Step by Step
「なんだ、先客か。」
「バルクホルンかい?」
「あの子猫についていなくていいのか?」
「お前こそ、病院に行ってやれば良かったのに。」
「ふん、休みでもないのにそんな真似できるか。
それにしても、あのお祭り好きなリベリアンが祝日にテラスで一人酒とは、らしくないな。」
「お祭りはクリスマスで終わりなのさ。
大晦日はさっさと寝て、年が明けたらみんなで肉でも焼いて、
次の日からはいつも通りなんだよ、うちは。」
「ほう、それは面白い。まあ建前はともあれ、乾杯。」
「乾杯。」
「堅物には祭りは合わないんだろ。無理すんなよ。」
「別にそういうわけではないが……。」
「そういうわけだろ。お前ってさ、飲んでる時でもいまいち楽しそうじゃないっていうか、
なんか気が抜けない感じなんだよ。」
「はあ……」
「まあどうせ"軍人たるもの常に敵襲に注意しろ"とか何とか言うんだろうけどさ。」
「ぐ……し、しかしだな……。」
「あのな、お前はもう少し仲間を信頼しろ。気張ってんのはお前一人じゃないんだ。
年に一度くらい肩の力を抜かないと、魔力より先に体力が尽きちまうぞ?」
「……。」
「来年はちゃんとあたしを頼ってくれよな。」
「……やはりらしくないな。」
「今年の恥は今年のうちに、ってね。」
「諺か?」
「今考えた。」
「あのな……」
「ほら、もうすぐ0時だ。隊長んとこ行ってやれよ。」
「言われるまでもない。貴様のようなリベリアンと年越しなど御免だ。」
「あたしも堅物の顔を見ながら一年が始まるってのは勘弁して欲しいところだな。
それに、あたしの可愛いガッティーノがそろそろおねむの頃合だ。」
「まったくだ。それじゃ。」
「ああ、待ってくれ。」
「?」
「その、なんだ。お前には散々悪洒落をぶつけてきたけどさ、
あたしはあんたのこと嫌いじゃあないからな。」
「ふん、そういう科白は、別れ際までとっておくものだ。」
「バルクホルン……」
「挨拶は"A Happy New Year"で良かったか?じゃあな。」
「はは、お前こそ、そりゃあ年が明けてから言う科白だよ。
……Happy New Year,Trud.」
endif;