無題
肌寒い様な、温もる様な……
そんな奇妙な感覚の中、ワタシは静かに眠りから醒めた。
薄暗い天井を眺め、心地良いまどろみの中、この奇妙な感覚を楽しむ。
へくちっ
その小さな小さな¨何か¨に気付かなれば、そのまま…また、温もり溢れる夢の中に潜り込んでいたに違いない。
ぼぉっとする頭の中に疑問と言う名で覚醒が始まる。
考えてみれば、そうだ。
何故、ワタシは右手を天井に向けて伸ばしているのだろう?
そんな疑問の答えなんて、全く理解出来なかったが、理由はどうしてか分かっていた。
そろりそろりと横を見ると、私で暖を取るように寄り添うサーニャの姿が……
その瞬間、ワタシの頭は完全に覚醒すると同時に完全にフリーズしてしまった。
どうやら、自他称共にヘタレの異名を轟かせているワタシは、眠りについている無意識下でもサーニャに対してはヘタレらしい。
驚きの余り、叫びそうになった口を慌てて閉じた代償に噛んだ舌が痛い。
徐々にどうにか落ち着きを取り戻しつつある頭は、今までの経緯を断片的に思い出してくれた。
シャーリーの対ネウロイ音速特攻戦のあった日の代わりとして行った海水浴。
お前達は訓練だ!と少佐に引きずられて行った新人二人を他所に、ワタシ達は好きな様に思い思いの時間を過ごし……
そういえば、と着替えを取りに部屋に戻って……どうやらそのまま寝てしまったようだ。
というか、ワタシは水着のままだ。
サーニャはワタシを呼びに来てくれたのか、何故一緒になって寝ているのか……
ま、後でサーニャに聞けばいいか。
このままサーニャの温もりを肌に感じていたかった気もするが、生憎とワタシはヘタレなのだ。
サーニャに気付かれないようベッドから離れようとして……
改めて、ワタシは寝ぼけていたんだ、と実感した。
サーニャの温もりがどこから発生していたのかに何故気付かなかったのか。
小さく、小さく「…キ、キョウダケダカンナ……」と呟いた。
て、掴まってるんだから…しょうがないよナ?
誰に言い訳しているのか、知らず微笑みを浮かべていたワタシは、サーニャとワタシ、二人でベッドに包まった。
心暖まる温もりに身を委ね、意識がまどろみに落ちる前に……
ワタシは¨くすっ¨と笑うサーニャの笑顔を見た気がした。