sweet jet tension
――どこまでも続く長い道。
あたし達を挟むのは、緑の木々。
やさしい風があたし達を通り抜ける。
今日はシャーリーとデート。
行き先とかは特に無くて、シャーリーのバイクでひたすらあての無いデートの真っ最中。
シャーリーは鼻歌なんか歌って機嫌良く。あたしはそんなシャーリーの背中を見ながら、腰に手を回している。
「今日はいい天気だなあ。なあルッキーニ」
「うん、風が気持ちいいよ」
「最近は雨ばっかだったからなあ。こういうデートってのは今日みたいな晴れの日にやるのが一番なんだよ」
シャーリーはそう言うと、ニシシと笑う。
顔は見えないけど、多分そんな顔をしている。
あたしには分かる。
「エヘヘ…//////」
「ん?なんだ、いきなり背中に引っ付いて」
「嬉しいんだ。シャーリーを独り占めできるから」
「ナハハ、そんなストレートに言われると照れるなあ///」
そう。シャーリーはみんなに人気があるから、こうやって二人きりで過ごす時間っていうのがなかなか無い。
あたしは正直、それが悔しくって仕方無かった。
それでむくれるあたしを見かねたシャーリーがデートに連れて行ってくれてる、というワケ。
「まったく、寂しいなら寂しいって言えば良いのに」
「…だって、シャーリーには余計な心配かけたくないんだもん」
シャーリーははあとため息をひとつ吐くと。
「今日くらいはさ、あたしに心配かけてくれよ。あたしら恋人同士なんだからさ。
もうちょっと頼ってくれよな」
「うん、ごめんね」
「ハハ、謝られるとはなあ!アハハ」
シャーリーの豪快な笑い声が、真っ直ぐな道に響く。
「でも、本当に誰一人いないね」
「気持ちいいよなあ。ここまで誰もいないと」
「…なんか、この世界にあたし達しかいないような気がしてくるね」
「アハハ、そりゃいいや!あたしにとっては最高の世界だよ」
「ウニャ//////」
「よし!あたしテンションが上がってきた!」
「シャーリー?」
「おい、ルッキーニ。スピードアップするから、離れないようにしっかり捕まっとけよ!」
「えっ…うっ、うん!」
すると、シャーリーはバイクのエンジンをふかして。
「よっしゃ、エンジン全開!
行くぞルッキーニ!」
「うんっ!」
バイクはスピードを上げる。
スゴい。風っていうか、突風があたし達を襲う。
でも、不思議な事に心地よい。
「やっほぉぉぉ!」
「シャーリーテンション上がりすぎぃ!」
「アハハ、ごめんごめん!
でもさ、なんかテンションが上がっちゃってさ!」
「もう…でも、シャーリーのそんな所も好き!」
「おおっ、嬉しいね!よし!」
シャーリーは息を思い切り吸い込んで、叫ぶ。
「好きだぁぁ!ルッキーニィィィ―――――――――――!!!!」
「ちょっ…!はっ、恥ずかしいよぉっ、シャーリィ…!//////」
「誰もいないから大丈夫だよ、ほらお前もなんか叫んでみろよ」
「え、でも」
「いいからいいから」
あたしは息を思い切り吸い込む。
そして、声の限り叫ぶ。
「シャーリィィィ―――!あたしを連れ去ってぇぇぇ!!」
「おおっ、大胆だな!」
「は、恥ずかしいよ…!//////」
「よっし、お前のその願い、叶えてやるよ!」
あたし達は、緑の道を走り抜ける。
あたし達が今何処にいるかは分からない。
でも、今のあたし達にはそんな事関係無かった。
今、この瞬間があれば、それは些細な事だから…
―――――――――――――――――――
「もう、日も落ちるな」
あたし達はバイクを押して、基地へ戻る。
調子に乗りすぎたせいで、途中でバイクのパワーが尽きた。
「調子、乗り過ぎちゃったね」
「タハハ、ほどほどにしときゃ良かったな」
そう言って、シャーリーは照れ笑いを浮かべる。
「なあ、ルッキーニ」
「なあに、シャーリー」
「いつか、いつか絶対にお前をリベリオンに連れて行ってやるからな」
「な、なにいきなり」
すると、シャーリーは眩しい笑顔であたしに笑いかける。
「お前を連れ去るんだよ、あたしの故郷に」
「シャーリー…」
「リベリオンはいいぞ、なんてったって自由の国だからな。…だからさ」
シャーリーはあたしの手をギュッと握って。
「この戦いが終わったら、一緒に暮らさないか?ルッキーニ」
「シャー…リー…//////」
「…あっ、ごめん、今の無し!無しな!//////」
夕陽が眩しくて、シャーリーの顔は見えなかったけど。
「…帰ろうか」
「…うん!」
きっと、何よりも眩しい笑顔。
そう勝手に思いながら、基地へと急ぐ。
シャーリー、約束だからね…?
絶対に、連れて行ってね…?
あたしは、シャーリーにそう、囁いた。
END