ハイデマリーとミーナ
ハイデマリー・W・シュナウファーとミーナ・ディートリンデ・ヴィルケの出会いは3年前のことであった。
501戦闘航空団が創立される前、ハイデマリーとミーナは同じ部隊にいた。
生まれたころから12回目の誕生日までハイデマリーは父と母の愛しか知らず、
その能力からウィッチ養成機関へと編入させられ、父と母の愛すら奪われてしまった。
そのコミュニュケーション能力の無さと棘々しさを感じる赤い瞳のせいでウィッチ養成機関では
友人を作ることができず一人訓練に勤しんでいた。
こんな能力が無ければ父と母の愛を奪われることは無かった。
こんな能力が無ければ学校へ行き友達と楽しい時間を過ごせた。
自分の能力を呪いながら訓練を続けた結果皮肉にもハイデマリーはナイトウィッチ
として十分前線に立てる能力を2年で身に着けた。
配属された部隊にミーナはいた。そこではミーナはナイトウィッチであった
その部隊はナイトウィッチが一人もおらず、索敵能力のある自分が夜間哨戒をしていると
15歳の時のミーナはハイデマリーに伝えた。
如何に訓練のときに優秀で会ったとしてもハイデマリーはまだ新人であったため
一人で飛ぶのは危険であるしばらくはミーナの護衛として飛ぶようにと
部隊の隊長に指示された。
ハイデマリーは初めてほかのウィッチとまともに話した。同じナイトウィッチ同士
仲良くしたいとは思ったものの、碌にほかのウィッチと話ができなかった養成期間時代
を思い出し、黙ってなるべく迷惑をかけないように飛んでいようとしていた矢先
ミーナが声をかけてきた。
「あなたって、出身は何処なの?」
まさか声をかけられるとは思っていなかったため何度もどもって返事をしてしまった、
ハイデマリーはきっと変に思われただろうなと俯いてたが聞こえてきたのはくすくすという
上品な笑い声だった。
「そんなに緊張しないで、これからは私達皆あなたの家族になるんだもの。」
しっとりと耳に入ってきた言葉はハイデマリーが最も望んでいたものだった。
それからハイデマリーは機関銃のようにしゃべった。生まれて10年を過ぎてからほとんど
人と話していなかったため何度も言葉を詰まらせたり噛んでしまったが、
ミーナは笑って聞いてくれていた。
ミーナのシフトが変わってからもハイデマリーは眠いのを我慢してミーナの所へと出向いた。
自分の昔の事、ミーナの昔の事、たくさんの事を話した。
その中でハイデマリーの心を一番揺れ動かしたのは
二人と同じ部隊にいるゲルトルート・バルクホルンのことであった。
ウィッチの中では一番付き合いが長い、
ボーイフレンドを失ったときずっと慰めてくれていた、
ゲルトルートのいろんなことを聞いた。
そしてミーナはことあるごとにゲルトルートを最高の友人と言っていた。
ハイデマリーは悔しかった。このころからハイデマリーは自分がミーナへと向けている感情を
だんだん自覚していた。ミーナは自分のことをどう思っているのか、
ゲルトルートと自分は同じように見てもらえているのか、
ゲルトルートに対して愛という感情があるのか、面と向かって聞けないことばかり考えてしまう。
半年後、ミーナとゲルトルートと新しく部隊に入ってきたエーリカ・ハルトマンは
ブリタニアに向かうことになった。突然の移転だった。
そもそもこの部隊自体が壊走した部隊の生き残りや新人を寄せ集めて作った部隊のため、
割と重要らしいこの拠点には精鋭をそろえた部隊が配属されるとのことだった。
別れの日、ハイデマリーは少しの時間ミーナと二人きりになった。
どうしても言いたいことがあるとハイデマリーがミーナを呼び出したのであった。
いつものように微笑みながら「どうしたの?」と聞いてくるミーナにハイデマリーは
意を決した、つもりだった。「好きだ」そういうつもりだった。
喉から「す」が出てくれなかった。ハイデマリーは顔を真っ赤にし
てがんばってくださいとだけ告げた。
ミーナはやはり微笑みながらありがとうと言い、ハイデマリーの額へキスをして、
ゲルトルートとエーリカのところへ向かっていった。
そして今、ミーナ達はまたカールスラントで飛んでいる。
そこへハイデマリーも夜間戦力補充として向かうことになった。
やった、また彼女に会える。彼女はどうなったのだろう、また綺麗になったのかな、
自分にまた微笑んでくれるだろうか、そして、自分は今度こそ思いを告げられるかな。
ハイデマリーの胸は高鳴っていた。