AEON
いつもの面倒な哨戒任務が終わり、ストライカーの調整をし終えてから
部屋に戻ろうとしているとき、廊下の向こうから困ったような顔をした二人、
エイラとサーニャが歩いてきた。
「どうしたんだ?二人揃って仲良く困った顔して。」
笑みを含めちょっとたしなめるように聞いてみる。
エイラは案の定少しムッとしたがサーニャは気にしていないようで。
「エイラの本が無くなっちゃたの」
「だからサーニャは気にしなくってもイイッテ…」
「でも…エイラの物だから…気になる…し」
「~~~~~///////////と、という訳なんだ。だから知らなイカ?」
「いや、いきなりそんなこと言われても」
エイラの物でも我が身の事のように心配するサーニャ、完全に夫婦だなもう。
しかしここでそんな事言ったらエイラがややこしい事になりそうだから止めとこう。
「あたしは知らないけどさ、どんな本?見かけたりしたら教えるからさ。」
「えーっとナ、私のだからまじゅ」
「まじゅちゅ関連のほn…」
「「………」」
「////////」
「ま、まぁ何かあったら連絡するよ。」
「よ…よろしく頼んダ」
あたしは足早に去ることにした。
「…しっかし」
廊下を歩きながら両腕を頭に回し考える。
やっぱり仲良いなぁ、こう…前々から分かっていたけど、真正面から当てられると…
羨ましい…なんて気持ちも起こったり…なんて。
エイラがあんなだからギクシャクとかしないのかなぁ、
でも意外と見えないところでは熱く愛を語ったり永遠とか誓ってたりすんのかな…。
うへ、想像出来ないや。
でもサーニャはこういうことには押しが強そうだから案外バランス取れてるのかな?
…柄にも無く色恋の事なんか真剣に考えちゃってるよわたし…。
頭を横に振って考えを振り払う。
でも人の事言えないのかもなぁ…。
つい先日の誕生日のことを思い出す。
みんなこんなあたしのためにあんな豪勢なパーティ開いてくれちゃって。
あの堅物もあの日ばかりは優しかったな。
宮藤たちが作ってくれた料理もおいしかったなぁ。
みんなの優しさにカンドーしちゃったよ…。
しかしなんといってもプレゼントをもらった時大きな箱からルッキーニが
「じゃーん!どうシャーリー!?私がプレゼントだよー!」
ときた時には驚いたなぁ、そしてその瞬間に部屋に持ち帰りそうになった自分にも
驚いたしみんなも驚いただろう。
正直あの時は本当に理性が飛んだ。
しかしわたし自身あそこまでルッキーニのことが…
す…好きだったとは…
ふと廊下で立ち止まり窓を見上げてルッキーニの姿を思い浮かべる。
あの純真無垢で幼い少女をふとめちゃくちゃにしてやりたいような
汚してやりたいような、そんな気持ちが不本意にもムクムクと湧き上がってしまう。
「…ジュルリ」
いかんいかん!
ルッキーニはまだまだ小さいじゃないか!それにわたしにそんな性癖は…無い…はずだぞ!
と自分を叱り付け頬を張る。
そして何があっても決してルッキーニを汚したりなんかしない、と心に決めて
再び部屋向かった。
「すーすー…うじゅ…」
「あれー………?」
???なんで?
なんでルッキーニがいるの?いつからここは秘密基地になったんだ??
戻った部屋には何故かベッドの上で心地よさそうに寝るルッキーニの姿があった。
…なんと無防備な…
何も被らずただベッドで横たわっているだけの姿は図らずもわたしの心の一番プリミティブなところをを強く刺激した。
気がつけばもうベッドのそばまで来ていた。
見下ろせばそこには褐色の肢体を無防備にさらす愛しのルッキーニ。
細く滑らかなその足は胎内の赤ん坊のように曲げられ、たまに寝返りとともに組み返す姿が愛らしくてもう…もう…。
そしてどんどん激しくなっていく鼓動を手で無駄と知りながらなだめつつ、ルッキーニを見下ろすわたし。おそらく顔は真っ赤になっていることだろう。
普段秘密基地で寝ているルッキーニの就寝をこんな間近で見ただけで激しく息が荒くなっていた。
「むにゅむにゃ…うじゅじゅ…」
「ごくり…」
つい生唾を飲んでしまう。
「…ん?」
ふとルッキーニの頭の下に何か枕では無いものが下敷きになっているのに気がついた。
「なんだこれ?」
可愛いルッキーニを起こさないようにそっとそれを抜き取る。
それは立派な装丁で作られた古めかしい大きな本だった。
「エイラたちの探していた本ってもしかしてこれか?」
めくってみると良く分からない言葉が羅列しており理解に苦しむものだったが、
なんとなく魔術関連の本であることは分かった。
「これがまじゅちゅ関連の本ね…」
ルッキーニが持って行ってたのか。
まったく、ルッキーニらしいや。
性的な動悸も治まりつつあったので代わりに返しに行ってやることにしよう。
そう考え、踵を返そうとしたとき。
「むにゃ…シャーリー…」
「!!!」
どきりときた。
起こしてしまったか?
さっと振り向く。
「…うじゅじゅ…」
寝言か、と胸をなでおろす。がそれよりも寝言でも名前を呼んでくれた。
ただそれだけの事がとても嬉しく感じられ、胸がいっぱいになった。
あぁもうルッキーニ…可愛すぎるよもう…
めちゃくちゃにしたいというよりも、今はひたすら愛でてやりたい。
先ほどよりも心に余裕が出来てからルッキーニの姿を見ると、心なしか
寒そうに見える。
「おいおい大丈夫か?」
偏西風でそこまで冷えないといっても今は二月だ。
ましてやロマーニャ出身のルッキーニには辛いだろう。
ついに自分自身の体を抱くようになったルッキーニに布団を掛けてやろうと
掛け布団に手を伸ばす。
すると。
「おっ?」
「すーシャー…リー…」
ルッキーニが両腕を伸ばしわたしを迎えるようにその両手を向けていた。
「…暖かい…」
「…うん…」
もう起きているとか起きていないとかはどうでも良くなっていた。
とにかくルッキーニと抱き合うようにして体温を共有したいと思った。
…安心する…。そう思った。
ルッキーニの背中にわたしも手を回し強めに抱きしめる。
今はさっきのような邪な気持ちは無い。穏やかなこの時の流れとともに
ルッキーニとずっとこうしていたいという気持ちだけがわたしを支配している。
獣のような心でもってルッキーニをどうにかしようとしていた自分を激しく恥じる。
わたしが求めていたのはこれなんだよ。
あぁわたしもエイラとサーニャのようにルッキーニといる事でバランスが取れているのかな。
わたしの腕の中でもぞもぞと可愛らしく動く少女を思いながら考える。
きっとわたしとルッキーニは知恵の輪のように、お互いに無くてはならない存在なのだろう。少なくともわたしはルッキーニといかなる理由があっても離れたくない。
エイラ、ごめん、本見つかったけどまだ返せそうに無いわ。
今限りなく近い距離なのにルッキーニと未来永劫でもこうしたいと思っている自分がいる。
この気持ち、エイラなら分かるだろ?
そのころのエイラーニャ
「本、見つからないね。」
「誰も知ラナイナ、まぁ、そんなことより…」
「何?エイラ?」
「さっきのまじゅちゅ…って…か、可愛かった…ゾ?」
「…もうエイラなんて嫌い…」
「ガーン」
ギュッ
「サ、サーニャ!?」
「恥ずかしかったんだから…」
「ゴメン…サーニャ…」ギュッ
おしまい