Cinderella Christmas


――12月24日。
クリスマス・イヴにして、あたしの愛しいルッキーニの誕生日。

隊のみんなで、ルッキーニの誕生日パーティーをしたりしてルッキーニはとても嬉しそう。
うんうん、ルッキーニの嬉しそうな顔を見ると、あたしまで顔がにやついちゃうよ。

だって、ルッキーニの笑顔ったら本当に明るくて、何の裏も無い、本当に可愛い笑顔。

思えば、あたしがルッキーニに惚れたのはそこもあるかも知れない。
もちろんそこだけじゃ無いけどね。

そして、今のこのパーティーが終われば、ある意味あたしにとってはメインのイベントが始まる。


あたしとルッキーニだけの、二人きりのパーティーが。


――Cinderella Christmas――


ガチャ

「シャーリー、来たよ」
「お、待ってたよ」
「用ってなに?」
「なにってお前。
あたしが直接お前の誕生日を祝ってあげるんだよ」
「あ、そーいえばあたし、シャーリーからプレゼント貰ってない」
「ま、それも含めての二人きりのパーティーって事だよ」

あたしはルッキーニをイスに座らせて。

「っつーわけで、ルッキーニ、誕生日おめでとー!」
「ありがとう!シャーリー!」
「いやいや、お前も一つ大人になったんだなあ。お姉ちゃんちょっと感慨深いよ」
「アハハ、シャーリーちょっとおばさんみたい」
「バカ、15の乙女を捕まえて言うに事欠いておばさんかよ」
「ごめんごめん、ニャハハ」

ああ、ルッキーニの笑顔はやっぱり可愛い。
って惚けてる場合じゃないんだよ。
今夜はルッキーニを精一杯祝ってあげなくちゃな、うん!

「それでさ、あたしルッキーニの為に腕によりをかけて、スパゲティ作ったんだ!」
「うわぁ、美味しそう!」
「だろ?ほら、食べてみろよ」
「うん、いただきまーす!」


ルッキーニがスパゲティを口に運ぶ。
ちょっとドキドキだ。

「どう…だ?…ルッキーニ…」
「……」

…やっぱダメだったか…?

「…美味しいよ、シャーリー!」
「ほっ、本当か!?ルッキーニ!」
「うん、これならいくらでも食べられるよ!」
「そ…そっか!おかわりならいくらでもあるから遠慮なく食えよ!」

良かった…!ルッキーニが美味いって言ってくれて。
作った甲斐があったよ!

「…ってほら、ルッキーニ、口の周りにソースついてるぞ」
「ウニャ」

あたしはルッキーニの口の周りについたソースを拭き取る。

と、あたしの目に飛び込んで来たのは、ルッキーニの柔らかそうな唇。
12歳のクセにルッキーニの唇はなんだか肉感的で、見るだけでドキドキする。

「……どうしたの?シャーリー」
「…へ?」
「なんかボーっとしてたみたいだけど」
「あっ、いや、なんでも無いっ!///」

あっ、危ない危ない。妄想が口に出るとこだった。

「そうだ、ルッキーニ、プレゼントがあんだよ」
「待ってましたー!」

あたしはタンスから箱を一つ取り出す。
それはいかにもクリスマスらしい包みにくるまれた小さな箱。

「はい、ルッキーニ。誕生日おめでとう」

ルッキーニは箱を開ける。

そこには、鈴がついたリボンが入っている。

「シャーリー…これ…」
「ほら、この前街に出た時お前言ってただろ?可愛いって」


―――――――――――――――――――

「あっ、ねえ見て見て、シャーリー!」
「ん?なんだルッキーニ」
「このリボン、可愛くない!?」
「おー、キレイだなあ」
「いいなあ、こういうリボンってどういう人がするんだろう」
「……」

(これくらいの値段なら……よし!)

―――――――――――――――――――
「シャーリー…覚えてたの…?」
「お前の言ってた事なら、覚えてるって。お前の喜ぶ顔が見たくって、さ」
「シャーリー…」

と、ルッキーニの目から涙が。

「ちょっ、ルッキーニお前なんで泣いてるんだよ!?」
「…嬉しいんだよ…あたし、シャーリーがあたしの言った事いちいち覚えてた事が…」

あたしはルッキーニの目にたまった涙を指で掬う。

「…バカ、そんなのいちいち泣く事じゃないだろ?それに…」
「シャーリー…」
「あたし達、“友達以上恋人未満”だろ?」
「シャーリー…//////」

ルッキーニはあたしの服をギュッと掴む。

「ルッキーニ…?」
「…シャーリー、あたしもう一つプレゼント、欲しい」
「なに?」
「……//////」

ルッキーニは顔を真っ赤にして、あたしを見ている。
ルッキーニが何を言いたいかは分かる。

でも、顔を真っ赤にしたルッキーニが可愛くて、つい意地悪を言ってしまう。

「…あたし達“友達以上恋人未満”なんじゃなかったっけか?」
「…それはあたしの誕生日をもって終わり。…今からは…」
「ルッキーニ」
「“恋人”でどうかな…//////」

ルッキーニがさっきより更に顔を真っ赤にして呟く。

「いいよ、ルッキーニがそれでいいなら」

ルッキーニが、あたしにすり寄ってきた。



「…大好き…!シャーリー…!」
「あたしも、ルッキーニ」
「ね、シャーリー」
「なんだ?」
「リボン、つけて」
「…あたしなんかで良いのか?」
「あたしの髪とリボンは、シャーリーにしか触らせないもん」
「おっ、嬉しい事言ってくれるなあ」

あたしは鈴がついているリボンを手に取る。
そして、ルッキーニが今つけているリボンを解く。

「うお…//////」

髪を解いたルッキーニは見慣れているけど、雰囲気のせいなのか、いつもより大人っぽく見えた。

(…ヤバい…キレイ過ぎるって…//////)

「…?どうしたの、シャーリー」
「へっ…?あっ、ごめんごめん…///」

見とれてる場合じゃなかったな…。
しっかりしろ、あたしっ…///

ルッキーニの黒髪は本当にキレイで、別に髪フェチじゃないけれど、ルッキーニの髪ってだけで無条件でドキドキするあたしがいる。

「じゃあ、つけるぞ」
「うん」

あたしはルッキーニを髪を結ぶ。
ほつれが無いように、丁寧に丁寧に。
あたしの想いを込めて…。


「よし、できた!ほら、鏡見てみろよ」
「うん!」

ルッキーニは鏡の前に向かっていった。

「うわぁ…///」

そして、あたしは後ろからルッキーニの肩に手を置く。

「おおっ、よく似合うじゃん、ルッキーニ!」
「そっ、そうかな…//////」
「うんうん、よく似合ってる!マジで可愛いって!」
「エヘヘ…!//////」

そのリボンはあたしが思ってた以上に似合っていて。
それだけの事なのに、胸の鼓動が早まる。


そして、ルッキーニは機嫌良さそうに部屋中をくるくる回る。
その度に、鈴がチリンチリン鳴る。
あたしはそんなルッキーニがたまらなく愛おしくなって、後ろからギュッと抱き締めた。

「シャーリー…//////」
「そんなに喜んでくれて嬉しいよ、ルッキーニ」
「そんなの当たり前だよ。だってシャーリーからのプレゼントなんだもん」

ルッキーニをあたしの方に向ける。

「…お前にもうひとつ、プレゼントをあげるよ」
「シャーリー」
「目を、瞑って」
「うん…」

…あたしは唇を寄せる。
そして、優しく、甘く、囁く。

「ハッピーバースデー、ルッキーニ」

――愛してる。――

キスを、した。
さっきの囁きよりも、甘く、優しく。

外では、あたし達を祝福するように、雪が降り始めた。

なんとなく、ベルの音色が鳴り響いた気がした。

「…シャーリー…」
「ルッキーニ…」
「キス、しちゃった、ね」
「あ、ああ、そうだな」

そう言うと、あたし達はしばらく黙ってしまう。
そして沈黙の後、ルッキーニが口を開く。

「シャーリー」
「ん、ルッキーニ、なんだ?」
「やっぱり、あたしシャーリーの事、好き」
「フフ、知ってる」

そしてあたしはもう一度、ルッキーニを抱き締める。
ルッキーニの体温が心地良い。

「シャーリー…」
「…なあ、ルッキーニ」

チリン…ッ…

鈴が鳴る。

それは、あたし達の始まりの合図。

聖夜の小さな、小さな恋の話は、まだ終わらない。

END


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