エイラ観察日記~丘の上のエイラ~
―――観察2日目―――
2日目、とあるが実際は先日の日記から何日か経っている。この場合は2ページ目と言った方が正しいだろう。
そんなことより自分がここまで日記を続けられない人間だとは思わなかった。まさか2日目からとは。
でも夜間哨戒を毎日やってて眠いし忙しいしで仕方がないんです。忘れてたわけではないのです。けして。
というわけで今日は私とエイラのお休みの日。って2人揃っての休みは何ヶ月ぶりだろうか…。
まあ今は先日のエイラによるすすり泣きの件によってシフトが全て一緒に変更されているから休みが揃うのは当たり前なのだけど。
私の休みは部屋で任務のある日となんら変わりない1日を過ごす。でもそれはエイラと一緒のシフトになる前の話で、1人だけで外に出る気がなくていつも通りな生活になっているだけだ。
しかし今日は2人でお休み。そこでエイラの提案で近くの丘に行くことにした。
ミーナ中佐に外出することを伝えて許可をもらい、芳佳ちゃんとリネットさんにはお弁当を作ってもらった。
哨戒明けでちょっと眠いけれど、せっかくの休みを無駄にしないためにも普段使わない気合いを入れて耐える。
提案者エイラは朝からふわふわ、きょろきょろ、そわそわを繰り返し、ふと止まったかと思うとニヤっと口の端を上げている。
そのうえ芳佳ちゃんたちはもちろん、シャーロットさんやハルトマンさんに今日の予定を嬉しそうに自慢していた。声が大きい。
私もエイラがこんなではあるけど、部屋と任務以外で2人っきりで過ごすのはとても楽しみだったので、他の人から見れば2人してニヤニヤしていたのかもしれなくて少し恥ずかしい。
基地を出発、丘への道を歩く。
道中は私の腕を取ってゆっくりと歩いて行くエイラについていき、他愛もない話をしていた。
丘に到着。
大きい木の下のなだらかな斜面に寝転び、まずはお昼寝(あの日からずっとエイラの腕の中。寝やすさが増した)。哨戒任務で低下した体力・魔力を取り戻す。
その後起きておしゃべりしながらお弁当を食べた。あ、お弁当とても美味しかったです。
食べ終わってゆっくりとしながら、このままでは観察日記ではなくただの日記になると気づいた、もとい観察日記の存在を思い出した私は、何かしてやろうと頭を働かせる。
……うん。いたずらなんてなにすればいいか知らないや。まあいたずらの基本だろうし驚かしてみようか。
作戦はなにもないけどとりあえずミッションスタート。
なんかわくわくしてきた。
まずは寝たふりでもしてみよう。
「エイラ、私もう少し眠るね」
「昼飯食べたら眠くなったのカー?しょうがナイナー。おいで、サーニャ」
寝るときの定位置に移動を開始。
エイラに腕枕されて胸に顔を埋め、抱きしめられる。そして思いっきり息を吸ってエイラのいい匂いを胸一杯に取り込む。
これは最近のお約束になっていて、こうしないと落ち着かない。
「よし、私が子守歌歌ってやるヨ」
返事も待たずに私の頭の上でスオムス語の子守歌を歌い始めた。
…まずい、ほんとに寝ちゃいそうだ。意外と歌うまいし。
耐えろ…耐えろ私…。エイラにいたずらするんでしょ………。
…あれ?…いつの間にか歌が終わっている。それに規則正しい呼吸…。
ゆっくりとエイラの胸から離れて顔を見る。するとそこにはだらしなく口を開けて寝ているエイラの姿が…。
子守歌をうたう方が先に眠るのは全世界共通なのだろうか。
まあいいや、これはチャンスだ。
起こさないように気をつけながらエイラのおっぱいを触る。
うむ、柔らかい。私より少し大きいだけなのに何故こうも違うのか…。もみもみ。
このまま揉みしだいてやろうかと思ったけどさすがに起きるのでギリギリでこらえた。
…ふぅ。いいおっぱいだった。
エイラは…よし、若干頬が紅くなったけどまだ寝てる。
次は寝顔を拝見。…って普通はこっちが先だな…。芳佳ちゃんに毒されたんだろうか…。
気を取り直して観察開始。
ううむ。これはなかなか…。
さらさらの髪、綺麗なまつげ、柔らかそうな頬、そして可愛らしい唇…。
全てが完璧で私をドキドキさせるには十分だった。
エイラの唇を指でなぞる。
触れた瞬間私の体に電撃が走ったような感覚がして、自分の緊張を知る。
そのなぞった指で私の唇に触れる。心臓が爆発しそうなほどドキドキしてる。
実はキスもいまだにしてもらっていない。行動は積極的になったくせにどうしてそこはヘタレのままなのか。
こんなに距離を縮めることができたのに。あと唇をとがらせるだけで触れられるくらいに近いのに。遠い。
私からキスしに行けばいいのかもしれない。けどやっぱりエイラからしてほしい…。
なんか悲しくなってきた。
気晴らしにもう一度おっぱいに向かう。
ふにふにふにふに!
これでもか、ってぐらいに揉んでやったら呼吸が乱れてきた。
吐息もどこか艶っぽい。
頬なんかもう真っ赤に染まってる。
ふんだ、エイラがいけないんだからね。
と、心の中で子供のように文句をたれていると。
「う、サーニャ…」
やば、起きちゃったかな?
焦って胸から手を離す。
「サーニャ…」
私を抱きしめる力が強まった。
起きたの?まだ眠ってる?
「サー…ニャ…。すぅ」
よかった、まだ寝てる。寝言だったみたい…。
少し安心して、エイラの様子をうかがう。
まだ呼吸は整ってないけど幸せそうな顔してしっかりと寝てる。
そういえばいつもは私が先に寝て後から起きるから寝顔をしっかり見たこと無かったな…。
たまにはこうしてエイラを見守るのもいいかもしれない。
私のが年下だけどお姉さんぶって頭をなでてあげる。
あ。笑った。可愛い。
こんなエイラ見たの初めて。
しょうがないからもっとなでてあげよう。今日だけだかんな。
「サーニャぁ…」
嬉しそうな声。楽しい夢を見てるといい―――
目の前いっぱいになったエイラの顔。
それに唇になにか当たってる。
私…キス…されてるの?
ちょ、エイラ。苦しいってば。
ぷはぁ!やっと離してくれた。
今のはいったい――?
「…エイラ?」
「むにゃ…。さーにゃ…ちゅー」
寝てやがる
「エ、エイラ?エイラってば。起きて、ねぇってば」
「うへへへへへ……。サーニャと…ちゅーしちゃっタァ…。ぐぅ」
「起きて、エイラ!起きなさい!」
「しかも…頭撫でられちゃっタ…。キョウダケダカンナーだって…。それ私のセリフじゃん……。むにゃむにゃ…」
え?声にでてた?うそ。どうしよう。
ってこれ起きてるんじゃないの?全部寝言?なにこの正確な発言。
「いいから起きなさい!ユーティライネン少尉!」
「はいはい了解ですリトヴャク中尉どの~……」
いつもの寝起きの良さはどこいったんだ…。
「すーっ…ポチョムキン!!」
「ポーチョ…」
「ゲオルギ!ポピエドノセッツ!!スウィアトイ!エフスタフィ!!!」
「すたふぃー?」
なんで起きないの…。喉痛い…。
こうなったら…。
「エイラ、起きて頂戴…」
「ニヒヒー…んむっ!」
お願い…いいから起きて…。
どれくらいしてたかわからない。息が続く限り。
始めバタバタしていたエイラはだんだん落ち着いて腕に力が戻っていった。
ゆっくりと目をあけ、私を見る。
それから顔が紅く染まり今日一番の朱。
「サーニャ…今、」
「うん…そうだよ」
顔が熱い。
サウナでもここまで熱くない。
「今、私と、その…キ、キスを?」
「そうだよ。エイラ起きないんだもん」
エイラったら手が震えてる。
声も震えてる。
目なんか泳ぎまくってる。
まるでヘタレてた頃みたい…。
まさかいつものエイラに――?
――――――
戻りませんでした。
逆に押さえつけるのに苦労しました。
今も横で唇をとがらせてます。
少しうるさいので眠らせました。
今日の出来事により何らかの"たが"が外れたらしく、くっつき方に遠慮がなくなりました。
私自身エイラのアプローチは嬉しいのですが、ご飯の時やミーティング中でも遠慮がないので少々大変です。
それに、今まで以上にひどくしてどうする!ってミーナ中佐に怒られました…。反省文書かなきゃ…。
と、ある意味で散々、でも私としては大満足の休暇になったので良し。
エイラとキス……しちゃった…///
END