第10手 ハグ・通常


「ねー、トゥルーデ」
「ん? どうかしたのかフラウ?」
「“はぐ”していい?」
 はぐ……?
 ああ、hugか。
 いつも前から後ろから、突然現れては抱きついてくるくせに。
 それがいったい、どういう気まぐれだろう。

「なぜに?」
「なんかいちゃいちゃ48手の10手目らしいんだ」
「だからってなぜそれをお前と私が?」
「だってトゥルーデとがよかったんだもん」
「な、なにを言い出すんだ!?」
「わー、トゥルーデが赤くなったー」
「なってない」
「やーい、まっかっかー」
「なってないったらなってない!」

「ねー、いいでしょー?」
 しつこくフラウは食い下がってくる。
 まあ、たかだか抱きつかれるくらいで今さら拒む理由もないか。
 しかし、こうやっていちいち確認をとられるというのも、それはそれで気恥ずかしいものがあるな。
 私は無言で小さくこくりとうなずいた。少し腕を開いてみたりとか。

 フラウは私に身を預けるように体を寄せてきて――私の制服のボタンに手をかけた。

「なっ、なにをしているんだ、フラウ!?」
「“はぐ”してるの」
「いや待て! これはもっと別の行為だろ!」
「なに言ってんの、トゥルーデ。服を“はぐ”してるんじゃん」

 ようやく私は理解した。
 フラウの言う“はぐ”が“剥ぐ”だということに。

 そうして私は身ぐるみをすっかり剥ぎ取られてしまった。
 が、話はそこで終わらない。
 服を“はぐ”のはまだ10手目――
 その後、フラウの勘違いは48手目まで続いた。


『ストライクウィッチーズでシチュ題四十八手』応募作品

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