がするんです」
「願いが叶うとしたら、リーネさんはなんて願うのかしら?」
「え、えーっと…」

ミーナ中佐と恋人同士になりたい…なんてとても言えないよね…///

「ひ、秘密です」
「あらあら」
「そういうミーナ中佐はどんな事を願うんですか」

そういうと、ミーナ中佐は人差し指を唇に当てて、ニコリと笑う。

「ヒ・ミ・ツ・よ♪…なんてね」

いっ…今のは…マズいですよ、ミーナ中佐っ…!
かっ…可愛すぎるよぉっ…!

私は出そうになる鼻血を押さえつつ、冷静に振る舞おうとする。

「そ、そうですか…」
「フフ♪」
「…ミーナ中佐、なんだか機嫌がいいですね」
「あら、そう見えるかしら」
「はい、とても」
「そうね、こんな月夜に感謝、と言った辺りかしらね」
「はあ…」

私はワケも分からずミーナ中佐の話を聞く。


「この世に運命というものがあるとすれば、きっとそれは今だと思うの」
「今、ですか」
「そう、今。
現在という今はもう二度と来ない。私はその一瞬一瞬を大事にしたいの」

そう言うと、ミーナ中佐は私の手を取る。

「ミ、ミーナ中佐っ…!//////」

私の心臓が跳ねる。

「…ドキドキしてるわね」
「ミーナ中佐っ…!」
「貴女の願いを私が叶えてあげるわ」

そうすると、私はミーナ中佐に抱き寄せられる。
お互いの顔が、ちょっと動いたらキス出来てしまう程の距離となる。

「ミーナ中佐…近すぎ、です…//////」
「“現在”も過ぎれば“過去”となる。
…だったら過去になる前に貴女を奪うわ。リーネさん」
「ミーナ中佐…っ」
「…私の願い、教えてあげるわ。
……それは……」

私はミーナ中佐にキスをされた。
触れ合うような優しいキスではなく、口内を貪るような、荒々しいキス。

「ミー……ナ中佐……」
「リー…ネさん…」


私達の間を銀色の糸が繋ぐ。

「…これが私の願い、よ」
「ミーナ中佐…」
「…リーネさん。貴女はどうかしら?
狼の私に食べられたいかしら?」

…ミーナ中佐、貴女は狡い。


貴女のその眼、その声に惑わされた私は狼に食いつかれた弱い子羊。


貴女は私が貴女から逃げられないのを知ってる。

だから、貴女は私を誘う。
だから、私の返事は一つ。


「……はい……」

そう言うと、私はミーナ中佐の胸に顔をうずめる。

「そう…なら、私の部屋で…」

私はミーナ中佐に手を引かれて、ミーナ中佐の部屋に入った。

私は、自ら狼に食べられる事を選んだ。


―――――――――――――――――――

翌朝

「おはよう、リーネちゃん」
「おはよう、芳佳ちゃん」
「…あれ、リーネちゃん。
首筋、なんか赤いよ?」
「あ、ああ…これ…」

私はちょっと赤くなって、言葉を返す。

「狼に食べられた痕だよ」


END


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