I(ai)


私は腕を組んで考えを巡らせていた。
私は果たして彼女を愛している、と言えるのだろうか。
私の目の前、私のベッドでだらしなく身体を投げ出し、荒い呼吸を繰り返し、
うわごとの様に私を呼ぶ、いとしの人を見て思う。
確かに、私と彼女は恋仲として……と解釈していいのか分からないが……隊に居る。
だけど、彼女と共に行動を共にし、彼女と一緒に夜を明かし、彼女を愛し愛され……
幸せである筈のとき、一瞬、頭を過ぎる問い。

これで、彼女は幸せなのだろうか?
これで、私は幸せなのだろうか?
これで、いいのか?

余りにも根本的な問い掛けを前にして、私は彼女の秘所をまさぐっていた指の動きを止める。
突然の中断に少し身体を震わせ、抱きついて、腰を私に押し当て、身体をゆっくりとしたリズムで動かし、
熱い吐息混じりに名を呼ぶ。
「どうしたの? ねえ……」
私はどう答えるべきか戸惑う。
だが、声を出す事も、考えを続ける事も、彼女は許してくれなかった。
唇を重ね、舌が絡んでくる。拒絶出来ず、私も彼女を味わう。
つうと透明な雫が一筋垂れ、私はそのままベッドに押し倒された。
今度は私がとばかりに、彼女は私の大切な……敏感な場所に容赦なく“爆撃”を喰らわせた。
反射的とも言うべきか、吐息が声と一緒に出てしまう。
彼女は私の弱点を全て知っている。私も彼女に関しては同じだが、ふたりで一緒にベッドの上で
“格闘”をしているときは、お互い快楽と刺激と愛情に全ての感情が押し流され、
単純な事……

彼女を愛したい。
彼女を愛している。

それだけを全身全霊で表現し、ふたりして堕落していく。
官能と言うには余りにも激しく、野性的と言うには余りにも優し過ぎて。

結局、私は答えを見つけられないまま……愛する人に身を委ねた。

夜明け前、ベッドの上で二人一緒に飲むコーヒーが美味しい。
代用品じゃなくて、本物をロンドンで買って来たの、とびっきりのを。と微笑む彼女。
「ああ。香りが最高だな」
私は微笑んで答える。
ほのかに漂う湯気が、二人の間をゆらりゆらりとかすめ、天井へと消えていく。
コーヒーのささやかな刺激で、少し前の問い掛けを思い出し、反芻してみる。
「どうしたの?」
「いや、くだらない事さ。これで良いのか、幸せなのかって、少し思っただけ」
「どう言う事?」
「な? 下らない事だろ? そんな事を考えてしまう程、私はくだらないって事」
私は苦笑した。
「そんな事ない」
彼女はカップを置くと、私の顔にそっと手をやった。
ゆったりとした、優しいキスをくれた。
「私達、いつでも幸せじゃない?」
「その通り」
「考え過ぎ」
「ゴメン」
彼女が頭を肩に寄せてきた。私はそっと肩を抱き寄せ、この先の事に想いを馳せる。
これが邪念と言うやつか。もっと私は、彼女を真剣に愛さないと。
決意にも似た感情が、肩を抱く力に伝わったのか、彼女は身を私に委ねた。
今度は私から、そっと口吻した。
愛している証を。

end


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