もっさんのおはなし
「にゃあーーーっ!ずるいよ、ハルトマンっ!」
「別にずるくないよー。それにルッキーニだってペリーヌの盗ったのは事実でしょ?
自分がやられて嫌な事を人にやっちゃいけないなぁ~」
授賞式の後、当然といえば当然ながらルッキーニが涙を浮かべて世界最高の名誉を手にしたエーリカに食って掛かった。
文字通り癇癪を起こしたルッキーニにエーリカはといえば、そんなのはどこ吹く風と言った様子であしらっている。
どころか、火に油を注ぐようなことを言って仲裁に入ろうとする周りの人間の手をさらに煩わせるのだった。
「あはは、大騒ぎだねー…芳佳ちゃん」
「うん、でもルッキーニちゃんには悪い事しちゃったな」
「そうだね、後で謝らないと」
「はっはっは!とんだ災難だったな!宮藤!」
蚊帳の外にいたリーネと芳佳の後ろから坂本がいつもの豪快な笑いを浮かべて現れる。
「そ、そうですね。…スースーするし、恥ずかしかったし」
「ふふ、でも可愛かったよ。坂本少佐の服着た芳佳ちゃん」
「ああ、中々似合っていたぞ宮藤」
「え?」
予期せぬ人物から賞賛を受けて、芳佳が愛嬌のある茶瞳をさらに丸くした。
言うなればそうだな。更なる賛辞を考えているのだろうか。次の言葉を期待して、無意識に芳佳の頬が熱くなる。
「馬子にも衣装というやつだな!はっはっはっはっは!」
その日の夕食、坂本の膳に盛られた飯の量が平時の半分だった事は言うまでもない。
おしまい