無題


「えいっ! やあっ…… はぁ、はぁっ」
「どうした宮藤! 息が上がっているぞ!」
「は、はい! えいっ! やあっ!」
八月とはいえ少し寒いブリタニアの朝
毎朝後ろ髪を引かれながらも暖かいベッドに別れを告げ、最早日課になりつつある早朝の鍛練に励む
「よし、今日はここまでだ」
「はい! ありがとうござい、ま……あ、れ?」
お辞儀をしようとしたところでふらついてしまい、坂本に抱き止められる形になる
「おいおい大丈夫か、宮藤?」
「あっ、す、すみません ……!!」
慌てて離れようとしたのだが何をどう間違えたのか、先日と同じように坂本の胸を鷲掴みにしてしまう。
「……宮藤」
「…………」
「宮藤、もう大丈夫なら離れろ」
「………………うわぁ! すすすすみません!!!」
しばしの間トリップしていたらしい
「まったく……わざとやってるんじゃないだろうな」「ち、違います!」
……たぶん、と心の中でだけ呟く
「それにしても、最近ぼうっとしている事が多いんじゃないか?」
「い、いえ、そんな事は」
「何か悩み事があるなら聞くぞ? 馴れない事も多いだろうしな」
「坂本さん……ありがとうございます!」
「あっはっはっはっ! 遠慮するな、ここでは私がお前の親代わりだからな」
坂本につられて芳佳も遠慮がちに笑う
「さあ、話してみろ。 誰かに話すだけで楽になる事もある」
「うぅ……笑わないで下さいよ?」
「誰が笑うものか」
「…実は最近、あまり眠れてないんです……おかしな夢も見ますし」
「おかしな? どんな夢だ?」
何故か突然顔を赤くする芳佳
「それはっ、そのぅ……リーネちゃんの、夢です」
それを聞いて坂本はチラリとリーネの部屋の窓を見た(今日も、か)
「それに、一日中リーネちゃんの事ばかり考えちゃって、寝る前もリーネちゃんの事で頭がいっぱいになってなかなか寝付けなくて……」
リーネの部屋の方をチラチラ見ながら黙って話を聞いていた坂本だったが
「あっはっはっはっ! なんだ、そんな事か」
「そんな事って! ひどいです坂本さん! 私真剣に悩んでるんですよ!?」
急に笑いだした坂本に、笑わないって言ったのにぃ! と泣きそうになりながら怒る芳佳
「すまんすまん、まぁしかしその悩みならもう半分は解決していると思うぞ?」
「……? どういう事ですか?」
なぁに、簡単な事だ、と何やら耳打ちすると芳佳の顔はますます紅潮していった…

リーネは顔面蒼白だった。よ、芳佳ちゃんと坂本少佐が抱き合ったり、ほっぺにキスしたりしてた…よね
ベッドに突っ伏して大きなため息を吐く
やっぱり芳佳ちゃんは少佐と……だから毎朝早起きしてでも鍛練に行ってるんだ
リーネが壮大な勘違いをしていると、部屋のドアがノックされる
「はっ、はーい」
「…リーネちゃん、だいじな話が、あるの」

おわり


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