サン・トロン1943 SatsumaHund & WeißerFalke


 解析班の予想通り、ブリタニア本土への攻撃を目的としたネウロイの夜間爆撃隊と遭遇した。
 第一発見者はもちろんレーダー能力を持つハイディだ。
 敵は小規模ながらも護衛を伴っており、6機の爆撃型ネウロイのうち少なくとも1機は電探能力を持ち、周囲の警戒を行っていた。
 とはいえ精度は高くないらしく、ハイディに補足された事に気付いた後もしつこく電波の発信を行い、その存在を暴露し続けた。
 電波発信を抑えつつ進路上に推移した後、再び発信し自らの位置を暴露することでネウロイの注意をひきつけ、その隙にハイディによって誘導されたBf109装備のロッテがこの電探搭載ネウロイに対して一撃を加えた。
 この奇襲で敵電探搭載機の速度は見る見る落ちる。
 迅速に迎撃行動を開始した敵迎撃機群によってそれ以上の攻勢は阻まれ、猶も前進を続けるネウロイ編隊との戦闘はこう着状態に陥った。
 既に援軍の要請はしてあるが、到着までにはまだ間があるはずというその時、通信機から不思議な歌が流れ始めた。
 透き通るようなハミング。
 戦闘中だというのになぜか安らぎを覚えるような不思議な歌だった。
 その歌と同時にハイディは敵編隊の東側へと半ば退避するような指示を行い、行動が完了するや否や編隊西側に数個の爆光が閃いた。
 照準が甘かったのか敵機への直撃はなかったようだが、その爆風によって全体的に損傷を受けた敵編隊は戦意を失い、翼を翻して撤退に映った。
 迎撃機も引き、迎撃戦闘は終了した。
 未確認の敵戦闘機撃墜以外の戦果は無し。小隊の損害も無し。
 ネウロイのブリタニア本土への爆撃を阻止できたという事で作戦事態は成功。

「……というのが各員の報告書からまとめた今回の戦闘の流れだよ……ふぁ」

 欠伸をしながら、一応直属の上司となっている武子に報告を行う。
 様々な報告書の作成に負われたお陰で時刻は既に昼近い。正直、眠い。

「扶桑撫子らしく、もうちょっとしゃんとしなさいな。……で、この西側から攻撃を行ったのは?」
「ブリタニアのドーバー近くに展開してる部隊のナイトウィッチだろ。毎晩飛んでるわけでもないようだが、こういう時はちょくちょく加勢してくれてるらしいんだが……」
「だが?」
「なんだか恥ずかしがり屋らしくて名乗ってはくれないらしい」

 やれやれというジェスチャーを交えつつ語ると、武子のほうも半ば呆れながら返す。

「なんともはや奥ゆかしい助っ人だけど、軍隊なんだからそういうところはもっとしっかりして欲しいわね」
「ブリタニアに問い合わせて正体はわかってるみたいで、何でもリトヴャクっていうオラーシャの中尉らしい」
「ああ、もしかして第501統合航空戦闘団?」
「そ、海軍主導でバックアップしてるからってうちらにあんまり情報が入ってこないのも考えモンだよな」

 誠に不本意ながら我が扶桑皇国の陸軍と海軍は昔から仲が悪い。
 最近は大分改善も進んで、例えば今回の電探の様に国家主導で両軍の研究が統合されつつあるものもあるんだけど……そもそも統合するくらいなら初めから共同開発してくれといいたい。
 それに、用途が異なるとはいえストライカーユニットも陸海で規格が違い、こちらに関しては未だに別々の開発が行われてるんだから目も当てられない。
 せめて使用する機銃の弾薬規格くらいは統一して欲しいもんだ。


「まぁ、その辺は頭の痛いところよね。上の仲が悪いと苦労するわよ……でも、501に参加してるのはカールスラントで翼を並べた美緒だし、私の方から様子を聞いてみるわ」
「そうか、そういえば坂本か。アイツなら話もわかるし早いだろうな。それじゃ宜しく頼むよ、武子。私は機体の様子だけ見てから夜に備えて寝るわ……飛ばないとはいえ地上管制があるんだからお前も早く寝て置けよ」
「解ってるわよ。じゃ、おやすみなさい」
「ああ、オヤスミ」

 倉庫の一画に設けられた扶桑隊の簡易執務室を出ると、そのまま今回の機材の置いてある倉庫内の別区画を目指す。
 辿り着いてみると先客がいた。ハイディだ。
 野戦用のラックに固定された扶桑製のストライカーユニットを興味深げに観察している。

「キ45改、二式複座戦闘脚だ。今夜からは私とハイディはこれで飛ぶこととなる」
「あ、クロエ……」
「おっと、驚かせてしまったかな?」
「いいえ、大丈夫です。あの……」

 ハイディが一度はこちらを向いたその赤の視線を外し、同じハンガー内に置かれた別のものを捉える。
 視線の先を追うと、そこには直径約30cm、長さ1m程度ある不恰好な爆弾のようなものが置かれていた。
 先端部分にはハイディの魔道針と同じような形の複雑な形の針が伸びており、胴体中央部には腕に固定するための接点やグリップ、操作用のスイッチやツマミなどがついている。

「それが今回の審査対象、試製機載電探さ」
「ずいぶん、大きいんですね」
「ああ、大きくて重い上に動作させるためにも魔力を食う。現段階じゃとても一人じゃ扱えないんで運用には複座のストライカーが用意されてるんだ」

 改めてキ45改へと視線を移す。
 これは大口径の重火器を扱う為に製作された複座のストライカーユニットだ。
 大戦初期には各国で同じ様なコンセプトのユニットが製作されたが、結局のところ魔道エンジンのパワーが頭打ちだった事と小回りが利かないことから正面戦力として失格の烙印を押され、使われなくなったものが多い。
 とはいえそれは戦闘飛行脚としての話だ。
 このストライカーの用途を爆撃、偵察、夜戦と割り切ってからはそれなりに有効性が認められ、他に代替機首も無い事からそのまま生産と運用が続けられている。

「慣れないストライカーをはいてもらう事になるけど、扶桑では一応夜戦での使用に定評のある機体なんだ。それに、私もついてる」

 勇気付けるように、元気が出るような勤めて明るい口調でハイディへと言い切る。
 ハイディはまだ不安そうな眼差しで電探を見つめていたが、やがて私へと視線を移すと大きく頷いてくれた。
 その仕草に満足した私は優しく肩を抱く。

「さぁ、もう昼だ。私も寝るから君も休め……おやすみ、ハイディ」

 そんなおやすみの挨拶と共に西洋での風習を思い出し、額へと触れるようなキス。
 欧州の人間と過ごす事が多くなってから、初めはこういった風習には馴染めなかったものだ。
 だが郷に入り手は郷に従えという言葉通り、親愛の情を示すにはこうしたスキンシップこそが円滑なコミュニケーションを加速する。
 ……び、筈だったのだが……当のハイディは何故かその雪のような白い肌を首まで真っ赤にして固まってしまっていた。

「あ、と……すまない。突然で驚かせてしまったか?」
「いいいいいいえ、ななななんでもありませぇん。おおおおおオヤスミナサイっ!」
「ハ、ハイディ!?」


 叫ぶだけ叫んですごい勢いで扶桑式のお辞儀をすると走っていってしまった。
 むむむ……ああいう反応が返ってくるとは思わなかったが、考えてみれば人付き合いが苦手であれば確かにああいったスキンシップにも慣れていない可能性が高いか。
 うーん、こちらも思い切ってやってみたんだが裏目に出てしまったな。悪いことをしてしまったな。
 仲良くなって円滑に物事を進めたいだけなんだが……難しいもんだ。
 しかし、ああいう態度をされると、こちらまで気恥ずかしくなってしまう……はぁ、寝るか。
 大きくため息一つついてから宛がわれた個室へと向かい、持ち込んだ畳の上に布団を敷いて床に入った。
 ……眠れない。
 どうにもさっきのハイディの表情が気になって仕方ない。
 もしかして私はとんでもない事をしてしまったのではないだろうか?
 いや待て、落ち着け綾香。
 参考にならない気もするがあのぐらいの頃の自分のことを思い出してみよう。
 私が13歳の頃はどうだった?
 陸軍施設での訓練と道場で剣術の鍛錬……終わった後は釣りか……。
 思えば今仲良くして連絡を取ってる友人、武子に智子に圭子……って皆戦友であると同時に剣の達人ばかりじゃないか。
 陸軍以外だと坂本とその仲間達……竹井、西沢、太田辺りか。
 釣り友達はおっさんばかりだし……。
 くっ……まさか自分の体験が本当にここまで参考にならんとは。
 何故もう少しまともな少女時代をすごしてこなかった黒江綾香!
 戦い方や心構えなどであれば幾らでも語ることができるというのに、人生の先達として少女に伝えるべき経験が無いとは……。
 指揮官としての経験の長い武子ならもう少し語る言葉もあるのだろうがなぁ。
 ……答えの出ないことに思考を費やすなど無駄な事か。
 真摯に思いを伝えるのみだな。
 為すべき事などまだ見えなかったが、そうして心を落ち着けると同時に、私の心に睡魔が浸透していった。

 夜。
 ハンガーに集合し、整備員に混ざって機材のチェックを行う。
 とはいえストライカーユニット本体はともかく実験機材である機載電探は、基本的にメーカーから出向している技術者や研究所所属の研究員が調整を行う事となる。

「整備も自分で行うんですか?」

 背後から声を掛けられた。
 振り返るとハイディがいた。

「ああ、おはようハイディ。元々機械弄りは好きだからね」

 簡単に挨拶しつつキ45改に向き直り、手元のチェックリストと照らし合わせながら整備を進めていく。
 昼の事で変に避けられたりしないか少々心配ではあったが、彼女の方から話しかけてくれたんなら問題は無いだろう、多分。

「楽しいんですか?」
「楽しくは……無いかもしれない。これは単純な作業だし。でも面白くはあるし、こうすることで安心を得る事が出来る」

 改めて手を止め、彼女の目を見て答える。
 視線が一致し、一呼吸の後彼女が口を開いた。

「私にも、出来ますか?」

 小躍りしそうだった。
 なにせ人付き合いに苦手意識を持っている彼女がこちらに興味を持ってくれたのだ。
 寝る前の挨拶の影響だろうか?
 だとするならば自らの行為に悩んで寝不足気味になった事も報われる。
 つい嬉しくなった私はそのままハイディを出撃前のチェックに付き合せてしまった。
 そして解説しながらのチェックで時間がかかったせいか、気がつけば試験の開始時間が近くなっていた。
 急いで整備用のツナギから戦闘服へと着替えを済ませ、改めてハンガーに入る。
 ハンガーには既に武子を中心とした審査部のメンバーとハイディを含むカールスラント側のスタッフが集合していた。

「遅いわよ、黒江大尉」
「遅れてすまない。はじめてくれ」
「ではこれより、第一回の機載電探運用試験を行いたいと思います」


 武子の挨拶と共にブリーフィングが始まり、概要が解説される。
 今日のフライトは事実上人員と機材の顔合わせと言っていいような簡単な内容で、基地上空の近距離を集会するのみにとどまる。
 電探は私の指示でハイディに操作を行ってもらい、着陸してから彼女の持つレーダー能力との誤差に関する聞き取り調査を行う事になっている。
 厄介なのはこの点で、ウィッチの能力という特性上主観的になりがちな解説をどれだけうまく収集できるか否かが早期の機材の熟成に大きく影響を与える事になるからだ。

「以上で解説を終了します。各自準備に取り掛かってください」

 号令一下、それぞれのエキスパートたちが持ち場へと散っていく。
 私とハイディはキ45改のラックの前に立ち、接続ヨシの合図を待っていた。
 程なくして私たちのストライカーへの接続が開始される。
 まずは前席のハイディからだ。
 接続と同時に彼女の使い魔である白隼の羽が頭部に現出する。
 空を往くウィッチの中でも鳥を使い間に持つものは多くない。
 自分とその相棒を卑下するつもりは無いし、むしろ一撃必殺の刀剣術を得意とする私にとってその顕現とも言うべき闘犬、薩摩犬を相棒に持っている事はとても誇らしいと思っている。
 それに犬を使い間にするドッグファイターなんて中々洒落が効いていていいじゃないか。
 でも……それでも天駆けるウィッチとして、鳥の使い魔を持つ者への憧れを捨てきる事はできないのは私が欲深いウィッチだという事なのだろうか。
 ハイディは慣れないユニットのせいか思ったよりも時間がかかってしまったようだが問題なく接続を終了。
 見届けてから私も接続を開始する。

「ハイディ、感触はどう?」
「少し、頼りない気がします」
「正直なのはいいことさ。キ45改は普段ハイディの使ってるBf110とほぼ同性能で複座にしてるんで色々物足りなくなる部分があるだろう」
「…………」

 沈黙、正面を向くハイディの表情はうかがい知れないが不安に思っている事は間違いないだろう。
 私は丁度自分の胸の位置辺りにあるハイディの頭をそっと抱いて呟く。
 大人の女性のふくよかな胸には人を安心させる効果がある。
 ……のはいいんだけど、正直ココから見下ろすハイディのソコは年齢差にも関わらず私に劣らない、と言うか私が劣っている気もする。
 が、あまり深く考えるのはよそう。大事なのはきっと気持ちだ。

「大丈夫、基本的にこの実験の間は前線には出ないし、何よりも私がついている。君は安心してレーダーの操作に集中してくれ」
「は、はい、クロエ」

 これで少しでも不安が消えてくれていればいいんだが……。
 実はこの戦闘脚キ45改はキ43やキ44程熟練しておらず、夜間飛行ということでそこそこ不安はあった。
 だが、鍛錬を重ねた身体はハイディを不安にさせるわけにはいかないとの思いに良く応え、緊張で加速するはずの鼓動を押さえ込むことに成功していた。
 その正常な、穏やかな鼓動がその白い髪、白い羽を通じてハイディへと柔らかく伝える。

『綾香、シフトの夜間哨戒部隊が出撃したわ。そちらも滑走路に入って頂戴』
「了解した」
「了解しました」

 動作を開始する。
 操作に癖はない。
 複座で同乗者が緊張している時などは変に力が入ってそちらに引っ張られる事がある。
 操縦席のウィッチの方が魔力が高ければいいのだが逆の場合は助手側の動作が中途半端に反映されて、最悪操縦不能に陥る事もある。
 だが、ハイディの場合はそうした心配とは無煙だったようだ。
 それともこちらが気を廻していたのが功を奏していたのだろうか? だとすれば努力の甲斐もあるものだ。

「試製電探、コンタクト」

 整備員たちの手によって、電探がハイディの左腕へと固定される。
 こちらに関しては飛行姿勢をとったときには胴体正面側に構え、空気抵抗を軽減する手はずとなっていた。
 固定完了の合図と共にハンガーを出、タキシングウェイを進む。
 昨日の今日だ、ネウロイの襲来はほぼ確実に無い。
 まだ幼いながらも夜の闇を見通せる素敵な相棒もいる。
 夜間の遊覧飛行を楽しませてもらおうじゃないか。


「キ45改、クロエ&シュナウファー、サツマ01、OTR」
『サントロン管制より扶桑試験隊のサツマ01へ、発信を許可します』
「扶桑HQフジ、聞こえるか?」

 前を見据えるうちにどうしても視界に入ってくるものが気になり、武子へと通信を繋ぐ。

『感度良好。聞こえてるわ』
「コードネームを変更しないか? ファルケ辺りが希望なんだが」
『何を突然……無茶言わないで。コードは周辺の他部隊に通達済みなんだから……でも一体どうしたの?』
「目の前で可愛らしく揺れてる白隼の羽を見てたらその方がいいと思ったんだ。ハイディとお前がいて隼じゃないなんて落ち着かないのさ」
『はぁ……嬉しい事言ってくれるのはいいんだけれど……そういうのは根回しが必要なんだから早くにね、いい? サツマ01』
「サツマ01了解した。以後こういった思いつきは慎もう……では、行こうかハイディ」
「はい……その……」
「何かあるなら空で聞こう……いいかい? それじゃサツマ01離陸する」

 魔力を込める。
 アイドル状態だった魔道エンジンの回転数が上がり加速が始まる。
 やはり全体的にもったりとした感触だが、二人分の体重にもう一人分以上もある重量の電探が追加されてはむべなるかな。
 普段よりも眺めの滑走を終え、離陸。
 姿勢を前傾し、あわせてハイディが胴体前面のハーネスに電探を固定する。
 高度の上がりも鈍い。
 電探の存在が重量だけでなく空気抵抗も悪化させているんで速度が乗らない。
 現状ではまともな戦闘機動などできる気がしないが、将来的には電探の動作用の魔力もストライカーの方から供給させて軽量化を図るらしい。
 その分出力を食われるなら結果が同じことにならないかが心配だ。
 緩やかに上昇する間、ハイディが口を開いた。

「ねぇ、クロエ、さっきのファルケって、私の使い魔?」
「ああ、そうだよ」
「コマンダーカトウの使い魔も一緒なの?」
「そういうわけじゃなくて、彼女が指揮していた扶桑皇国陸軍航空隊第六四戦隊はキ43……ハヤブサって愛称のストライカーで構成されていて、それで有名になった彼女の代名詞みたいなもんなんだ」
「あ、カトーハヤブサセントータイなら知ってます。あの人見たことあると思ったら、カールスラントでも英雄の人だったんですね」
「そ、ウィッチとしては去年引退してるんだけどこうして軍に残って後進のための機材開発に尽力してる。で、扶桑でハヤブサがカールスラント語だとファルケになるのさ」
「なんだか、嬉しいです。扶桑って言う遠い国から来た人たちなのに、意外と身近な存在だったなんて」

 珍しくちょっと興奮気味に喜びを表すハイディ。
 位置関係の都合で彼女の表情までは見えないが、きっと自然な笑顔を浮かべていることだろう。

「そうか今まで気づいてなかったのか。ちなみに私も武子の下で飛んでたんだ」
「そうだったんですか……知りませんでした」
「こっちで『魔のクロエ』とか渾名つけられてちょっとかっこよくて気に入ってたんだけどなぁ……知られてなかったのはショックだ」
「ご、ごめんなさい」
「いやいいよ。別に有名になる為に飛んでるわけじゃないし……よし、そろそろ予定高度だ。まずは君の力で先行している哨戒部隊を捕捉してくれ」
「了解です。クロエ」

 彼女の頭にレーダー魔道針が発現する。
 輝き、色を変えながらレーダーが動作し、電波を発信。
 サイドローブが通信機に干渉し、かすかな雑音を立てる。
 程なくしてハイディは先行するBf110を発見捕捉し私とHQへと正確な情報を伝える。
 次は電探の番だったのだが、これは散々な結果に終わった。
 電波発信してもBf110の姿を追うことができず、使用中に通信機から流れる雑音もひどいものだった。
 しかもハイディの魔力消耗も大きかったらしく、最終的にこの日の試験は早めに切り上げられることになった。
 とはいえ、ある程度は予想されていた結果だ。
 不具合があるからこそ問題を洗い出すことができる。
 ハイディの報告を元に電探の調整を行い、最適化を繰り返す。
 そんな日々が続くうち、出会った頃に比べればハイディとの他愛ない会話を増やすことに成功しつつあった私は、機材の調整が長引いてフライトが中止になったある日、彼女を私の趣味である釣りへと誘ってみることにした。



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