かーるすばすたーず
お姉ちゃんはご乱心
前略、地上で私達を探してくれているだろうと信じてるよミーナ。あのね、トゥルーデがおかしくなっちゃったんだ……
その日は私もトゥルーデもとりあえず午前中が非番な事もあって、ちょっくら基地周りを散歩と言う名で追いかけっこをして楽しんでたんだ。
「い、いい加減待たんかっ、ハルトマンッ!!!」
「って、あーっ!! 筋力強化は反則だよトゥルーデ…え!?」
「な、フラウ!!」
芝生に隠れてぽっかりと空いていた謎の空洞。
そこに私も私を助けようとしたトゥルーデも落ちちゃったんだ。
「……っ、痛たた……と、トゥルーデ!? ねぇ、ちょっと大丈夫、トゥルーデ!!」
「………ぐ、…ぁ、フラウ……お前、怪我は…?」
暗闇の中、いつ地面に叩き付けられるかもしれない私を包み込む様に抱きしめてくれたトゥルーデ。
身を張って私を守ってくれて、まだ自分より私の心配してくれてるなんて……
「わ、私は大丈夫だよ!! それよりトゥルーデこそ……」
「……なぁ、フラウ」
私の心配を他所にむくりと起き上がったトゥルーデ。
薄暗闇の中、私を見つめて語りかけるようにトゥルーデは口を開いた。
「笑いたければ笑うがいいさ」
「は?」
訂正、他所に置かれた私の心配は大穴を当てて返ってきた模様。
って、いきなり何?
「トゥルーデー? え、と…大丈夫…?」
「ああ、フラウに心配をかけてしまうなんてな。全くカールスラントエースの名が泣くよな。笑えるだろ?笑えばいいさ!あーっはっはっはっ、って笑い飛ばすしかないよな!?あーっはっはっはっ!!!!」
なんか凄まじく失礼な事言われた気もしたけど、それ以上にトゥルーデが色々と危ない!
キャラクター崩壊ってか放棄してる!?
「って…無反応か、貴様ぁあああああああああ!!!!」
両肩を掴まれてガクガクと揺れる視界の中、とりあえずトゥルーデが大口を開けた瞬間を狙って秘密兵器をほうり込む!
んむぅ、といきなりほうり込まれたのに噴き出さずちゃんと食べてくれるんだ……。
さっすが、マジカルウィッチエーリカちゃんの作った愛妻おむすび、愛情たっぷり!と、とりあえず食べ終わったのを見届けて言ってみたんだけど……
後ろ向いていきなり、げげごぼおぅえ……って、酷くない? てか何故か無性にボドドドゥオドーとか言いたくなったのは秘密だよ?
「よし、トゥルーデ、落ち着こう!」
「お前が落ち着けハルトマン! とりあえず深呼吸! そして……筋肉、筋肉~」
ゴメンねクリス……。私、君のお姉ちゃんを少し、いや、かなりアレな感じにしちゃったかも……。
ため息を一つ、とりあえず…まずすべきは状況確認だよね。
私達は薄暗い洞窟…? というか遺跡っぽい所にいるね。
上を見上げれば遠~~~~~くに小さな光。……よく私達無傷だったね。
薄暗い程度に光を感じるのは、何故か壁ってか岩がぼんやりと発光しているから。
「で、トゥルーデ。どっか痛い所とかはないの?」
「無論だ。カールスラント軍人たる者、スパイの一つや二つ完遂出来なくてどうする!」
あ、駄目だ。なんか変な所打ったみたい。
とりあえずさっさと地上に出てミーナに相談しよう……。
「そう、とにかく地上に出なきゃね。トゥルーデ、とりあえず左右のどっち行こうか」
「ふふん。特別にいいことを教えてやろう、いいか? こういう時は壁に手を付けてひたすら歩いて行けば必ず出口へと向かうのだ!」
いや…、のだ!ってアンタ……。
まぁ、とにもかくにも自信あり気なトゥルーデを追いかけることにした。
のだが……
「行き止まり……って言うか、崖っぷち……」
「なるほど……つまりこから飛び込むんだな?」
私に出来る事、一つずつ叶えたい。
全力で遠慮します。出来ることと、やっていいことは違うと思うんだ、私。
高く高く舞い上がれ?
いえ、トゥルーデさん。私達、全力で墜ちてます。てか落ちてます。
そして、ザブンッ!!と地下水脈に叩き付けられると同時に……私は意識を手放した。
「……って、おい…ミーナ?」
「あら、どうしたのトゥルーデ」
「私の記憶が確かなら……怪談話をしていたのではなかったか……?」
「………あら、すっかり忘れてたわ」
カクッとこけるウィッチーズ一堂。
扶桑に伝わる百怪談だかなんだかをしてみようと言う話から始まった怪談大会。
どうやらミーナは途中から目的をすっかり忘れていたようだ。
「仕方ないわね、トゥルーデ、フラウ。数日前、貴女達が行った地下洞窟の話をしましょうか」
「は?」
「へ?」
お互い顔を見合わせるもそんな所に行った記憶はない。
……そういえば、数日前の休暇の日の記憶が……
「ミッション、スタートね」
私達は歳柄にもなく叫んじゃったよ……