SELFISH VIOLET
自分でも分かるんだ。
シャーリーに愛されれば愛されるほど、あたしはどんどんワガママになっていく。
今あるモノより多くのモノを求めてしまうんだ。
シャーリーにこの事を言えば、シャーリーの事だから「気にすんなよ」って言ってくれるハズ。
でも、このままじゃいけない。
ちょっとは、シャーリーから離れなきゃ。
――SELFISH VIOLET――
《一日目》
「――だからクリスは最高に可愛いんだ。お前には分かるまい」
「ああもうさっきからその話何百回すんだよ。分かったよ、分かったってば」
…ん?あそこにいるのはマイ・ハニーのルッキーニ。
ちょうど昼飯の時間。
一緒に飯でも食うか。
「おーい、ルッキーニー!一緒に昼飯食べないかぁー!」
「シャーリー…!
…ごめん、シャーリー、あたし別に用があるんだー!」
「あ、そうなんだ」
め、珍しいな…ルッキーニが飯の誘いを断るなんて…
「ふぅ…しゃあない、堅物、一緒に飯食おうぜ」
「済まない、私はエーリカと約束があるんだ」
「おいおい、あたし一人ぼっちかよ…」
《二日目》
ああ、眠い…。だいたいここは起床時間が早すぎるっつーんだよ…
…しゃあねえ、飯食うか…
しかし、寝ぼけまなこでもあたしの目は、マイ・ハニー・ルッキーニを捕らえる。
我ながら賢い目だ。
「お、ルッキーニ。隣良い「ダメ」
被り気味で言われた。
「な、なんで…?」
「なんでも…理由は無いよ」
「……ルッキーニ…」
「あ、あたし食べ終わったから行くね。じゃあ後でね、シャーリー」
「……あ、ああ……」
な、なんか虫の居所が悪いのかな…
だっていつものルッキーニなら、喜んでベッタリくっついてくるのに…
ま、まあ、明日には戻ってるだろ…うん…
《三日目》
「なあルッキーニ、これ食わない?美味しいぞ」
「ごめん、あ、後でねシャーリー」
《四日目》
「これ読まないか、ルッキーニ」
「ごめんシャーリー、あたしミーナ中佐の買い出しに付き合わなきゃ」
《五日目》
「な、なあルッキーニ」
「…………」
「なんか…怒ってるのか?」
「………」
《六日目》
「ううっ…なんだよ…なんだよルッキーニ…!」
あたしはベッドの上で腐っていた。
ここ最近のルッキーニのシカトっぷりにとうとう心が折れてしまった。
「なんだよ、あたしが何かしたか…?
それともあたしなんか嫌いになったって言うのか…?」
「ルッキーニィ…なんで無視すんだよぉ…!バカヤロウ…!」
《七日目》
「ちょっと、トゥルーデ、ルッキーニ…!大変だよ!」
「ウニャ?」
「どうしたエーリカ。腹でも壊したか?」
「違うよ!ちょっと来て!」
あたしはエーリカに連れられて、基地の屋上に足を踏み入れた。
普段はこんな所、滅多に行かないんだけど…
…って、シャーリー…!?
「…俗世間にさようなら…」
「なっ、何をしているんだっ、リベリアンッ…!?」
シャーリーは、今にも下へ転落せんとばかりに絶妙なバランスで枠の上に立っていた。
「……あたしはウサギ…寂しいと死んじゃうんだ…そして生まれ変わったら、みんなに愛される猫に…」
「なっ、何を言ってるんだっ…!早く降りろ…!ルッキーニ、お前も手伝え!
エーリカ、お前はミーナ達を呼んで来い!」
「うっ、うん!」
シャーリーの目は死んでいた。
髪はボサボサだし、服はグチャグチャ。
「あたしに構うな…今なら、今にも翼が生えて空を飛べそうな気がするんだよ…」
「ちょっとシャーリー…!しっかりしてよ…!」
「ルッキーニ……」
すると、シャーリーの目が一気に充血して行く。
「ルゥゥゥッキーニィィィ―――――――――――!!!!!」
「…っ!!」
今まで聞いた事が無いような大声で、シャーリーが叫んだ。
あまりの大音量にあたしと大尉は、ビクつく。
「くあああっ…!このスベスベの肌っ…!久しぶりにお前に触ったよぉぉぉ!!
そして噛まれたい八重歯No.1!
この八重歯ぁっ…!
あたしな、あたしな、お前がいないと死んじゃうんだよぉぉぉ!!!!」
シャーリーの言葉を聞いてあたしは、ピンと来た。
……まさか……
あたしがシャーリーから離れた事が、逆にシャーリーの精神に異常をきたしたって事っ!?
「シャーリー…!」
「んあっ…!」
あたしはシャーリーの唇を自分のそれで塞いだ。
「んんっ…」
「んむ…ちゅ…」
久しぶりのキス。それは否が応でも激しいモノになる。
「ミーナ達呼んできた…って…何が起こったのコレ…?」
「……さっぱり分からん……」
呆然とする大尉達をよそにあたし達は、熱いキスを交わしていた。
―――――――――――――――――――
「なんだ、要するにこのままあたしに甘えてたらワガママになりそうだから、あえてあたしから離れた、って事か」
「う、うん」
正気を取り戻したシャーリーが何事も無かったかのように言う。
「…あのなあ、ルッキーニ…。今更何言ってんだよ。
そんなの、あたし達が恋人同士になる前からずっとそうだっただろ?」
「あたし、ワガママになったらシャーリーに嫌われちゃうんじゃないかって…ちょっと怖かったんだ」
と、あたしはシャーリーにギュッと抱き締められる。
「…お前がワガママになっても、あたしは大丈夫だよ。お前への愛があれば、乗り越えて行けるよ」
「シャーリー…///」
「…だからさ、もう無視なんて悲しい事はしないでくれ…な?」
「…うん…//////」
「じゃあさ、ルッキーニ…今夜は今までの分、愛し合えるな?」
「うっ…うん、そうだねっ…//////」
あたしは早速、シャーリーにベッドの上に押し倒される。
今夜は、ちょっとだけワガママになってもイイかな、シャーリー…
END