みんなで…


 ガリア方面にあったネウロイの巣が消滅した日から数日後、昼食を終えてみんなが解散して自室に戻ろうとしたその時、坂本少佐は宮藤とリーネとハルトマンを呼び止めた。

  坂「宮藤とリーネ、午後から私とロンドンまで買い物に付き合ってほしい」
  芳・リ「はい、わかりました、すぐに仕度します」

 そう言って二人は手を繋いだままそれぞれの自室へ向かっていった。

  坂「あーそれからハルトマン中尉、ドライバーとして一緒に来てくれないか」
  ハ「えぇーーー何で私…別にいいですけど私が運転して事故っても知りませんよー(苦笑)」
  坂「はっはっは!そんな冗談を言えるぐらいだったら大丈夫だろう、では30分後に駐車場に集合だ」

 笑いながらそう言って坂本少佐は食堂から去っていった

  ハ(ホントやばいのに…ボソボソ)「りょーかーい」

 ぼやきながらも気のない返事をしてハルトマンも食堂から姿を消す。
 一方、一部始終を見ていたペリーヌはと言うと…

  ペ「さ、少佐があの豆狸とロンドンまでお買い物ですってぇ?ムムム…なんでいつもいつもあの子ばかり少佐のお側に…
   少佐はなぜ私にお声を掛けてくださらないのかしら?ま、まぁリーネさんもいることですし、間違いなんか起こるわけないわよね!」
  (でも…やっぱり夜まで少佐が基地に居ないとなると…ですわねぇ)ハァー

 深いため息をつきつつ、トボトボと部屋へ戻るのだった。

      ◇…◇…◇…◇…◇…◇…◇… 一方こちらは隊長室 …◇…◇…◇…◇…◇…◇…◇…◇

  ミ「買い物って、3人も連れてロンドンまで何を買いにいくの?ハルトマンはドライバーみたいだけど大丈夫なの?
  この前もトゥルーデと病院に行ったときにこすったから始末書を書いたばかりだし…まぁあの時は罰として一人だけ晩ごはん抜きだったけどねウフフ」
 坂「運転は…まぁ一応あいつを信じてやろう(汗)、それより明日の解散パーティーにみんなが見たこともないものを作ろうと思ってな、
その材料なんだが一人じゃ持ちきれないから宮藤達にも手伝ってもらうために連れて行く。
結構たくさんあるから体力の訓練になるかもな…はっはっは」
  ミ「なんだか知らないけど楽しみねぇ、扶桑の料理かしら?」
  坂「では行ってくる」
  ミ「気をつけてね」

 宮藤は自室で準備をしながら独り言をブツブツ…

  芳「ロンドンまで何を買いに行くのかな…坂本さんのことだからなんか変なもの買いそうでこわいなぁ…でもリーネちゃんも一緒だから楽しくなるかな」

 …などと文句を言いながらもどこか楽しそうだ
 その頃リーネは着替えを済ませ、駐車場へ向かいながらぼんやりと歩いていた

  リ「ロンドンまでお買い物かぁ…今日は坂本少佐とハルトマン中尉も一緒だけど、芳佳ちゃんと二人きりだったらどんなふうになるのかな。。。」ポワワワ~ン
 ─妄想中─ 色んなところを見てまわって、カフェでお茶して、それから…キャッ♪恥ずかしい ─妄想中─

 その時誰かにぶつかった

  リ「あっ!ご、ごめんなさい!バルクホルン大尉…」
  ゲ「いや、私は大丈夫だ。それより歩くときはちゃんと前を見て歩け、ボーっとしているようでは軍人として自覚が足らんな」
  リ「は、はい、すみません」
  ゲ「ところでこれからどこへ行くんだ?何やら急いでいるようだったが」
  リ「あ、あの…坂本少佐とハルトマン中尉と芳佳ちゃんと私とでロンドンまでお買い物です」
  ゲ「そうか、気をつけて…な、ナニ!?クリ…い、いや宮藤も一緒なのか?」
  リ「そうですけどどうしたんですか?」
  ゲ「い、いや何でもない気にするな。それより事故の無いように気をつけて行ってくるんだぞ」
  リ「はい、それでは失礼します」

 そう言ってリーネは駐車場へ向かって歩いていった

  ゲ「宮藤と買い物か…」ポワワワ~ン
 ─妄想中─ 私だったらクリスも連れてあそこへ行ってあそこへ行って…ウフフ… ─妄想中─
  ゲ「ハッ!何を考えているんだ私は、たかだか買い物に行くだけじゃないか!今日の私はどうかしているようだ…昼寝でもして気分を落ち着けよう」

 バルクホルンはブツブツ独り言を言いながら自室へ向かって歩いていると角の向こうから走ってくる誰かにぶつかった。

  芳「うわぁ~早くしないと遅れちゃう~!」
  ゲ「誰だ!歩くときはちゃんと前を…ん?み、宮藤!?」
  芳「あっ!ご、ごめんなさい!バルクホルン大尉…」
  ゲ(リネット軍曹と同じことを…)「い、いや何でもない、それより坂本少佐とロンドンまで買い物に行くそうだが?」
  芳「はい、坂本さんが今日の訓練を休みにする代わりにリーネちゃんと私についてこいって」
  ゲ「そ、そうなのか?それじゃ事故の無いように気をつけるんだぞ」
  芳「はい。あっそうだ!バルクホルンさんは今度妹さんのところにお見舞いに行くんですよね?私も一緒に行ってもいいですか?」
  ゲ「エッ?そ、それは別にかまわんが…なぜ急にそんなことを?」
  芳「ガリアのネウロイの巣が消えたのが確認されてこの部隊が解散したら私も坂本さんも扶桑へ帰国するだろうから、その前に会っておきたいなぁって思って」
  ゲ「そ、そうか?クリスもきっと喜ぶだろうな」
  芳「それじゃ私は急ぎますので…約束ですよー必ず連れて行ってねおねえちゃん」

 そう言って宮藤も駐車場へ向かって急いで走っていった

  ゲ「!!」ポワワワ~ン
 ─妄想中─ おねえちゃん…おねえちゃん…おねえちゃん…ハァハァ…宮藤ーーーっ! ─妄想中─
  ゲ「ハァ、やっぱり今日はなんだか変だ、すぐに寝て忘れよう、それにしても…おねえちゃん、か…フフフ」

 バルクホルンは鼻血を垂れ流しながら部屋へと戻っていった

 宮藤とリーネが準備でバタバタしていたその頃…エーリカ・ハルトマンは駐車場で乗車前点検をしながら独り言をこぼしていた。

  ハ「これでよしっと!…ハァー、車の運転かぁ、この前みたいに途中でウトウトして事故らないように…」

 キリキリッ!ゴロロロロ・・・

  ハ(アレ?なんかおなか痛い…こりゃいつものよりヤバイかも)「……トゥルー…デ…たす…け…」バターン!

 ゴロゴロ…最近どうも腹の具合がおかしいと感じていたハルトマンであったが、いきなりの急な腹痛のためその場に倒れてしまった。
 数分後、坂本少佐とミーナ隊長が談笑しながらたどり着いた駐車場で見たものは…
 車両の前で下腹部を押さえて肩で息をしながら苦しそうにうめいている本日の運転手の姿であった。

  ミ「フラウ!どうしたの?」
  坂「中尉!しっかりしろ!」
  ハ「うぅ…」

 ハルトマンは二人に抱えられて急いで医務室へ連れて行かれ…

 ── 10分後 ──

  医者「…ただの食べすぎ飲みすぎです、とりあえず薬は飲ませましたが当分の間暴飲暴食は控えさせてください、でないと…」
  ミ「わかりました、本人にもよく言っておきます」

 ハルトマンはベッドの上で時折うなり声を上げつつすやすやと眠っている。

  坂「ハッハッハ!食べすぎとは軍人としてはたるんでいるな!
   それにしても困ったな…他に運転できるのはミーナとバルクホルン大尉とシャーリーぐらいか…別に私が運転してもいいんだが」
  ミ「そうね、運転は誰かに代わってもらうとしても、フラウは今日は安静にしておかなくちゃ…私は看病のためにここに残ります。
    あ、それからシャーリーさんとルッキーニさんは明日の準備がどうとかって二人でどこかへ行ってしまって、夕方には戻るって言ってたけど…」
  坂「はっはっは!相変わらずあの二人はいっしょだな」
  ミ(ふぅ…私も美緒と二人きりでどこかに出かけたいわ…でもこの人はきっと…)
   「…ゴホン!それじゃ運転はトゥルーデにお願いしようかしら…私が行ってくるわ」
  坂「ああ、それでは私は車に乗って待っていよう、そろそろ宮藤とリーネも駐車場に居るだろうからな」

 そう言ってミーナはバルクホルンの部屋へ、少佐は駐車場へと向かっていった。
 その頃、運転代行たる本人は部屋の中で鼻血を垂れ流しながらお姉ちゃんモード全開で妄想にふけっていることを二人は知らない

 ── その頃ゲルトルード・バルクホルンは眠っていた ──

  ゲ「おねえちゃん…芳佳があんなことを言うなんて…ハァハァ…今日はクリスと三人で買い物だ…何でも好きなものを買ってあげるぞ…」

 ブツブツと寝言をつぶやきながらゲルトルードは妹?(宮藤)とデートしている夢を見ていた。
 ノックしてみる…返事がない。

  ミ「トゥルーデ、居るの?入るわよ…あら?眠っていたの?
   あらあら、トゥルーデの寝顔ってかわいいわね…ちょっといたずらしちゃおうかな…」
  ゲ「うぅーん…宮藤…クリス…おねえちゃんは…」
  ミ(…どうやらいたずらじゃなくてお仕置きが必要みたいね…)



 (おまけ)
 ── そのころ医務室 ──

  ハ「…もういいですか?」
  医者「もう歩いても大丈夫ですよ中尉(汗)単なる生理痛なんですから」
  ハ「ありがとうございまーす。でも、さっきおなかが痛かったのは本当だから…ちょっとだけだけど…」
  医者「でも…いくら運転がイヤだからってこんな大袈裟にしなくても良かったのでは?」
  ハ「いーのいーの、たまにはトゥルーデも宮藤といっしょにしてあげなきゃね♪」

 やはりこの黒い小悪魔は一枚上手である。

 部屋の主はそういった事情を知ってか知らずか夢の中…
夢の中では妹のクリスと自称私の妹(?)の宮藤芳佳と3人で仲が良さそうだ
  ミーナが何度かノックして入室してきても気づかないぐらい深い眠りについているようだった。

  ミ「…大尉!バルクホルン大尉!緊急事態です。起床しなさい!」
  ゲ「むにゃむにゃ…宮藤…遠くへ行かないでくれ!クリスはまだそんなに動けないんだ!まだ扶桑に帰らないでもっと私のそばに…ん?緊急事態…緊急事態だと!!」

 バルクホルンは緊急事態という言葉に反応して飛び起き、ベッドの傍らで怒気を含んだ表情で立っている隊長に気づいた。

  ゲ「夢か…それにしてもいやな夢だったな…ん?ミーナ、私の部屋で何を?」
  ミ「トゥルーデ、もうそのことは考えないはずじゃなかったの?それより急で悪いんだけど…」
  ゲ「いや…別れのときが近づいていることはわかっているんだがどうもな…それより緊急事態とは何だ?」
  ミ「さっきハルトマン中尉が急激な腹痛を起こして…いま医務室に居るけど運転は無理みたいだから今日は私が看病します。
代わりにあなたが運転手としてロンドンまで同行してちょうだい」
 ゲ「エーリカが…(…腹痛?あの小悪魔もたまには調子が悪くなるんだな…)
   そうか…了解した。少佐と…それから宮藤もリーネも駐車場にいるのか?」
  ミ「そうね…そろそろ集合しているはずよ、ところで今日は宮藤さんも一緒だからついでにクリスのお見舞いにでも行ったらどう?」

 ニヤリ、ミーナ隊長は意味深な笑みを浮かべながらバルクホルンをからかってみた。

  ゲ「な!何を…言っているのかな隊長殿は…あいつがいるからって何も関係ない…じゃないか」ヒクヒク…
  ミ「さあどうだか…まぁいいわ、すぐに支度して駐車場に向かってね」
  ゲ「わかった、私は準備が出来次第駐車場へ向かうからミーナはハルトマンを頼む」
  ミ「はいはい、それじゃお願いね」

 それだけ言うとミーナは退室し、医務室へ向かっていった。

  ゲ「運転手か…エーリカじゃないが私もあまり地理には自信がないんだよな…でも、任せられたからにはその任を十分に果たすのがカールスラント軍人たる私の役目だ!
   坂本少佐が(宮藤も)いることだし無事故には気をつけよう…ミーナに後でどやされてはかなわんからな」

 バルクホルンはズボンを穿き替え、(鼻血に気づいたので念入りに顔を洗って)軍服に身を包むと駐車場へ向かって歩き出した。

 『みんなで…』1話おわり



 おまけ:
 ─── ここは医務室 ───

  ミ「フラウ、腹痛はもうそんなにひどくないんでしょ?」
  ハ「へへへーバレたか、でもトゥルーデもたまには宮藤と一緒にさせてやるのも悪くないんじゃない?」
  ミ(やれやれ…)「あなたもとんでもない策士ね…"あの日”だったんならトゥルーデも食堂にいたんだから代わってもらえばよかったのに」
  ハ「たしかにアレはヤバかったけど今日は大丈夫だと思ったのになぁ…それに、いくら宮藤と今日一日いっしょに行動できるからって
あのトゥルーデが素直に代わってくれると思う?」
  ミ「そうね…ほんとに手がかかる副官だこと」

 同僚には苦労させられる二人であった。


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