扶桑・ヨコスカ1945 formated by LYNETTE


「芳佳ちゃ……ん、んむぅ……ぁん」
「あむ……ん……」

 暗闇の中で、キス。
 絡み合う舌と混ざり合う二人の唾液。
 しんと冷え切って澄んだ大気に、わたしと愛する芳佳ちゃんのくぐもった声が小さく響く。
 早鐘のようなわたしの鼓動に混じって、愛しい愛しい芳佳ちゃんの鼓動も直接感じる。
 きっと、芳佳ちゃんにもわたしのドキドキ、つたわってるんだろうな。
 些細な事でも芳佳ちゃんと共有できる何かがあるだけで幸せになってしまうわたしは、今もこうして芳佳ちゃんを犬扱いして変態的なことをしようとしているにもかかわらず、私のほうがその存在に依存して飼いならされてる。
 芳佳ちゃんの故郷、ここヨコスカは三方を海に囲まれた小さな半島にある。
 今いる場所から1マイルも離れていない先には軍港があるって言うのに、地形が変化に富んでいるせいでまるで山深い場所にいるような錯覚を覚える。
 今日は1月1日。まだまだ暗い早朝。
 色々あって扶桑まで押しかけてしまった私は芳佳ちゃんと一緒に暮らしていて、扶桑の風習である初日の出を拝む為にここにいる。
 周辺は軍施設に程近く、一般人の立ち入りが制限されているから、わたしたちが二人きりになるにはもってこいの場所だった。
 少し身をよじると、わたしの厚手の冬物のブレザーと同じく厚めのつくりな芳佳ちゃんの紺色をした冬物セーラー服が擦れ、密着し、冷たい感触の中の暖かな体温に安らぎを覚える。
 そうして幸せに浸りながら、もっともっと幸せな気持ちになりたいと感じた私は、その身体を抱きしめる為に背中へと廻していた右手を背中の性感帯をなぞりながら下へ下へと移動させていく。

「!?」

 ビクン!と芳佳ちゃんの体が一瞬強張る。
 その反応に、まだ芳佳ちゃんの身体を抱く行為を続けている左手に力を込めて、より二人の体が密着するようにする。
 芳佳ちゃんの細いけど柔らかくていい香りのする感触を強く感じ、繋がれたままの唇の中で交換され続ける唾液の味が甘露となってわたしの心をとろけさせる。

「んっ……」「んむ……」

 くちゃ、ぴちゃ、とろり。

 唇の端からそれが垂れて、首筋へと届く感触。
 その伝った筋が性感帯にでもなったように、仄かにくすぐったく甘い感覚が駆けて、快感になる。
 そんな気持ちよさのお裾分けというわけでもないけれど、魔法発動中の印である尻尾を避ける動きで右手を更に下げて、量感は無いけど形と感触のいいお尻へと到達する。
 そこには扶桑式のボディスーツの無い、むき出しのお尻がある。
 物覚えのいい芳佳ちゃんは、その敏感な場所に触れられてももう身体を強張らせたりしない。
 さっきの背中をなぞる行為がこうしてお尻に届く事を知っているから。
 だからわたしの手の感触を待ち焦がれていたかのように、その触れた場所から僅かな動きが伝わってくる。
 それはわたしの手を、指を誘う動き。
 わたしの可愛いワンちゃん、牝犬ヨシカがリネット・ビショップの事を求める動き。
 芳佳ちゃんも待ちきれなかったんだね。
 待ちきれないから、私に抱かれる事で動きが不自由にもかかわらずお尻と尻尾を振る。
 わたしは優しいからちゃんと期待に応えてあげたいんだけれど、今日はちょっと別にする事があるから芳佳ちゃんが求める最後の部分まではしてあげるわけにはいかないんだ。
 ゴメンね、芳佳ちゃん。
 柔らかい素肌の感触を楽しみながら、まず左側の尻たぶをやわやわと揉んで、次に右側にも同じ事をして、尻尾の付け根をくすぐって、ちょっとだけその肌から手を離して股間に差し込んで、アリの門渡りのあたりを指で刺激する。

「ひぃん!」
「んむはぁ……ふぅ、んふ……まだ、お口はなしちゃだぁめだよ、芳佳ちゃん」

 敏感な場所への刺激に、芳佳ちゃんがのけぞって、二人の甘い甘いキスの時間は終わる。
 月の無い夜空、かすかな星光に照らされて、二人の口からは銀色の糸が伸び、途切れる。

「ご、ごめんねリーネちゃん。でも、その……くすぐったくて……」
「芳佳ちゃん……ふふふ、そこは素直にキモチイイっていっても良いんだよ」
「えと……うん、きもちよくて、ちょっとびっくりしちゃったの。あ、あの……でもでもっ、キスを、止めたくなった訳じゃないんだよっ」
「うん、わかってるよ。でも、わたしも止めたく無かったのに、芳佳ちゃんから口を離しちゃったんだよね」
「う……ごめんね、リーネちゃん」
「ふふ、いいよ。これからちょっとゲームに付き合ってくれたら許してあげる」
「ゲーム?」
「うん、まずは、ね……」

 ポケットから予め用意しておいたものを取り出して、芳佳ちゃんに見せる。

「……これをつけて欲しいの」

 それは皮製の目隠し。

「ず、ずいぶんと容易がいいね、リーネちゃん」
「芳佳ちゃんも……んふふ……」

 良いながらそのむき出しの股間に触れて、感触を確かめる。

「ああんっ」
「ぴちゃ……ぺろっ、随分と準備が早くなったよね。嬉しいな」

 触れた指を目の前まで持ってきてからそれを芳佳ちゃんに見せ付けるようにして、舐める。

「は、はずかしいよっ! リーネちゃん」
「そうやって恥ずかしがる芳佳ちゃんのこと大好きだよ……ちゅ」
「りーねちゃん……」

 軽く唇に口をつけてから、目隠しをつける。
 つけながらもっと反応が見たかったから追い討ちをかけてみる。

「さっきキスをする前、ここで服を脱いでもらってからもう『にちゃ』ってしてたよね。わかってるよ」
「も、もうっ! いちいち恥ずかしくなる事言わないでっ……ほ、ほんと、ほんとに、恥ずかしいんだから……」

 芳佳ちゃんは目隠しを付けられる事に抵抗せず、ただそういったえっちな指摘に対して恥ずかしがる。
 愛する人の事を何でも分かってるわたしには、もちろんこんな時の芳佳ちゃんをなだめるのに一番の方法もわかっている。
 わたしのベストを捲り上げて、シャツのボタンを外す。
 左手で芳佳ちゃんの右手をとる。、
 いろんな事を期待してブラジャーをつけてないわたしの胸にその手を誘導する。
 むにゅ……ぎゅ。
 初めは柔らかく、そして次にはぎゅっと強めにおっぱいを掴まれる。

「ぁんっ! ちょっと、強い、よぉ……」
「りーねちゃぁん」

 誘導していない左手も伸びてきて、芳佳ちゃんにじっくりとおっぱいを弄ばれる。
 もみもみ、むにゅむにゅ……。
 何度も繰り返された行為で私の弱い所をすっかり知り尽くしているから、目なんて見えなくっても恐ろしいほど的確な攻め手を見せる。

「あ、ああんっ……よ、しかっ……ちゃぁん……、今は、ちょっとだけっ……」
「ううん、もっと、もっと触りたいよぉ」

 甘える芳佳ちゃんにキュンとしながらも自制心を動員してその手を引き剥がす。

「はぁ、はぁ、はぁ……あのね、芳佳ちゃん……」
「……うん、なぁに?」

 ちょっと不満そうな返事。私だって大いに不満ではあるんだけど、後でたっぷり悦ばせてあげるし、悦ばせて貰いたいから今は我慢だね。

「あのね、その目隠しをしたまま、わたしの事を追ってきて欲しいの」
「ええっ!? 無理だよ。目隠しなんて……それにここ、山道だよ」
「四つんばいなら転ばないよ」
「え!?」

 犬のように四つんばいに、そう言いながら芳佳ちゃんに用意していた次のものを装着する。
 二人の思い出の品、犬耳によく似合う真っ赤な首輪。
 そして着けられた芳佳ちゃんは観念したようにというか、スイッチが入ったというか、そんな様子でその場にしゃがみこんで、膝と膝の間に両手を付いた。
 犬で言うお座りの姿勢。
 下の服を着ていない今の芳佳ちゃんがそんな格好をすると、女の子の一番大事なえっちな部分が丸見えになる。
 寒さ対策で魔力を使っていた私は使い魔のスコティッシュホールド譲りの夜目でそこを凝視。
 さっきからの行為で既に濡らしていたズボンを更に濡らしてしまう。

「素直な芳佳ちゃん、大好きだよ」
「うん、褒めてくれるリーネちゃん、好き」

 手を置くのに丁度いい位置にある頭を軽く撫でると嬉しそうに鼻を鳴らす芳佳ちゃん。
 大き目の目隠し越しにもその表情が笑顔だって言う事がわかる嬉しそうな口元と、パタパタと振られる尻尾。
 芳佳ちゃんが喜んでくれると、私も嬉しいな。

「芳佳ちゃんはワンちゃんだから、鼻が利くよね」
「え、うん。一応少しは利くよ」
「それじゃあ、ね」

 そうしてわたしは、溢れ出したえっちなお汁に濡れたズボンを脱いで、体温の残るそれを芳佳ちゃんの鼻先に持っていく。

「芳佳ちゃん、この匂いを追ってきて」
「この匂いって……もしかしてリーネちゃんの……」
「は、恥ずかしいよ、芳佳ちゃん。あの……あのね、いますごくスースーしてるの」
「ああ……リーネちゃんの匂い……すーっ、すーっ」
「よ、よしかちゃあん! そ、そんなに音を立てて匂い嗅がれちゃうと私のほうが恥ずかしいよっ!」
「あは、こ、これでおあいことか……どうかな?」
「もうっ、そんな芳佳ちゃんも好きだよ」
「でも、あの……幸せに浸っていないで、ちゃんと追いかけてきてね。絶対だよ」
「あ、待ってよリーネちゃん」

 制止を無視して先を急ぐ。
 芳佳ちゃんが自分で目隠しをとってしまうとか、そんな事は全く心配しなかった。
 だってそれが、度々繰り返されてきた二人の暗黙のルールだから。
 だからわたしは、先の展開に心を躍らせてスースーする股間をえっちなお汁で潤わせながら、高台への道を急いだ。

 実は今回のこれは数日前から念入りに準備してあったりした。
 年末何かと忙しい芳佳ちゃんの身の回りのことを手伝いつつも時間を作ってはここへきて、何箇所ものポイントで……あの……ひとりえっちを……その、何回も……してた。
 わたしは外で行う背徳的な行為に身体を昂ぶらせ、この日のことを思って盛大に果てる事を何度も繰り返した。
 だからきっと、その辺に撒き散らした私の匂いを辿ってくる限り芳佳ちゃんは何の危険も無く私を追いかけてこれる。
 もしもの事とかは、考えない事にした。
 だって、わたしは芳佳ちゃんのことだけを考えて危ないところを通らないようにお汁をこぼしたし、わたしの事が大好きな芳佳ちゃんならきっと確実にその匂いを追ってきてくれるから。
 これは二人の絆を確かめる為にはもってこいのゲーム。
 本当は確かめる必要なんて無いほど強い絆なんだけど、たまにはこうして形に出来るような行為があったっていいんじゃないかな、ってそう思う。
 でも、なんでだろう。
 なんだか、不安になってくる。
 考えないはずの色んなもしもが首をもたげ、胸が苦しくなってくる。
 もしも、もしも、もしも……芳佳ちゃんに何かあったらどうしよう……。
 でも、今ここで待つことを止めてしまうのは、芳佳ちゃんのことを信じることを止めてしまうようで、それもイヤだった。
 自分で始めたことなのに、一人ぼっちの暗闇の中でそんな自分の愚かな行為を恨み始める。
 そしてそう考えることが芳佳ちゃんとわたしの絆を疑っていることになるかもしれないと思い、思考がぐるぐるとループを始める。
 そんな状態のまま、一歩も動けずに暗闇の高台で待つこと暫く。
 東の空が白み、続いて赤みを帯び始めた頃に、果たして芳佳ちゃんはその姿を現した。

「リーネちゃん、リーネちゃん……どこ?」

 私の名前を呼び、セーラー服のスカーフに結びつけたわたしのズボンの匂いと地面の匂いを嗅ぎ比べ、近付いてくる。
 ズボンの匂いを嗅ぐ時は幸せそうに、そして地面の匂いを嗅ぐ時は不安そうに……。
 そんな様子で四つんばいのままこちらに近付いてくる芳佳ちゃんの姿に、感動で胸がいっぱいになる。

「芳佳ちゃん!」
「リーネちゃん!」

 本当は私のところまで辿りついて来るのを待つつもりだったのに、思わずこちらから行って抱きしめてしまった。
 ここへ来れて当たり前、っていう心つもりでいたのに、何故か涙までこぼれてしまう。

「芳佳ちゃん、芳佳ちゃあん……」
「リーネ、ちゃん……泣いてるの?」
「う、うん……ぐすっ……ご、ごめんね、こんな無茶な事させて」
「リーネちゃん……無茶なんかじゃないよ」
「芳佳ちゃん……」
「わたし、リーネちゃんのいい匂いを辿れたよ。だからね、あの……褒めて欲しいの、いっぱい……いっぱい」

 尻尾を振りながらわたしに褒めてと訴える芳佳ちゃんの姿に、改めて胸がいっぱいになって、言葉も無いままにただ抱きしめる腕に力を込める。

「あんっ、柔らかいけど、苦しいよ……リーネちゃん」
「ご、ごめんなさいっ」

 その時、光が来た。
 慌てて我に返り、律儀に着けたままだった芳佳ちゃんの目隠しを外す。

「あっ、リーネちゃん? っ……眩し……あ……初日の出だ……」
「ご、ごめんね芳佳ちゃん。出る瞬間、見れなかったでしょ……」

 見下ろすヨコスカの軍港の向こう、トーキョー湾を挟んでボーソー半島の山から、オレンジに輝く太陽が昇る。
 港には大小さまざまな軍艦が並んでいる。一際大きいのは赤城の同型艦の天城で、他にもその護衛の艦艇たちが舳先を並べ、静かに新しい年明けを祝っているようだった。
 抱き合ったまま、眩しさに目を細めながら、澄んだ空気の中で輝きを放つ陽を二人で見つめる。
 やがて初日の出は上りきり、その輝きを増していく。
 眩しさにそこから視線を外せば、自然に愛しい人と視線が絡みあう。
 曙光に照らされた横顔が赤みを帯びて、視線を合わせたときと同じ様にどちらからとも無く自然に唇が触れ合う。
 暗闇の中での行為をなぞるように背中を撫で、腰を通って尻尾を避け、むき出しでスースーしてるはずのお尻へと辿り着く。
 今度は両手でそこをさすり、もみしだく。
 左右の手で性感帯を丹念に責めるうちに、芳佳ちゃんの手もわたしの胸へと伸びてきた。
 お互いのしたい事を探り合うリズムが一致して唇が離れ、芳佳ちゃんがお尻を突き出し気味の姿勢で頭を下げ、わたしの胸に顔を埋める。

「リーネちゃん……お天道様に見られてるの、すごく恥ずかしいよ」
「扶桑では、太陽も神様なんだね」
「うん」

 芳佳ちゃんにおっぱいをもまれ、心地よさに身を委ねながらながら呟く。

「じゃあさ、芳佳ちゃん。折角だから神様公認の仲になろう……ね」

 返事は聞かず、芳佳ちゃんの一番気持ちいところを両手で責めはじめる。
 嬌声と共に芳佳ちゃんも応えて、私の胸に直接手を這わす。

 後には二人の声が響いて、わたしたちは神様公認の仲になった。



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