angelus


年明け早々、いきなりのネウロイ襲来にもひるまず立ち向かい、あっさり撃破したウィッチーズ。
但し、新年のお祝いがてら、お屠蘇を飲み雑煮を食べ皆で和んでいた途中での襲来だったので
戦闘を終え基地に帰って来た頃にはすっかり正月気分も空回り。
「どうする?」
「とりあえず、今日は片付けて寝るか……」
めいめいがそれぞれ片付けを行い、だらだらと眠りに就く。
あっけない新年初日の終焉。
勿論、朝起きたら、また改めて新年の祝いが始まるのだろう。
彼女達は何かとお祭り好きなのかも知れなかった。

そんな中、エーリカは一人別行動を取っていた。。
シャーリー達が作った紙吹雪の残りをごっそり頂き、よいせと担ぐとそのままトゥルーデの部屋に持ち込んだ。
「トゥルーデ、お待たせ~」
「何だその大きな袋は」
「紙吹雪の残り物~」
不意にトゥルーデは笑った。エーリカは理由を聞いた。
「一足遅れて来てしまったサンタみたいだ」
トゥルーデはそう言うと、ふっと笑顔をエーリカに向けた。エーリカも笑顔で袋を床に置いた。
「未来のサンタでも良いよ。とにかくやろうよ、ね?」
「大体分かるよ、エーリカのやろうとしてる事は」
「なら良いよね?」
「掃除、大変そうだな」
「後のことなんて気にしな~い」
エーリカはにやけると、袋から紙吹雪を両手一杯にすくい取り、部屋の天井目掛けて投げた。
部屋の中をきらきらと光り輝き、舞い降り、散る紙吹雪。
ひらひらと舞う紙吹雪を手で受けとめ、指の隙間から落とす。
ふたりの指に煌めく指輪に負けぬ美しい情景が、質素な部屋をはちきれんばかりに輝かせる。
「あーあー、部屋が」
「綺麗だね。雰囲気出るよね」
至る所紙片だらけになるも、お構いなしに吹雪を散らし、その中で抱き合い、口吻を交わす。
雪降る中での口吻にも似て、部屋の中に浮かび上がる二人の姿はまるで絵画。
二人揃って紙吹雪まみれになり、少しおかしさを覚えた。
「何やってるんだろうな、私達」
トゥルーデがにやけながら、後悔とも自嘲ともとれる言葉を口にする。
「楽しんだ者の勝ちだって。……あ、トゥルーデ」
頬と額についた紙片を取り払い、唇を当てる。
「エーリカも」
頭と肩についた紙片を払い除ける。微笑むエーリカ。

ひとしきり紙吹雪の中で遊んだ後、エーリカはベッドの隅に置いてあったかごを持ち出してきた。
「そしてこれ。やっぱり合うと思うからさ、トゥルーデ」
この前着たばかりの、セクシーなランジェリーを取り出す。
二人して服を脱がし合い、ランジェリーを身に纏う。
「やっぱり……何度着ても、ちょっと……」
戸惑うトゥルーデを見てエーリカは我慢出来ないとばかりに抱きしめ、キスをする。
「トゥルーデ、とってもエロ~い。見ててなんか襲いたくなっちゃうよ」
「エーリカだって十分あぶない! 特にお前は、身体の釣り合いとか、その……」
「トゥルーデ、したい事が顔に書いてあるよ~」
「ううっ……」
「良いじゃん。二人して楽しもうよ?」
答えは聞かないとばかりに、唇を塞がれるトゥルーデ。
分かってる。エーリカのしたいこと。私も同じ気分と言う事も。
また、この前と同じ事をしてしまう。
だけど、それはとてもステキな事で……エーリカも私も、心躍り、身体も弾む。
キスの次のステップに進むまでに、時間は掛からなかった。
その次を、じっくりと時間を掛けて、二人はお互いを愛する。

激しく乱れる息を整えるトゥルーデ。紙吹雪に埋もれかけた身体を起こし、エーリカを抱きしめる。
同じく肩で息をしていたエーリカだが、トゥルーデに優しく抱かれているうちに、
いつしか呼吸も整い、ふたりほぼ一緒のリズムで、ゆったりとした息遣いになる。
「写真、撮っておきたいよね」
「きっと、後で見て恥ずかしくなるだけだぞ?」
「私とトゥルーデがどんなコトしてたか、記録~」
「そ、それはわざわざ写真にしなくたって……」
「全部覚えてるって言いたいの? トゥルーデ」
「ううっ、いや、それは……」
エーリカはトゥルーデから少し離れると、紙吹雪を散らせ、写真のモデルの様に、ポーズをつけてみた。
ひらひらと舞う紙吹雪の中、背を向けてトゥルーデを見つめるエーリカ。
「どう? こんな感じ?」
彼女の背中には、まるで羽が生え、髪の輝きからは光輪が見えた気がして……
そう。彼女はまさに、トゥルーデにとっての、愛すべき使徒。
それは目の前に居る最愛のひと。エーリカ。
何度呼んだか忘れた彼女の名を繰り返し呼び、抱きしめる。
「くすぐったいよ、トゥルーデ」
「エーリカ、愛してる」
「私も愛してる、トゥルーデ」
抱きしめる力を緩めず、トゥルーデはエーリカのうなじに唇を当て、舌を這わす。
自然体な彼女をあまさず味わい、胸のふくらみを吸い、首筋に自分だけのしるしをつけ、エーリカの唇へと回帰する。
エーリカは瞼を閉じ、ゆっくりと開け、目の前で自分を見つめる最愛のひとの姿を焼き付ける。
トゥルーデはそんなエーリカのしぐさに心うたれ……言い知れぬ、幸せな気分になる。
彼女の瞳の輝きは、トゥルーデを見つめる純真な気持ち。
瞳の奥に覗くのは、トゥルーデの全てを自分のものにしたいと言う純粋かつ重い情念。
それらが混然と、トゥルーデを見つめ返す。潤んだ目はトゥルーデの心に重く鈍い一撃を喰らわせ、
理性の鱗がひとつ、またひとつと剥がれ落ち、最後に残る無垢なひとつの気持ち……
(ただエーリカを愛しい、ずっと)
と言うただひとつのことに、円環の如く戻る。
『官能を殺す事など出来るだろうか? むしろ官能の無邪気さを知るべきだ』
カールスラントの哲学者の言葉は、全くもって正しい。
かのひとの“血”で示されたそのことばをぐっと噛みしめ、トゥルーデはエーリカをただ、愛する。
エーリカもトゥルーデの心を知り、しっかりと受けとめ、全身全霊でこたえる。
トゥルーデは再びエーリカの虜となり、エーリカの中へと堕ちていく。
その意味では、彼女は堕天使、つまり“悪魔”の様なものに近い存在なのではないかとも思える。
実際彼女の渾名は「黒い悪魔」。偶然か必然か。
でも、そんな事は、二人が愛し合う時には全く意味のない事。
今夜も、二人はお互いをより深く、愛し、もっと好きになる。

明け方。
薄く顔を出しかけた陽の光が窓辺に射し込み、朝が近い事を知らせる。
無数の紙吹雪に埋もれ、幸せそうに抱き合って眠るふたり。
戦いの時には決して見せない、やさしい乙女の顔。
恋人同士にだけ見せる、こころを許し合った穏やかな表情がそこにある。
朝になれば、またいつもの訓練や哨戒などの任務が二人を待ち構えるが、
せめて今だけは、そっとしておいて欲しい。ふたりきり、自由にさせて。
静かに同じ時を過ごし、朝を迎える二人の表情は穏やかで美しく、
空駆ける戦乙女も、いまはピュアな“天の使い”。

end



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