無題
「トゥルーデぇ~っ、聞いてっ!ひどいの!美緒ったらひどいのよぉ~!」
そう叫びながら突然部屋に飛び込んできたのはミーナだ。
普段の彼女らしからぬ言動・行動から察するに、彼女は今かなり酔っている。
長い付き合いの中酔ったミーナに絡まれる事は幾度かあった。延々と愚痴を溢したり笑いの沸点が低くなって笑い上戸になったり。
だがミーナが満足するまで喋らせてやれば、大体は喋り疲れて眠ったり晴れやかな顔で部屋へ戻ったりで、特に問題はなかった。
今も、ベッドに座らせ「まずは落ち着け、ゆっくり何があったのか話してみろ」とでも言えばいいのだろうが、こっちに大いに問題があった。
…私はちょうど、エーリカによってベッドに押し倒された所だったのだ。
「み、ミーナ、これはその」
「ミーナぁ、入る時はノックくらいしてよ」
「お前が言うなっ!早くどかんかエーリカ!」
私達の体勢を見てきょとんとするミーナ。それでも私の上からどこうとしないエーリカ。
ああ、私はどっちのフォローをしたらいいんだ!
「お楽しみ中だったかしら」
「正確にはこれから。だから後でにしてくれるー?」
「ああひどいわフラウ、私を除け者にするのね」
しくしくと泣き真似をするミーナは、やはり相当出来上がっているようだ。
「恋人の夜を邪魔するなんて野暮だよ」
エーリカも安全と踏んで普段は(怖くて)言わないようなセリフを吐いている。
馬鹿な事言ってないで早くミーナを落ち着かせないと…
「いいじゃない、私も混ぜてよ」
「えー。…仕方ないなぁ、今回だけだよ」
「ふふ、ありがとうフラウ」
…ちょっと待て。
混ぜる?それはどういう事だ。この体勢が現す行為に、ミーナが入ってくるという訳か?
…つまりそれは……私の身が危険だ!
「というわけで、よろしくねトゥルーデ」
「よっ、よろしくねじゃな…んんっ!」
反論する間もなく、私の唇はエーリカのそれによって塞がれた。
「可愛がってあげるわね、トゥルーデ♪」
ミーナはにこやかに笑いながら私の服を脱がせていく。
あああ!助けてくれクリス!
「ふ…はっ、やめ…っ」
「またまたー、されるの期待してたくせに」
「そ、そんな事っ…」
いつの間にかエーリカは私の左側に、ミーナは右側についていて、完全に両脇を固められていた。
…逃げられない。
「さてと、まずは私からね」
「ふふ、スーパーエースのお手並み拝見ね」
エーリカの手が私の胸に伸びてきた。
「っ…」
「大丈夫だよトゥルーデ、いつもみたいに声出していいんだから」
いつもとか言うな!大体そんなに声なんか出してない!
…と反論したい所だったのに。
「うぁっ…」
「ん、そうそう」
「ぁん…ぅ…」
エーリカの少し強めの手の動きに、意識とは別に勝手に声が漏れてしまう。
「あ、や…ふっ、く…」
うぅ、駄目だ…抑えられない…
エーリカ、気持ちい…もっと……
―くちゅっ
「ふぁっ!」
突然響いた水音と下腹部の刺激に体が跳ねる。
「あー、私の番なのに」
「ふふっ、だってトゥルーデ、物欲しそうに腰揺らしてたんだもの」
見ると、ミーナが私のズボンの脇から指を入れていた。
「もうこんなにして…フラウのがよっぽど気持ちいいのねぇ」
普段よりぽやんとした声でミーナが微笑んだ。
「や、あぁっ、ミーナだめっ…」
「トゥルーデったら可愛い~、うふふっ」
体もふらふらしてるくせに、なんで指の動きだけはしっかりしているんだ。
エーリカは横で膨れているし、このままでは非常に危険だ。
「随分いい声出すね、トゥルーデ」
ああ…エーリカの声に黒い色が見える。こいつの中の悪魔が目覚めている証拠だ。
「そんないやらしいトゥルーデにはお仕置きだな」
「ちょ、何を…」
目を細めて笑ったエーリカは、下に手を伸ばすとミーナの手をかいくぐり、思いっきり肉芽を摘んだ。
「っああぁぁんッ!」
突然の痛い程の刺激に、喉から声がほとばしり体が震えた。
びくっ、びくっ、と余韻で体が痙攣する。力が入らない…
「まだまだ。休み無しだよ」
「あ、待っ…はう、あぁ!」
「フラウったらいじめっこねぇ」
「ひゃっ…や、おかしくなるっ、んうぅっ…」
続け様に刺激を与えてくるエーリカ。ミーナの指が中に入ってきたような気がした時にはもう遅かった。
「も…むり、だ…あ、ぁっ、ひゃああぁっ…!」
何回気をやったかわからないくらい、二人の攻めは続いた…
―――
「ぅ…」
動きにくさを感じて目が覚めた。
当然だろう、一人用のベッドに三人寝ているのだから。
散々私を攻め倒した二人は、私に両側から抱きつくようにして眠っている。
「…トゥルーデ」
「ミーナ?起きていたのか」
右脇にいたミーナがこっちを向いた。
その表情はまだ少しトロンとしていたが、先程よりは酔いは醒めているようだ。
「何があったんだ、ミーナ」
「…なんでもないの。美緒が宮藤さんと二人でいるのを見て、ちょっと妬いただけ」
ミーナは苦笑して、抱きつく腕の力を強めた。
「一人で飲んでたら一緒に飲みたくなって、誘いに行ったら…だったから。ついヤケになって潰れちゃった」
「珍しいな、ミーナがそんな事でカッとなるとは」
「ん…」
ミーナはちらりと私を見上げた。いつもとは違う可愛らしい表情だ。
「最近、その…ご無沙汰で。私ってそんなに魅力ないのかしら」
また彼女らしくない発言。やはりアルコールは抜けてないようだ。
「ミーナは綺麗だよ。充分すぎるくらい魅力的だ」
「本当?抱きたくなるくらい?」
「…さっき散々したくせに」
「…そうだったわね」
くすくすと笑いが零れた。
「私、戻るわね」
「ああ。具合は大丈夫か?」
「平気よ、ありがとう。おやすみなさい」
まだ暗い廊下に、ミーナは静かに出ていった。
まぁ、なんとか大丈夫そうで良かっ…
「トゥルーデ」
「わっ!エーリカ起きたのか」
「恋人が寝てる間に他の人を口説くなんていけないなぁ」
「く、口説いてなんか…!」
「お仕置き続行」
…明日寝坊しても怒らないでくれ、ミーナ。