安らぎの場所


初めてその姿を視界に納めた瞬間から、私の想いは水平線に燃え沈む夕焼けの様に――

知っていますか?
私は貴女の事を知りません。
知っていますか?
私は貴女の素顔を知りません。
知っていますか?
私は貴女の想いを知りません。
ねぇ、ミーナ中佐……私は、貴女の心に入ってもいいですか?
誰よりも優しく、誰よりも大切なモノを失う恐ろしさを知っている貴女。
本当は、誰かに頼って、支え合いたい仕事も貴女は私達の為に心身を粉にしています。
私では貴女の支えになれませんか?
私では貴女の安らげる場所にはなれませんか?
ほんの少しでもいいんです。
だから、ミーナさん。
今日は、今日だけは……私がミーナさんを支えます。
今の私には、お仕事で疲れて眠ってしまったミーナさんに、膝を貸すくらいしか出来ません。
だけど、この時、この瞬間だけはミーナさんは、ただの「ミーナ」になれると信じて……
だから私は、今は安らかに眠るミーナの髪を撫でながら呟きます。

「いい夢を見てね……ミっちゃん……」

翌朝、私が目を覚ますと、昨晩のまま顔だけをこちらに向けたミーナさんが優し気に私の頬を撫でる。

「…おはよう……ありがとう……芳佳ちゃん」

そして私達は小さなキスを一つ交わし、また宮藤軍曹とミーナ中佐に戻る。
それは私達の暗黙のヤクソク。

「宮藤さん、今朝の朝食も楽しみにしてますよ?」
「……はいっ!!」

私は貴女を知りません。
ですから、どうか…これからも――
貴女の安らげる、私で居たい……。


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