キミが一番に変わるとき


雪の様に白い肌。
色素の薄い淡い金色の髪。
真っ直ぐな瞳。
全てが私の脳髄をとろけさせる。

別にそんなつもりじゃなかった。
私たちはそんな関係なんかじゃ決してなかった。
どうしてこんなことになったのか…

お前が幸せそうに笑うから。
お前がそんなことを言うから。
どうしようもなく寂しかったから。
今日がクリスマスだから。
背伸びしてお酒を飲んでいたから。
私は言い訳だけはたくさん持っていた。

でも、本当の答えは存外に単純で…それはつまり、お前に惹かれていただけってことだ。

ーーーーーーーー

今日は1942年の12月25日。
12月25日がなんの日か知らないやつはいないだろう。
そう、もちろんクリスマスだ。
それはスオムス、カウハバ基地においても例に漏れずにやってきており、戦時中だっていうのに基地はすっかりとクリスマスの様相を見せていた。

「アー!!なんだかイライラすんナ!」

しかし、そんな楽しい雰囲気をぶち壊すかのように私は不機嫌な声を発する。
別にクリスマスが嫌いな訳ではない。
もちろんクリスマスは好きなほうだ。
でも腹に据えかねることもあった。
ただそれだけの話だ。

クリスマスパーティーだって開いたし、エル姉からクリスマスプレゼントだってもらった。
それでも私のイライラは消えはしない。
まぁ、原因なんて些細なことさ。
基地には何人か来客もいて、そこには銀髪のいけ好かない‘アイツ’もいたってだけだ。
‘アイツ’はあの中隊が解散した後だって定期的にスオムスにやってくる。
いや、なにも定期的にやってくるのは‘アイツ’だけではない。
あのメンバーは全員が全員、なにかと理由を見つけてはスオムスにやってくる。
まぁさすがに扶桑のヤツらはそう頻繁に来たりはしないが…
でも、私が苛立つのは‘アイツ’が来たときだけ。
それは‘アイツ’がふらりとやってくる理由を知っているから。
‘アイツ’が来ると大切な人が目を輝かせるから。
そして、大切な人の気持ちを知っているから。

「そんなに荒れんなよ、イッル。」

ニパが私を諫める。
だがそんなこと言われたからってなんだっていうんだ。
現実は変わりはしない。

「うるさいナー!ニパに私のなにが分かるって言うんダ!」

大切なあの人はやっぱり今も‘アイツ’といて、幸せそうに笑っているのだろう。
そう考えるだけで私の心はキリキリと音をたてる。

「ほらほら、あんまり苛立つな。食堂からくすねてきたから酒でも飲もう?きっと
楽しくなるさ!」

そう言ってニパがボトルを見せる。
私たちはまだ13だ。冬の寒さを耐えるために流し込まれたことはあるけど酒盛りなんてしたことはない。

「ふん、面白そうじゃないカ。ちょっとだけ付き合ってやるヨ。」

ニパからグラスを受け取る。
どこまでも透明な液体だけが今の私を惹きつけた。

ーーーーーーーー

「エル姉のバカー!!!」

すっかり酔いも回ってきたけど、別に機嫌がよくなる訳ではなかった。

「おいおい、エル姉に聞こえるぞ?」

ニパが私を諭す。

「別にいいよ。どうせイチャイチャしてて聞こえねーヨ。はぁ?イチャイチャなんてしてねーヨ!私が許さねーヨ!」
「イッル…お前の言っていることが分からないよ。自分の言ったことに怒るな。」

でも、どうしようもなくイライラするんだ。
‘アイツ’はちょっと背が高いだけで、ちょっと大人なだけで、ちょっとエル姉と早く出会っただけで…全部私は負けているから。
一個だって勝てやしない。自分は負けてばっかりだ。
なんだか熱いものが目から溢れ出してきた…

「まぁ、エル姉も今頃お楽しみかもな。」

そう言ったニパに、どうしようもなく、どうしようもなく腹がたって…私はニパをベッドに押し倒した。

「エル姉はそんなことしナイ!エル姉をそんな目でミンナ!エル姉は私の…私の…」

言葉が続かない。
私にはなにもできない。
私が生まれて初めて守りたいと思った人の中にいるのは‘アイツ’。
それが私の胸を締め付け続けるんだ。

「泣くなよ、イッル。」

ニパが私を抱きしめる。
とくん…とくん、と確かにリズムを刻むニパの心臓の音だけがやたらと大きく聞こえていた。

「泣いてなんかネーヨ!」

私を包むニパの暖かさがどうしようもなく嬉しいのに、私は素直になんかなれやしなくて、突っぱねてしまう。

「でも、イッル…それならそんなに悲しそうな顔するなよ。」

私には自分がどんな顔をしているかなんて分かりやしない。
だが、ニパがそう言うならそういうことなのだろう。

「私じゃ…ダメか?」

飛び込んでくるニパの言葉。
今、なんて…なんて言った?
聞き間違いだよな…

「私じゃエル姉の代わりにはならないか?」

私の頭を包むニパの腕に力がこもる。
私の耳に入る言葉はどう聞いてもニパの言葉で…そして、決して聞き間違いなど
ではなかった。

「どういう意味だヨ…?」

それが今の私の素直な気持ちであった。
ニパの言葉が何度も頭の中でこだまして、脳を揺らす。
バカな私には、お前の言いたいことが分からないんだ。

「イッルはヒドいやつだな…。わ、私がお前を好きってことだよ。」

女の子にそんなこと言わせんな!とニパが文句を言う。
お前は女の子なんてガラじゃないだろ…なんて決して言えやしなかった。
なぜなら頬を朱に染めあげてうつむくニパの姿はいつもとは全然違っていて…私の胸に響いていたから。
ニパ?私にとってニパってなんなんだ?
敵?ライバル?相棒?それとも…。
ただ分かることは、私の頭はニパのことでいっぱいで…ニパのことしか考えられなくなっていたってことだけだ。

「エル姉の代わりでいいのカヨ…?」
「今はそれでいいさ。すぐに一番になってやるからさ。」

そう言ったニパの言葉は真っ直ぐで…とても真っ直ぐで、私ばかり曲がってはいられはしなかった。

「本当にいいのカ?」
「しつこいな。いいって言ってるだろ!」

ニパから口付けが落とされる。

「これが証明だ。分かったか?」

微笑むニパの顔だけが私の頭を占拠する。
それは私にとって初めての体験で、それでも決して嫌ではなくて、私はすっかり揺さぶられてしまっていた。

「ふん、じゃあ私は断るヨ!」

私はニパへと言い放つ。
しゅんとしたニパの顔だけがやたらと印象的だった。

「ニパなんてエル姉の代わりになるか!!私は…私だって代わりなんかじゃなくお前が好きダ!!」
「イッル!!お前…私をからかったな!!」

これはちょっとした反撃だ。
随分お前の言葉にドギマギさせられたからな。
ごめんと謝る代わりに今度は自ら口付けを落とす。

「このまま…するのか?」

ニパのいきなりの言葉に私は動揺する。
よくよく考えてみたならば、今の私たちの状態はベッドの上にニパを押し倒した
私がそのまま覆い被さっている。
それはどう見ても情事のそれであった。

「ニパのスケベ。」

そう耳元で呟いてやるとニパの顔はみるみると紅潮していく。
ふぅん、なかなかどうして可愛らしいじゃないか。
そう思い、ニパの胸に顔をうずめてやる。

「ひゃっ!い、いきなりなにするんだ!!」

突然の私の行動に驚いたのか、ニパの身体がビクリと跳ねる。

「エッチなニパの考えてるコト~。」

ニパの顔がますます紅潮していく。
ふふ、恥ずかしいこと考えてたみたいだな~。

酒の入った身体は熱く、服なんて邪魔なだけだった。
私はニパの衣服を剥ぎ取る。

「ぺたんこじゃなかったんダナ。」

そう呟いた私にニパが文句を言う。

「失礼だな!エル姉なんかよりよっぽど大きいさ!!」
「それは圧倒的なマジョリティだ!自慢になんてなりやしないゾ!」
「意外とヒドいこと言うじゃないか…。」

私たちは笑いあう。

ニパの身体は、真っ白な肌が上気してほんのり赤く染まり、なんだか…なんだかとても胸がドキドキした。
短く整えられた淡い金髪からは、ふわふわと甘いにおいがして、私の頭をクラクラさせる。

私はニパの髪をさらりと撫でると、ニパの胸に手を這わせた。

胸を、髪を、背中を、尻を、ただ撫でるだけ。
決して強くは触れず、壊れものを扱うように撫であげていく。
ニパの身体は時折ピクリと震えては、私にしがみつき、私の胸に顔を埋める。
それでも私はニパの身体をなぞるだけ。

「はぅ…イッル?も、もっとさ…?」

私は決して核心には触れず、ニパの反応を楽しむ。
ニパの身体を下着の上からさらりと撫であげる。
外側から内へ内へむかって手を這わせると、ニパからか細い声が漏れていく。

「はぅ…はぁ…。」

声が確かに紡がれ、そして乞う。

「イッル…。」

ニパは熱で浮かされ、私に情念のこもる眼差しをむける。
そこに含まれるのは希望か欲情か、はたまたそのどちらもなのか…

そんな瞳で見入られたら仕方のない。
私はニパの胸を覆う布きれをめくりあげると、ニパの主張するそれへと舌を這わせる。
一際大きく身体を震わせたニパは、私の頭を押さえつけて離さそうとしない。
なんだかその姿が可愛らしくて、私はふふっと笑みを浮かべた。

「な、なに笑ってんだよ…。イッルって意外じゃなくヒドいやつだよな。」

ニパがそう呟く。

「ソウカ?私がなにしたって言うんダ。」

分からないととぼけると、私はニパのズボンへと手を伸ばす。
軽く尻を撫でると、ニパの体はビクリと跳ね上がり、私へとしがみつく。

「ニパはやらしいナ。」

そう耳元で囁くと、ニパは耳まで赤く染めた。

「お前がそうさせたんだろ。」

抗議でもするかのごとくニパは語調を強める。
でもそれは、私の心に火を灯すだけだ。

「ふぅん、じゃあニパは私にやらしいことされるのが好きってことダナ。」
「イ、イッルだけだからな!!」

すっかり顔を真っ赤にして、ニパが叫ぶ。
ヤバい…こいつすごく可愛いかもしれない。
私の胸に頭を預けるニパの顔を引き起こし、口付けを落とす。
嫌がっても知るものか。
そんなに可愛いことを言ったニパが悪い。
そうに決まっている。
深い深い口付けの中、ニパの舌がおずおずと差し出された。
私は再びニパをギュッと抱きしめると、ニパの舌を撫であげる。
それに反応しているのか、腕の中のニパの身体がそわそわと震えだす。
私の方の我慢がきかなくなってきた。

「脱がすゾ?」

ニパからこくりと頷くだけの返事が返ってきたのを確認すると、さっさとめくりあげた上着と、ズボンを取り払う。
…変だ。おかしい。
私たちは女どうしなのだから風呂にだって一緒に入る。
だからニパの身体なんて見慣れている。
なのに、どうしてここまで胸が高鳴るのか…自分が脱がしたから?
それともニパの身体からたちこめるいつもとは違う女の子の匂いのせい?

「あ、あんまり見るなよ!しかもなんでイッルは一枚も脱いでないんだ!」

ニパから抗議の声があがる。
それでも、私はニパから目を反らせはしなかった。

「わ、私も脱がすからな!」

ニパはそう宣言すると私のベルトへと手をかけた。
スルリと脱がされていき、あっという間に私を覆うものは下着だけとなっていた。
脱がされるという行為が、これからする行為を強く連想させ、私の身体を強ばらせる。
こ、これは恥ずかしいじゃないかー!!
ニパが下着へと手をかける。

「ダ、ダメッ!」

私はニパの手を押さえつけてそれを阻む。

「脱がなきゃ始まんないだろー?」

そんなこと言われたって恥ずかしいものは恥ずかしいんだ。

「わ、私はイイ!」
「そんなこと許す訳ないだろ!!」

ニパの腕にこもる力が強くなる。

「わ、分かっタ!自分で脱グ!自分で脱ぐカラ!!」

ニパに脱がされるのも自分で脱ぐのも結局はさらすことに変わりはないというのに、私の羞恥心はそれを是とはしなかった。
ニパの手が離れる。

恥ずかしいならさっさと済ませてしまえ。
そう思った私は上着を脱ぎにかかった。

「私ばっかり恥ずかしい思いしてたまるか!!」

突然のニパの声。
上着を脱いでいる私に抵抗はできなかった。
ニパの手は私のズボンをつかむと、するりと脱がした。
顔が熱くなっていく。

ぬ、脱がされた…
ニパに、ズボン、脱がされた。
顔から火がでそうになる。

「ヒ、ヒドいじゃないカー!!恥ずかしかったんダゾ!!」
「イッルだって私のズボン脱がしたじゃないか!!私だって恥ずかしかったに決まってるだろ!!」

でも、まさかあんなに恥ずかしいとは思わないじゃないかー!
なんにせよこれで私にもニパにも覆い隠すものなどなにひとつ存在しない。
もう来るところまで来てしまったてことだ。

「じゃ、じゃあするゾ?」
「あ、あぁ。」

私はニパの胸へと手を伸ばす。
ニパのそれはすっかりと主張しており、それを指で転がす度にか細い喘ぎ声が漏
れる。
撫で、摘み、そして舐めあげると、それはますます主張を強くする。

「気持ちいいカ?」
「はぁ…はぁ…。そん…なこと…聞く…な!」

それを肯定と受け取った私は行為を更にエスカレートさせ、手を秘所へと伸ばす

そこは既にとうとうと蜜を溢れださせ、しとどに濡れていた。

「なぁ、ニパ?すげー濡れてるゾ?やらしいやつだなーお前。」

ニヤリとしてそう言うと、ニパが顔を真っ赤にする。

「イッルはもっとデリカシーを持て!!」

ニパが怒りを露わにした。
これ以上機嫌を損ねられたら堪らない。
私はニパに口付けを落とすと、指を秘所にあてがい、ゆっくりと中へと沈めた。
熱い…。
濡れそぼったそこは、私の指をゆっくりと受け入れていく。

ニパが一際高い喘ぎ声を発する。
その声が私の神経をヒドく刺激し、興奮を高めていった。
ニパも興奮しているのだろうか?
私の動かす指に逐一反応しては喘ぎ声を返す様が強く私を堕としていく。

「ん…はっ!んん…」

溢れだす蜜の量はますます増し、激しく腰をくねらせるその姿はどうしようもなく扇状的であった。

「私…もうっ…。」
「イキそうなのカ?」
「そん…なこ…と、聞くな!」

しかしどう見てもそれはニパに近づいていた。
私はトドメとばかりにニパの核を弄ぶ。

「ダ…メだ、そこは…。」

ニパは腰をくねらせて避けようとするが私は逃がしはしない。

「ふぁ…んん!!」

ニパは一際大きく仰け反るとはぁはぁと荒い息をあげた。
よし、撃墜1…と。
自らの付けた初スコアに頬が緩む。
これはネウロイを初めて撃墜したときより嬉しいかもしれない。

「イ、イッル…?私ダメだって言ったよな?確かに言ったよな?」

あ、ヤバい。
ニパがどう見ても怒っている…興奮してやめられなかったなんて言えないしなぁ。

「せ、戦場で気を抜くとどうなるかを身を持って教えただけダ…。」

ニパがニコリと微笑む。

「そうか、ありがとな…じゃあ私も正しい撃墜のされ方を教えてやろうか…。」
「い、いや…私…撃墜されたことないから…必要…ない。」

ジリジリと距離を詰められる。
ネウロイとの戦いは怖いなんて思ったことなどないのに、ニパの笑顔がどうしようもなく怖かった。

「恥ずかしながら私は被撃墜のプロフェッショナルだからな…もしものためにイッルにその技を託してやるさ。」

いらない…そんな技いりはしない。
ニパときたらしっかり私を獲物と捉えたらしくて、手をわさわさとしている。
どうも挑発しすぎたみたいだ…引き際を間違えた。
そんなことを今更思っても当に後の祭であって、なんの意味もない。
現にニパは怒っていて、私を標的にしている…

「ゴ、ゴメンネ?」

精一杯可愛らしく謝ったら許してくれるんじゃないかと望みを託してみる…

「なんで疑問のニュアンスが内在してんだよ!!」

どうしよう…更に怒らせてしまった。

「ニ、ニパのスケベ!!」

文句を言ってみる。

「自分を棚にあげるな!!それに私も!イッルに!やらしいことしたい!!」

どうしよう…やらしいことを肯定されてしまった。
これからニパとどう付き合っていけばいいんだ…
いくらお酒がはいっているからってはじけすぎだぞ…絶対朝には後悔するよ?

「やっぱり許してくれナイ?」
「許すとか許さないじゃない!私にも反撃させろ!!」

そう叫ぶニパの声だけが頭に響いていた。

ーーーーーーーー

結局その後、話し合いによる解決はなされず、戦争が勃発した。
両者、撃墜、被撃墜の山を築く総力戦の様を呈した。
撃墜スコアは…きっと負けてないと信じている。
まぁただ一つ言えることは、勝ち星はニパを一生からかうネタを手に入れた私につくということだけさ。

Fin.


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