This love never ends
よく「永遠の愛」などという言葉を耳にするが、私はそんなのは信じてなどいない。
愛に限らずなんだっていずれ終わりが来る物。
それにあまり盲目的に愛し過ぎていると、その愛が冷めてしまった時が嫌だから、私はミーナとは付き合ってこそいるが、キス以上の関係を求めなかった。
…そう、あの時までは。
――This love never ends――
「ねえ、トゥルーデ」
「なんだ、ミーナ」
昼下がりの食堂。
私はミーナに話しかけられる。
二人で向かいの席に座っている。
ミーナはどことなく怒っているようで。
「トゥルーデ、私の事愛してる?」
「なんだいきなり。そんなの当たり前だろ」
「ならどうしてキス以上の事をさせてくれないの?」
「どうしていきなりそんな事を聞く?」
「私達付き合っているのよね?…これじゃ繋がりが希薄過ぎて…」
「キス以上の事をしなくとも、私達はお互い想い合っているじゃないか。
…私は現状それでいい」
私の言葉を聞いたミーナは暫くの間、黙っていた。
ミーナの瞳が暗く沈んで行くのが分かる。
「ミーナ…私は」
「私、それじゃ嫌よ」
「…え…」
「せっかく貴女と両想いになったんだもの。…私は貴女が欲しいわ」
ミーナは真っ直ぐな瞳で私を見つめそう言った。
私を見つめる紅色の瞳が揺れる。
「トゥルーデ」
いつの間にかミーナは私の近くに来ていた。
そして私はミーナに抱き締められる。
「…もう私はキスだけじゃ嫌。身体中で貴女を感じたいの」
「ミーナ、私は今のままでいいんだ…」
「…トゥルーデ…どうしてそこまで拒むの?」
ミーナは悲しそうな声で呟く。
「…私は…お前の事を愛しすぎたくないんだ…。
いつかこの想いが消えた時…その時の事を考えると…私はお前をそこまで愛せない」
「…つまり“永遠”は無い、という事かしら」
「…そういう事だ」
…部屋中に時計の音だけが虚しく響く。
そんな憂鬱な静寂を破る様にミーナが口を開いた。
「…そうね。貴女の言う通り永遠なんて無いのかもしれない。…なら」
ミーナは私の頬に手を添え優しく、だが力強く私に言い放つ。
「私達が永遠を切り開いて行けば良いのよ、トゥルーデ」
「私達が…永遠を…?」
「そう、永遠が無いなら私達が私達なりの永遠を創れば良いの」
私は驚いた。
先程まで揺らいでいたミーナの紅色の瞳は、今まで見た事が無いくらいに輝きだしていた。
「…私達にそんな大それた事が出来るかな」
「出来るわ。だから、トゥルーデ」
ミーナは私の手をギュッと握る。
「今はまだ我慢しておくわ。でも、覚悟してね。
いつか貴女の身体も私のモノにするから」
「…やれやれ、やけに堂々とした宣言だな」
ミーナの言葉に私はただただ、苦笑する他無かった。
だが、それも悪くないと思ってしまった私はやはりミーナに毒されているのだろうか。
「だから今はこれで我慢しといてあげる」
ミーナはそう言うと、私にキスをする。
ミーナの表情はまるで子供みたいな無邪気な顔。
ミーナに全てを許してしまうのも、時間の問題かもしれないなと思いつつ、私はミーナからのキスを受け入れる。
――ミーナ、お前のおかげで少し考え方が変わった。
ありがとう。
だが、私が“永遠”を認めた時、それは私が完全にお前に堕ちた時だ。
お前がそれでも良ければ、私を受け止めてくれないか。
その時はお前に全てを委ねてみる。
私の酷く頑固な所まで愛してくれるならば。
私は“永遠”を信じてみる事にするよ。
END