dynamite sister


最近、リーネの様子がおかしい。
ちょくちょく隙を見てはシャーリーと何処かへ行ってしまう。
しかも行った先で何をしてるか、二人とも話してくれない。
芳佳はリーネの事が気が気でなくて仕方がない。
ルッキーニは仲間外れにされた上シャーリーにそっぽを向かれたと思い込み不機嫌の塊。

ある日の朝食の席。
「ねえリーネちゃん」
「なあに芳佳ちゃん」
「最近、シャーリーさんと何してるの? よく二人でいるけど」
途端に顔を赤らめて、恥ずかしそうにうつむく。
「内緒」
「ええ~聞きたい聞きたい。リーネ何してるの?」
いきなり割り込んで来たルッキーニがリーネの服の裾をぎゅうぎゅう引っ張る。
「あ、やめてルッキーニちゃん」
「私も知りたいな。二人でしてること、シャーリーさんでないと、いけないの?」
「うん」
「ゥヘア 何それ~! つぅまんな~い!」
「シャーリーさん……は話してくれませんよね」
「悪いけど宮藤、お前にも内緒だ」
「そんなあ。いつから二人はそんな関係に……」
「芳佳ちゃん。ヘンな事、してないよ? 何て言うか、お姉ちゃんみたいな……」
「お姉ちゃんだと!?」
ガタっと席を立つトゥルーデ。
「リベリアン、貴様いつの間に手懐けた!? しかも公然と『お姉ちゃん』と呼ばせるとは……この卑怯者!」
「別に~。お互い必要だからこうしている」
「何!?」「ええっ!?」「ウニャ!?」
一様に驚く隊員達。
「ま、アンタの国の“電撃戦”みたいなもんかな」
意味深な笑みを浮かべると、食事を終えたシャーリーはリーネの肩を叩いた。
「よし、行こうか」
「はい」
ふらふらと立ち上がり、シャーリーに付いていくリーネ。
「あわわ……リーネちゃん」
虚しく空を揉む芳佳の手。
「こらールッキーニはダメだ。ついてくんな」
「うわ~ん、シャーリーの意地悪! 馬鹿! サイテー! もういい!」
「『お姉ちゃん』だと……」
席を立ったまま、納得が行かないでわなわなと拳を握るトゥルーデ。横でニヤニヤ笑っているエーリカ。
「お前達、朝食くらい静かにせんか」
美緒が静かにたしなめた。ミーナは苦笑いした。

シャーリーの部屋は、厳重に鍵が三つ付けられていた。
高くしつらえた窓も厳重にカーテンが掛けられ、外から様子も見られない。
「さて……始めるか、リーネ」
「お願いします」
そっと上着を取り、シャツを脱ぎ、ブラを外す。たわわに実ったふたつの果実が、現れた。

部屋の外では、ルッキーニと芳佳、何故かトゥルーデまでもが加わって中の様子を伺い知ろうと奮闘していた。
「何か、声、聞こえる……」
「しーっ、静かに!」
皆一様にドアにコップを当て、耳にくっつけている。おまけに揃って魔力まで解放し、少しでも内部の音声を拾おうとしている。
「必死ダナァ。三人揃って何バカやってんだヨ」
通り掛かって呆れ顔のエイラに向かって、三人は口に指を当てて「黙れ」と合図した。
「中の様子知りたいんダロ?」
「何故分かった?」
「流石エイラさん、予知能力の持ち主ですね」
「あのナア。そんな姿見たら誰でも分かるッテノ。どれドレ」
手持ちのカードをひょいとめくって、カードを目にし、少し仰け反った。すぐさまカードをしまって口笛を吹いた。
「さ~てト~」
「待て、何処へ行く?」
「私は何も知らないし何も見てないカラナ」
「ちょっとエイラさん!」
「芳佳黙って!」
「静かに!」
「す、すいません……」

「なんか外で、声聞こえないか?」
「……いえ、特に」
「そっか。まあいいや。じゃあ続き、しようか」
「はい」
シャーリーはリーネをそっと抱き寄せた。
リーネは甘い吐息で応えた。

芳佳の耳は、確かにリーネの喘ぎ声……に近い……音声を拾った。
「aqwsedrbhj!!!!」
「どうした宮藤」
「ねえねえ芳佳、何が聞こえた?」
わめきかけた芳佳の口をぎゅうっと塞ぎながら、トゥルーデとルッキーニは問うた。
「あ、あの……リーネちゃんの、声がする」
「当たり前だろ。中に居るんだから」
「どんな声?」
「そ、それは……」
「ウジャ! 今シャーリーの声も聞こえた!」
「何、それは本当か!?」
「中に居るんだから。で、何を話してた?」
「そ、それは……」
「なんだお前ら。二人揃いも揃って……待てよ?」
トゥルーデは顎に手をやり考えを巡らせた。
朝晩問わずの密会。赤面するリーネ。二人の意味ありげな発言。そして只ならぬ様子の芳佳とルッキーニ。
「退け、二人とも」
「え」
「何すんの?」
「私はこう見えても、隊の最先任尉官だからな。……そう、部下の日頃の行いも把握しないとな!」
ぶわっと魔力を解放すると、指を鳴らした。
「え、まさか」
「ついてこい」
「ちょっとバルクホルンさん……」
トゥルーデは数歩下がり、唐突にドアにタックルし、激しい音と共に中に転がり込んだ。

「ひっ!」
「うわっ何だ!? ……か、堅物! 何て事すんだ!」
「それはこっちのセリフだ。お前達こそ、何をしている!?」
「え」
「うっ」
半裸で、ベッドの上で抱き合っていた二人を発見する。
「ノックも無しに……ひ、卑怯者」
「これが本当の電撃戦と言うものだ。覚えておけ」
「ただ力任せにドアぶち破っただけじゃんか! 直せよ!?」
「その前に、この痴態の理由を話して貰おうじゃないか。なあ、宮藤、ルッキーニ」
「はい。……リーネちゃん、どうして?」
「シャーリー……やっぱりそう言うカンケーだったんだ。ショック、だよ」
「おい待て。誰にだって、秘密のひとつやふたつ位あるだろ?」
「最先任尉官として、看過できん。説明しろ。今すぐに」
「そうそう! 説明説明!」
トゥルーデの横でルッキーニがはしゃぐ。
「貴方達、朝も早くから何をしているの!?」
凛と響く声に一同が固まる。
ミーナだった。横に美緒も居る。その後ろには……ドアの破壊音で騒ぎに気付いた他の隊員もぞろぞろと集まり、
壊れたドア越しに様子を見て囁き合ってる。
「とりあえず、全員連行します。坂本少佐、全員の身柄を」

執務室に勢揃いした一同は、シャーリーとリーネの口から出た言葉に驚愕した。
「おまじない!?」
「胸が小さくなる!?」
「はい」
消え入りそうな声で答えるリーネ。
「いや、この前さ。ちょっとだけしたんだけど、それでリーネのバストが1cm小さくなったんだってよ。
だからこれを続ければ、リーネのお悩み解決って言うか。な? 合理的だろ?」
「嘘を言え! またそんなでたらめを! 大体何処が合理的なんだ!?」
トゥルーデがシャーリーに噛み付く。
「ほ、ホントなんです……」
リーネが恥ずかしそうに言う。
「ホントなの? リーネちゃん」
「うん。本当。この前サイズ計ったら……その……」
「えええ……リーネちゃん……」
別の意味でショックを隠しきれない芳佳はへなへなと崩れ落ちた。慌てて抱きかかえ支えるトゥルーデ。
「大丈夫か宮藤、しっかりしろ」
「リーネちゃん……ああ……」
「おい、宮藤! 気を確かに持て! ……って私の胸を掴んでるんだ」
「ああ……バルクホルンさんも……」
「こらやめろ宮藤!」
芳佳の耳元でひそひそ呟くエーリカ。芳佳は指図されるまま、言葉を呟く。
「お姉ちゃん……」
「可哀想に宮藤。せめて私の胸で泣くといい」
「芳佳ちゃん何にやけてるの!? その手!」
リーネが今度は芳佳をなじった。トゥルーデもがっしりと芳佳を抱擁し、離さない。
「いい加減にせんか、お前ら!」
美緒の怒声で一同はびくりと正気に返り、姿勢を正す。
「とにかく事情は分かりました……。しかし、どうしたものかしら」
ミーナは処分に困り果て、頭を抱えた。
「とりあえずあたし達は何も悪い事してませんよ? 何かを壊したとか、何か規則破ったとか、してないし」
「他の隊員に誤解させる様な行動をしただろうが! 見ろ、宮藤とルッキーニの落ち込みようと言ったら……」
「あんたらが勝手に妄想しただけだろ!? あとあたしの部屋のドア! 絶対直して貰うからな!」
「リベリアン、貴様ぁ」
「なんだよ、堅物」
「やめなさい!」
ミーナにぴしゃりと怒鳴られ、しゅんとする“大尉”ふたり。

「とにかく。ことの誤解も一応は解けた事だし……バルクホルン大尉、貴方には今回の騒動の責任として、
イェーガー大尉の部屋のドア修繕を命じます」
「了解」
「イェーガー大尉は……、“効果”の程はともあれ、他の隊員に誤解されかねない呪術的な行為は今後一切禁じます。
風紀を乱しかねません。いいですね?」
「了ぉ解」
「全員、異議は? ……無ければ、退出して宜しい」
ぞろぞろと部屋を出ていく隊員達。
残された美緒とミーナは、執務室のドアが閉まると、ふうと溜め息をついて、頭を抱えた。
「あの子達……何をしているのよ、まったく」
「まあ、一応年頃の娘達だからな。仕方ないと言えば仕方ない、か」
「随分達観してるのね、坂本少佐」
「ミーナ程じゃないさ。しかし……シャーリーの言ってたおまじないとやら、本当に効果有るのか?」
「私に聞かないで頂戴。まさか今更試す訳にもいかないでしょう?」
「それもそうだな」
ぽりぽりと頬を掻く美緒。もう一度、ミーナは溜め息をついた。
「ミーナ、考え過ぎ、思い詰め過ぎは良くないぞ。眉間にシワが寄って、せっかくの美人が台無しだ」
美緒の何気ない一言で、思わず苦笑するミーナ。
「美緒、貴方って人は……」

とんかんと金槌に釘、壁板やら木材を持って、ドアの修理にいそしむトゥルーデ。
「しかし派手にやったね、トゥルーデ」
木材を手に取るエーリカ。横にはルッキーニも居て暇そうに様子を眺めてる。
「緊急事態だったからな」
「なぁにが緊急事態だよ。そんなに『お姉ちゃん』扱いされたのが悔しかったのか? ……おい、金槌は止めろ、シャレにならん」
顔色を変えて後ずさりするシャーリー。
「貴様……」
「バルクホルン大尉、図星なんだ~」
茶々を入れるルッキーニ。
「悪かったよ堅物。言い過ぎた、謝るよ」
「まったく……。まあ、私も少し先走り過ぎた事は謝る」
改めてドアに向かう。が、金槌を振るう手が滑り、親指を強打する。
「……っ!」
「トゥルーデ、動揺してるよ。気を付けて~」
エーリカにたしなめられる。
「言われなくても。しかし……気になる事がひとつある。なあ、リベリアン」
「ん? なんだ堅物?」
「お前の言う『おまじない』、あれはどう見ても……」
「ああ。リーネの乳揉んで吸ってた」
「やっぱり」
「ここだけの話だけど、いつもはルッキーニと一緒の時に、二人で愛し合う時によくやるんだけど。なあ、ルッキーニ」
「うん。そうだね」
「な、なにぃ?」
呆気に取られるトゥルーデ。
「そんな目で見るな。あたしだって一応分別は有るぞ」
「既に分別とかそう言う次元の問題じゃない」
頭を抱えるトゥルーデ。
「って事は……」
エーリカは何かに気付いた様子で、呟いた。
「ルッキーニの胸が……いや、これから成長期だからそんな事無いか」
「ん?」
「何か言ったか?」
「別に~」
「でも、あたしも気になってたんだよな。リーネ、ここんとこ胸のサイズが急に大きく……」
「それもヘンな話だな」
「ウニャー ヘンなの~」

「芳佳ちゃん、誤解させてゴメンね」
「いいの、リーネちゃん。私もなんか、追い詰めたみたいで」
リーネは部屋で、ベッドの上で芳佳と抱き合って時を過ごしていた。
口吻を交わし、ゆるゆるとお互いの肌を重ねる。
芳佳の手が胸に伸びる。
「芳佳ちゃん……」
「リーネちゃんの……やっぱりいいなあ……」
リーネは芳佳のそんな行為を感じ、ふうと溜め息をついた。そしていつもの様に胸を揉まれているうちに、はたと気付いた。
「芳佳ちゃん」
「どうしたの、リーネちゃん」
「芳佳ちゃん……もしかしたら芳佳ちゃん、皆の救世主になれるかも?」
「はい?」

end



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