Plural-episode-5-


目覚めてから一週間後
やっと自室に戻れることになった。
といっても自分の部屋だと言われても初めて入る部屋と同じだ。
不思議と埃っぽくない・・・・・誰かが掃除してくれていた?

「芳佳ちゃんこの部屋・・・」
「あっごめんね勝手に入っちゃって。何時戻っててもいいように掃除だけは毎日してたから・・・」
「そうなんだありがとう」

思ってた以上にシンプルな部屋だ。
実はまだ医務室で生活した方が良いとは医者には言われていたけれど無理して自室に戻してもらったのだ。
昔の自分の跡が一番残っている場所だ。ここで生活すればなにか手が係があるかも・・・・

「ねぇ・・・リーネちゃんホントに今日から飛行訓練するの?」
「うん・・・ごめんね」

今日から私は飛行訓練をする。
といってもリハビリみたいな物でただ飛ぶだけの訓練。
それでも今の自分に出来るかどうか不安でもある
芳佳ちゃんが心配する気持ちも判る
ただそれ以上に私は記憶を取り戻したい・・・

「さっ行こう?」
「・・・・うん」

今日の訓練は私がお願いして芳佳ちゃんも一緒に飛んでもらう。
もしなにか有っても大丈夫なように付いていてもらうのだ。



さていざハンガーに到着してストライカーを装着しても私はなかなか飛べなかった。
もちろん私が休んでる間にネウロイが出現してみんなが戦いに行ったり
訓練で模擬戦闘をしてるのを見たのでなんとなく飛び方はイメージできる。
ただ・・・・・頭では分かっていてもいざ実際にやるとなると怖い。


「リーネちゃん・・・・今日は無理しなくても・・・・」
怖い
でも二人でなら――

「手・・・・繋いでいい?」
「えっ・・・」
「二人でなら飛べると思うから・・・・」
「うん・・いいよ」

手と手を繋ぐ
暖かい
これなら――

「いくよ芳佳ちゃん」

魔力をストライカーに注ぐ
プロペラを回転させ滑走路を駆けていく
――飛べる!

「きゃっ!」

確かに飛べたが大きくバランスを崩してしまった。
慌てて芳佳ちゃんが支えてくれたが危なかった・・・
やはり見てるのと実際に飛ぶのは全然違う。

「大丈夫?」
「うん。ありがとうね」

支えてもらいながらなんとか飛ぶ
飛ぶだけでも精一杯だから重い銃を持つなんて当分先だなぁ
それに浮いた状態で精密な射撃なんて曲芸にしか思えない。
自分の事だけどよくやってたなぁと思う。

しばらく飛んでいるとだいぶコツがつかめてきた。
ただ手は繋いでもらったままだった。
多分もう離しても大丈夫だとは思うけど、私が離したくないだ。
空が青い
でも私はこの空から一度落ちたのか・・・

「そろそろ戻ろうか初日から無理してなにか有っても大変だし」
「そうだね」


無事帰還
実は着地の時またバランスを崩して転けそうになったのを支えてもらったがなんとか帰ってこれた。
ホントに世話を掛けっぱなしだ・・・
シャーリーさんが言っていたけど私は割とドジだったらしい
・・・体質なのかな?
そんなことを考えていると芳佳ちゃんが口を開いた

「・・ねぇリーネちゃん飛行訓練はやっぱり止めよう危ないよ・・」
「・・・」

芳佳ちゃんは最初から反対していた
でも私がどうしてもと言うからしぶしぶ付き合ってもらった。

「ごめんね・・・でも私空を飛んでるとなにか思い出せそうだから・・・」
「・・・」

沈黙が痛い
飛んでも欲しくと願う気持ちも分かるけど、私は記憶を取り戻したい
どうすればわかってくれるかな?そんな事を考えている時だった

警報が鳴り響いた

「敵!」
「ネウロイなの?」
「リーネちゃんは早く基地の中へ入って!」
「芳佳ちゃん!」

名前を呼んだ時には芳佳ちゃんは銃を掴み
空へ駆けて行った

「行っちゃった・・・」

何も出来ない自分が情けない
今の自分が空へ上がった所で足手まといになるのは目に見えている
分かっているからこそ悔しい

「お~い、そんな所にいたら危ないぞ」
「シャーリーさん?」
「そっシャーリーだよ。ちゃんと名前覚えてくれたんだな」
「あっはい」
「とにかく基地の中に入りな、そこにいたら出撃の邪魔にもなるだろうし」

そう言って基地の中に入っていくシャーリーさんに付いていくことにした。



「まぁ暇人同士話でもしてみんなの帰還をまとうぜ」
「はい」

シャーリーさんは今回は基地待機らしい
・・・・そうだちょうど人も居ないことだし聞いて見よう

「あの・・・・記憶を失う前の私ってどうでした?」
「えっ?うーんそうだなぁ、料理が上手だった。たまにドジして失敗もしてたけど。確か宮藤とよく作ってたよ。
基本的には優しい性格だったと思う。まぁあんまり接点が無かったけどね。
後は宮藤と一緒に初戦果を上げた辺りからだいぶ実践でも使えるようになったかな?」

なんだかこうして聞いて見ると昔の私も芳佳ちゃんにべったりだったのがよく判ってすこし恥ずかしくなる。

「宮藤が来てくれてからはずいぶん明るくなったよ、新人同士だし互いが互いを支えていた感じかな。
傍目から見てももう距離というか心が近くてさ、親友というか恋人みたいな感じだったよ」

一気に顔に血がのっぼった
顔が火照る・・・

「そうそうそんな感じで私がからかうとすぐ赤くなったよ」
「シャーリーさん!」
「はっはっは、そう大きな声出すなって、飲み物取って来てあげるからおとなしくしとくんだぞ」

そう言ってシャーリーさんは厨房に入っていた
ううぅまだ顔が火照る

「ふぅー」

大きく息を吐いてすこしでも熱を逃がす
恋人みたいか・・・
だったらこの想いにも説明が付く
きっと今も昔も私は恋してるんだ。
芳佳ちゃんは私の事をどう思ってたんだろう?
私と同じ気持ちを持っていてくれたら嬉しい。
でもそんな気持ちを持っていてくれるとしたら、一度落とされた私がもう一度飛ぼうとするのはさぞ心配だろう。
本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
でも私の記憶が無くした責任を感じている彼女を救うには記憶を取り戻すしか無いと思う。

「難しい顔してるな」
「シャーリーさん・・・」
「まっ思い詰める気持ちも分かるけど、一人で抱え込むなよ?」
「・・・はい」
「どうだ宮藤とは仲良くやれてるか?」
「はいいつも助けてもらってます。ただやっぱり事故の事を気にしてるみたいで・・・・」
「そっか・・・・まぁそんな深く考えず二人で仲良く話をしろよ」
「はい」

本当に優しい人たちに囲まれていると実感する。
さて戦闘で疲れかて帰って来るであろう隊員達に美味しい紅茶を入れて出迎え上げよう。



to be continued next episode



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