無題


最近501基地のキッチンは慌ただしい
理由は言わずもがな、日に日に近付くバレンタインに向けて皆がチョコレートを作っているからである
私は機械に関しては事それなりに長けているつもりだが
料理、特にお菓子作りにおいてはさっぱりなので貰う側だ

少しは女らしく、おいしいチョコレートを作って皆にふるまってやったり
ルッキーニにしこたま愛を込めた特別甘いやつをこしらえてやりたいとも思うのだが
そもそもあたしはそんなキャラでもないし、いまさら芳佳やリーネに習うのもこっぱずかしいから
結局皆が頑張ってチョコレートを作る様を、したり顔をしながらのんきに眺め、時に茶々を入れて楽しむのである
我ながらひねくれているとは思うがこれが中々楽しい
エーリカとルッキーニがペリーヌのチョコの中に何かをぶち込んだ数秒後にチョコが爆発して、電撃が基地内を飛び交ったり
エイラの口元に付いたチョコをサーニャが舐めてエイラがぶっ倒れたりとなにせいろいろなことがあって、退屈しないのだ
片付けが始まる頃にはいつもやんちゃ組、特に芳佳とルッキーニの体や口はチョコまみれになっていた

そんなこんなでいよいよバレンタインデー前日、昼とも夕方とも言いにくい時間帯
特にドタバタもないままチョコの仕上げも終わったらしく、皆いつもより早く片付けを始めたので、
私は軽く片付けの手伝いをしてから自室へ戻ろうと廊下を歩いていた

すると廊下の向こうからとことこと走ってくる人が見える
両手を上げて、かわいらしい笑顔に揺れるツインテール
その姿は紛い無く愛すべきルッキーニだ

おそらくあのまま私に抱き着いてくるつもりなのだろうと、ふっと受け止める姿勢を取る
思った通り彼女は私の胸に飛び込んできた
愛情たっぷりに抱きしめてやろうとくっと力を込めようとした、その時
彼女の顔はくっと持ち上がり、私の顔に急接近、そのまま私の唇を奪う
更に次の瞬間、私の唇を彼女の舌がこじ開け、そこから何かどろりとしたものが流れ込んできたのだ
「んむっ!んんん・・・」

流石の私もこれには驚かされたが、流れ込んできたものはすぐにわかった
口に広がる香ばしいカカオの香と甘いミルクの味・・チョコレートだ

実際には数秒だがずっと長く感じられた甘い甘い口づけが終わり、彼女の顔が離れる
開口一番、弾けるような笑顔で彼女は言った

「はい!!!バレンタインと誕生日だよシャーリー!!ちょっとフライング気味だけど!」

ああ・・・バレンタインに気を取られてすっかり忘れてたよ・・・
今日は私の誕生日だったのだ、バレンタインの前日の誕生日にチョコ入りのキスとはまあ
流石ロマーニャ娘というべくか・・・凝ったことを考えるな、こんなに小さくてかわいい子供なのに
「今からシャーリーの誕生日会の準備が始まるからしばらく食堂は入っちゃ駄目だかんね!!今夜はパーティーだよ!」

なるほど、早めにチョコ作りを切り上げたのもそういうわけか・・・ホントにあいつらはいいやつらだな全く・・

「本っ当にありがとうなルッキーニ、うれしいよホントに」

目尻に貯まった涙がばれないように彼女を抱きしめる、チョコが服に付いてしまったが気にしない

「えへへ・・・シャーリーが喜んでくれたならよかったあ、芳佳といっぱいいーっぱい練習したんだから」
「・・・え?まじ?」
「だってシャーリーとするときうまくいかなかったらいやだもん・・・恥ずかしかったけどね、へへ」
「それじゃあ、片付けの時に芳佳とルッキーニの口元が特に汚れてたのって・・・」
「そっ!!そゆこと~!」

それを聞いた私はすぐにルッキーニを抱き上げ自分の部屋へと連れ込み、ベッドの上に乗せた

「ひゃ、ひゃあ!どしたのシャーリー?」

まさかあの甘美な口づけを、芳佳があたしの何倍もの回数味わっていただなんて!!
あんまりあたしは嫉妬とかする質じゃあないつもりだが、ルッキーニのこととなると話は別だ!!許せん!
さて、芳佳にどうやって仕返ししてやろうか・・・と私は思慮を巡らせる・・・
ええい思いつかん!!もういい!!今は自分を愛してくれている彼女にこっちも全力で愛するだけだ!!
ベッドの上にちょこんと乗っていたルッキーニを押し倒し、問う

「誕生日会まではまだ時間、あるんだよな?ルッキーニ」
「あ、あるけど、わたしもみんなと一緒に準備しなきゃ・・・それにまだ、心の準備も・・・」
「ルッキーニ、大好きだ。愛してる」

私はそう言って彼女の唇を唇で塞ぎ、貪るようにキスをし、情事に耽った

これで、芳佳の5倍はルッキーニとキスしたかな?


おわり


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