リベリやん
よお! あたし、愛の天使シャーリー!
一口で言うとキューピッドってヤツだな。
愛に餓えた子羊たちをラブまみれにするのがあたしの仕事。
こう見えても結構有能だったりするんだ。
あのエイラとサーニャをくっつけたのも、なにを隠そうこのあ・た・し♪
普段は次元の裏側ラブ時空にいるんだけど、
ひとたび額のラブセンサーに寂しい愛の電波を感じるや否や――
うおっ!? さっそくとびきり強い片想いの電波が!!
発信地は――ブリタニア……ドーバーかな。
イイカンジに登場しなきゃな。
なめられたら負けだからな。
……そうだ、あれやろう!
いっくぞぉ! シャーロット・E・イェーガー、出る!
「愛の天使・シャーリー見~参ッ!!!!」
と、あたしは颯爽と登場!
両手を交差させてポーズを取る。
○ー○ー○ー○だ(伏せ字)。
別にこれからお仕置きをするんじゃないけど。
――と、そんなことより、今回の迷える子羊はと。
こんな強烈な片想い電波なんて、いったいどんなヤツなんだ?
あたしはソイツを改めて目の前にする。
そして、固まった。
「いっ……」
次の瞬間、あたしの口はは大声をあげた。
「いやっ、やっ、や――――――っ!!!!」
な、なんなのコイツ!?
なんで真っ昼間からオナニーしてんだ!?
しかもオカズヤバイよ! だってロリだよ!?
いきなりそんな、ドン引きだよ!
「なんだ貴様は!? 人の部屋に入る時はノックぐらいしたらどうだ!」
と、その女は言った。
それもそう……じゃなくって……
「おっ、お前こそ、まんこくらい隠せよ!!」
「むっ、それもそうだな。私としたことが」
そいつは下ろしてたズボンを上げた。水色のローレグ。
「それで」
と、改めてソイツはあたしに言ってきた。
「貴様は何者なんだ?」
「そういうときはまず自分から名乗るもんだろ」
「それもそうだな――私はゲルトルート・バルクホルン。
カールスラント空軍所属で、階級は大尉だ」
と、ソイツは言った。
言われてみれば、いかにもカールスラント軍人って感じのヤツだな。
「それで――貴様は誰だ?」
訝しげるように改めて、そいつは訊いてきた。
一回言ったけど……まあ、いきなりの登場だったし、そう訊かれるのも無理はないな。
もう一回言ってやるか。
「あたしは愛の天使・シャーリー。お前の片想いラブ電波を受けて、ラブ時空からやってきたのさ」
「嘘つけ」
「えっ……?」
「そんな場所があるわけないだろう。本当のことを言え」
えっと……
「本当はリベリオンのボンネビル・ソルトフラッツから来たんだ……でも、愛の天使ってのは本当だぞ」
私が言うとソイツは眉間に皺をよせて、ジッとあたしを上から下まで見てくる。
あたしの胸もじっくり。まあ、無理もないね。
そうして、ソイツは言った。
「……信じてやらなくもないが」
「本当かっ!?」
あたしは思わず、ソイツに抱きつこうとした。
まさかこうもあっさり信じてくれるなんて、あたしも思ってなかったから。
――が、ソイツはあたしの包容をスルリとかわして、あたしは床にこけそうになる。
「なっ、なにをしてくるんだ、いきなり」
顔を赤くしてソイツは言ってくる。
お、いっちょまえに照れてるのか。結構可愛いとこあるじゃん。
まあ、いきなり抱きつくとかは、たしかにな。
あたしはスッと、ソイツの前に右手を差し出した。
きょとんとするソイツ。
「握手だよ、握手。初めて会ったんだからな」
「それもそうか」
未だに釈然としてないふうだけど、ソイツはあたしの差し出した手を握ってくる。
それじゃあ、改めて。
「あたしはシャーロット・E・イェーガー。リベリオン出身で階級は中尉だ」
そしてあたしは、握手の手にギュッと力をこめた。
ソイツはクッと顔を歪ませる。
「シャーリーって呼んで。よろしくな」
「そうか、リベリやん」
「いや、だからシャーリーって呼んでって」
「貴様などリベリやんで充分だッ」
そう言うと、ソイツもあたしと握手する手をギュッと力をこめて握り返してくる。
負けん気が強いのか? 面白い。あたしもさらに力をこめる。
――が。
「いだっ、いだっ、いだだだだっ!」
コイツ、力強すぎ。ちょ、これ、ヤバいって!
指もげる! このままだと指もげるから!
「私の固有魔法は筋力の強化でな」
と、淡々とソイツは告げてくる。
そんなの、絶対勝てるわけないじゃないか。
あたしはあまりの苦痛に顔を歪める。
「どうかしたのか、リベリやん?」
とか、わざと訊いてくる。わかってるくせに。
ていうか、また人をリベリやんって。
「だっ、だから、シャーリーって、呼んで、っで」
「貴様などリベリやんで充分だ」
ホント、堅いヤツだなぁ。
――ああ、いいさ。
じゃああたしはあんたをこう呼ばせてもらうから。
あたしは叫んだ。
「じゃあお前なんて、カールスラントの堅物、略して『カタブツ』だッ!」
そうしてあたしは意識を失った。
その直前、あたしはそれに気づいた。
そういえばこのカタブツ、まんこ触ったままの手で握手しやがった……。