エイラ観察日記~天空の魔女エイラ~
―――観察3日目―――
えーっと…、3ページ目です…ごめんなさい。
ひとまず近況をまとめると、あの日以来ところかまわずアタックをするようになったエイラだけど、ミーナ中佐による〇〇〇によりみんなの前では控えるようになっていた。
逆に言えば2人きりの時は…っていうことなんだけど。
うーん…。日記のことを思い出しちゃったからなにか楽しいこと書きたいな。
とはいってもここは雲の上。
まんまるより少し欠けたお月様の光が降りそそぐ空の中をエイラと2人飛んでいる。
ネウロイの気配は微塵も感じられないけど、この状況からだといたずらしにくいじゃないか。
とりあえず観察日記なんだからエイラの今をお届け。
エイラ 少尉
E:MG42
E:Bf109Gー2
E:スオムス軍服
E:白ズボン
いつも通りです。
間違った。
今の状態は私と手をつなぎ、結構な大音量でなにか歌っている。どうやらかなりご機嫌な様子。
観察終了。
あれ?終わっちゃった。
やっぱりなにかするしかないよね…。
空だとなにができるだろう…?
逆に空でしかできないことはなんだろう。
…そうだ。一度やってみたかったこと。
繋いでいた手をいきなりふりほどいて加速。
驚き戸惑っているエイラをおいて12時方向に進む。
どんどん飛んで、もういいかな、と思って振りかえるとエイラがお星さまぐらい小さく見えるとこまで来てた。
エイラは驚いて動けていないようだ。
「エイラ――――っ!!」
大きく手を振ってみたけどやっぱりムリかな?
大きな声ださなきゃいけないし。
こんなときはインカムです。
「エイラ、聞こえる?」
『さ、サーニャ?急にどうしたんダヨ…?』
「ごめんね。それで早速なんだけど、おいかけっこしよ?」
『ハァ?おいかけっこ?ナンデいきなり?』
「いいからいいから。私を捕まえて」
『捕まえてっテ…』
「…ダメ?」
『ダメじゃナイ!ダメじゃナイゾ!待ってろサーニャ!すぐ捕まえてやるカンナー!』
ふふふ…、一度やってみたかったこと。
それは、よくあるお花畑で恋人たちのおいかけっこのシーン。
ここはお花畑じゃないけど星空の下っていうのも素敵だと思う。
おっと、エイラったらスタート速い。
本気だね。目が血走ってそう。
うふふ、私を捕まえてごらん…。
『待てー!サーァニャー!!」
インカムからの声と普通の声が聞こえる。本当に速い。
まっすぐ突進してくるエイラをひらりとかわしつつ上昇。
その後能力を使ってエイラの位置を把握しながら緩やかに降下。スピードを上げつつ離れていく。
高度は私の方が上にあるから多少有利ではあるけど、未来予知の能力を活かすためにエイラは攻撃だけでなく速度にも魔力を割り振っている。そのためかこちらも加速してるのにだんだん追いつかれる。
まあウィッチの力は気持ちの力でもあるから、それだけ必死になってくれてもいるんだろう。だったら嬉しいな。
っとと、もうこんな近くまで。
体を下に向け急降下をすると見せかけ、そのまま半円を描きながら6時方向へ向くスプリットS。
エイラは……上!動きを予知したのか私とは逆の上方に回るインメルマンターンで反転、そして狙いをつけて降下を始めている!
まずい。さすがスオムスのエースだ。思うように逃げられない。
とっさに横に逃げたけど加速したエイラのスピードではすぐ追いつかれてしまった。
横に並ばれ、ニヤリとされた。しぶしぶスピードを落とす。
「捕まえタゾー!サーニャー!」
ああ、捕まってしまったわ…。
ゆるゆると減速して空中で止まると後ろから抱きついてきた。
「サーニャー。つっかまーえたー」
「もう!エイラってば本気出しすぎ」
「うぅぇ、ご、ゴメン」
「ふぅ…。ううん、もういいよ!楽しかった!」
どこか間違ってる気がしてきたけど気にしない。
「それでナンデいきなりおいかけっこだったンダ?」
「ん、な・い・しょ」
「エー?教えてくれてもいいじゃんかヨー」
「だめ。恥ずかしいし…」
「ちぇ…しょーがないナー」
そう言って久しぶりのドッグファイトで火照った身体を、同じく体温が上がっているエイラが優しく包んでくれる。
ただでさえ熱くなっている身体をギュッと抱きしめてくるものだから、だんだん頭がとろけそうになってくる。
気づいたら口が勝手に動いていた。
「私がね、やってみたかったの」
「ンー?なにが?」
「おいかけっこ」
「へぇ、そうだったのカ。じゃあまたやろうナ。今度は2人じゃなくてみんなも誘ってやろう」
「ううん、2人じゃないとダメなの」
「ヘ?ナンデ?」
「ほら、よくあるでしょ。辺り一面お花畑の中で恋人たちがおいかけっこをするシーン」
「アァ…あるナァ…。…って恋人ォ?」
「うん、恋人…」
恋人……いい響き…。
「恋人って…私たちの事になるのカ?」
「…他に誰かいる?」
「ダヨナ…。恋人…コイビトかぁ」
「なぁにエイラ。私が恋人じゃ嫌なの…?」
「そんなわけないダロ!むしろこちらからお願いシマス!!」
「ふふふ、こちらこそよろしくお願いします」
唐突に繰り出されるガッツポーズ。盛大なおたけび。
「エイラうるさいよ。うふふ」
「サーニャが恋人ダゾ!?これが落ち着いてなんかいられるカ!」
いまさらだと思うんだけどな…。
「いまさらでも意識の問題があるんダヨ!するかしないかでシャーリーとツンツンメガネぐらい違うんダ!」
「…?ってそうかなー?」
「ソウダヨー」
「ねぇ、エイラ…。キス、しよ」
「き、きキキ、キスだって!キスだって!」
「いいでしょ…?だって…恋人…だし…」
いつもと変わらないはずなのになんか恥ずかしいのはさっきの意識の問題なのかな?
「ソウダナ…。よし、頑張ル!」
「うん…私も頑張る…」
「サーニャ…。目つむって」
「……はい…」
「…だいすきダ。サーニャ」
「私も。だいすきだよ、エイラ」
――――――
あああああ恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい…。
やっぱりだいすきって言葉にするとものすごく恥ずかしいんですね…。
あああこうやって書くのもダメだ…。
落ち着け、私…。落ち着いて…。
ええと、晴れてカップルです。嬉しいです。
その事をみんなに伝えると「今まではなんだったの!?」と驚かれましたが…。
それはまあいいとして、これからはもっと遠慮なくエイラと遊べるんだね…。
まずはなにしてもらおうかなー。
かっこいいエイラが見られるからまたドッグファイトもしたいし、お揃いの物を買ってみんなに自慢もしてみたい。
あとは…そうだ、今度ミーナ中佐に恋人にするいたずらの極意でも聞いてみようかな。なんか凄そうだし。
うん。今からエイラの反応が楽しみだ。
さてと、エイラが呼んでいるし眠ろうと思います。
ゆっくり休んでからまた考えよう。
最後にもう一度……エイラ、だいすき!
END