無題


「……ーヌ……う様……ペリーヌお嬢様」

心地のよい声。私の毎朝の至福のひと時。
毎朝毎朝、私を起こしてくれる執事の声が降り注ぐ。
例え起きていたとしても、もうしばらくの間…後少しだけ、と聞いていたいと思うのはいけない事だろうか?

「……ん…ぅ」
「ふむ、致し方ないな……すぅ」

けれどそんな至福の時は、無情な程に早く終わりを迎える。
ああ、私を揺する執事の温もりが離れていく。私がまだ起ききっていない頭でその様な事を考えていた、その瞬間

「喝ぁああああああああっ!!!!!」

怒号一喝。毎朝お決まりになりつつあるバトラー坂本の朝の挨拶を受けましたの。

「ひゃわぁ!!?……ば、バトラー坂本!?」
「寝坊はなりませんぞ、ペリーヌお嬢様。はっはっはっ」

文字通り飛び起きた私を前に、高らかに笑うのは私の執事、そう、私の執事…大事な事なのでもう一度。「私の」執事、バトラー坂本。
密かに恍惚とした表情になる私を余所に、バトラー坂本は一通り笑うと入り口へと視線をやった。
そこには、メイド長のミーナさんが悠然と待ち構えておられました。
このメイド長。さり気なくバトラー坂本を見る目が…等と考えると、ひっ!?
また突然どこからともなくと言うか一直線に殺気が突き刺さるのが怖いです。
毎朝お馴染みになりつつある殺気洗礼を受けた後、ミーナさんの手伝いで着替えを行う。ふと見るとバトラー坂本は、また何時もの様に姿を消していた。
そうこうして着替えた後、私達は食堂へと向かうのです。
朝特有の日差しを窓から存分に取り込む長い長い廊下。食堂に向かう途中、私達の耳に、また「何時もの様に」怒鳴り声が聞こえてきます。

「ええい、毎朝毎朝!さっさと起きんか!カールスラントメイドたる者が主よりも寝ている等と!!…って、ああっ!!き、貴様またメイド服を布団代わりに!?」
「……にへへぇ……ぐぅ…」
「だぁ、寝ぼけて着替え……ってエプロンの下にはちゃんと服を着んか!穿かんかぁーっ!!!」

……何故だか、毎朝の事ながら無性に頭が痛いですわ。
が、横を見るとやはりミーナさんも同様なのか、ふっ、と窓から空を見上げて

「……あらあら、うふふ。今日も平和ですわね、ペリーヌお嬢様」
「……ええ、そうです、わね」

共に現実逃避することで、暗黙の内に聞かなかったことにしました。
ええ。毎朝の事ですけれど……。

「あ、おはようございます。ペリーヌさん、メイド長。朝食の仕度は調ってますよー」

食堂に着くとメイド見習いである宮藤さんが出迎えてくれます。
けれど、今日の食堂は……

「……なんだか、甘ったるい香りが…」
「はいっ!リーネちゃんの実家から送られて来たそうで…」
「おはようございます。ペリーヌ様、ミーナメイド長」

食堂に入る私達に、厨房から宮藤さんと同じくメイド見習いであるリネットさんも姿を現しました。

「おはよう、リーネさん。ところで本日のメニューは…」

私を席へと座らせながら、ミーナさんは見習い二人に質問します。
それにリネットさんは、とても良い笑顔で答えてくださいました。

「はい、ブルーベリータルトにブルーベリーパイ。ブルーベリーケーキとブルーベリーとブルーベリーソースをふんだんに使ったブルーベリーブルーベリー等他多数を作ってみました」
「って、ブルーベリーブルーベリーってなんなんですの!?ブルーベリーにブルーベリーかけただけというかその前にブルーベリーしかないんですの!?」

見習い二人の手によって運ばれてくる朝食(?)群。テーブルの上がほぼ白と紫の二色で埋め尽くされた様子は正直圧巻ですわね。
そして呆然とした私とミーナさんを見て、宮藤さんが慌ててトドメを刺して下さいました。

「あ、ちゃんとお口直しもありますよ!……はい、肝油です。ヤツメウナギの」

私はミーナさんに後を任せ、食堂を立ち去りました。

「あれ、お嬢。こんな時間にどうかしました?」

ふらふらと歩いていると、中庭に着いていたようでした。
洗濯物を干す為か、ロープを張り巡らせているシャーリーさんと出会いました。

「あ、あら。シャーリー、さん。いえ…その、良い天気ですわね」
「ええ、洗濯物干すには調度いいです。今ルッキーニが…っと来た来た」

ふと振り返ると大量の洗濯物を籠に乗せたルッキーニさんが走ってきました。

「あちょーぅぉ!!!あれ、ペリーヌ。おはよー、おわ!?」
「今日も元気いいみたいですわね、ルッキーニさ…ん…!!!!?」

何があったかは語るまでもなく、段差で躓いたルッキーニさんの持っていた洗濯物の山に押し潰されたところで


「目が覚めましたの。エイラさん、この夢は一体……」
「……ツンツンメガ……えと、ペリーヌ。ほら、お前色々と疲れてんダヨ。ウン」
「エイラ…昨日むぐ」

終われ


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