chaos


夢を見た。とんでもない夢。話せば長い。あれは……

「あっはっは、宮藤、貴様ぁ! 私と言うものがありながら!」
迫ってくるのは坂本さん。どうして笑いながら扶桑刀を振り回して追っ掛けて来るのか分からない。
木の茂みをうまく使ってひょいひょいと逃げているのに、坂本さんは扶桑刀で乱暴に枝葉を切り裂いてなおも追ってくる。
その殺気、尋常じゃない。……殺されると私の直感が告げる。
坂本さんの後ろをひたひたとついて来るのはペリーヌさんとミーナ中佐。レイピアに拳銃に、
二人揃って物騒なものを持って坂本さんの後を追って来ている。
「美緒待って~」
「少佐、わたくしも加勢致しますわ! 今度こそ豆狸を屠って、少佐をわたくしのものに……」
「……ペリーヌさん、今何て?」
「ですから、わたくしの……」
「とりあえず、宮藤さんを片付けてから考えましょう」
目が怖いよミーナ中佐。三人に追い掛けられて、私は基地の中を逃げ回る。
誰か、誰か助けて!
あ、リーネちゃん! てか何でボーイズ持ってるの? こっち向けないで!
「芳佳ちゃんそこどいて! そいつ殺せない!」
「はいい!?」
私の疑問に答える事なく、リーネちゃんは狙いを付ける。
慌ててしゃがみ込む。
リーネちゃんは迷わず引き金を引いた。
強力な一発は坂本さん目掛けて飛んでいく。しかし扶桑刀で弾を両断する。
「扶桑刀を舐めるな! この鬼畜が!」
肉薄する坂本さん目掛けてボーイズを連射する。リーネちゃん、あんなに早くリロード出来たんだ……。
同じ場所に集中して受けたら、流石の扶桑刀も刃こぼれして折れる。
鈍い金属音をして、坂本さんの扶桑刀が折れた。そのままもう一発撃たれ、地べたに這いずる。
「ええい、リーネ……貴様もか」
坂本さんの叫びを止めるべく、リーネちゃんはボーイズを連射する。
ああ、ペリーヌさんがレイピア毎撃ち抜かれた。
ミーナ中佐が素早くPPKを構えるも、リーネちゃんの一発の前に沈む。
気付くと、私の後ろに、三人が血溜まりの中に沈んでいる。
「あああ……リーネちゃん、何て事を」
ゆっくりとボーイズを下ろしたリーネちゃんに、私は近付いた。
「芳佳ちゃん」
満面の笑み。
火薬が弾ける音が、数回。私は音の在処を見た。
お腹を撃たれてる。リーネちゃん、それ護身用のPPK……
どうして私を撃つの?
力が抜けて、苦痛に歪む私の顔を見て、リーネちゃんは微笑んだ。
目が、怖いよ……。
「芳佳ちゃんは私のもの……誰にも渡さない」
「どうして? リーネちゃん、どうして?」
「他の誰かの手に掛かるなら、いっそ私が」
そういうものなの、リーネちゃん?
ああ、意識が遠退く……リーネちゃん笑顔がステキだけど……これじゃあもう、私……

「ふうん、凄い夢だね」
リーネちゃんは私が見た初夢を、興味津々に聞いていた。
一緒にゆっくり寝ていたのに、何で私はこんな強烈な夢を見るんだろう?
「リーネちゃんはどんな夢みたの?」
「私は……、今は、秘密。後で教えてあげる」
「うん。必ずだよ」
でも何でリーネちゃん、部屋にボーイズを持ち込んでるの? おまけにPPKまで……。
そ、そんな事、無いよね。
これはきっと夢だよね。私の服が真っ赤に染まってるのも。
きっと夢。
これは、きっと。

end


続き:0641

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