holiday


ミーナと美緒は二人腕を絡めて、司令塔の上までやってきた。
途中、基地の整備員や担当係官、そして501のメンバーに遭遇したが、
ミーナは笑顔で手を振って挨拶するも、美緒は恥ずかしさと照れが混じる複雑な表情を作り、前を向いたまま。
「なあミーナ」
「なぁに、美緒?」
「どうしてそんなに笑顔なんだ」
「横に美緒が居るから」
「私はかなり恥ずかしいんだが」
「二人一緒だから?」
「この頭の髪飾り……そしてこの腕を縛るリボン……。どう見ても誤解されるだろう」
「誤解じゃなくて良いんだけど」
「後で色々困ったりしないか?」
「愛の力よ」
微妙に壊れかけてるか? と美緒は内心呟いた。冷や汗が一筋頬を伝った。
「さて」
気持ちを切り替えるべく、司令塔のテラスに上がった。
いつもは戦況を見たり、訓練やテストの様子を眺めたり、レーダーで周囲の状況を探知したりと、任務でしか来ない。
ふと空を眺める。午後の訓練と思しきウィッチが自在に舞っている。
「あれじゃまるで鬼ごっこね」
「巴戦も空戦技術では必要だぞ。まあ、最近は集団戦が主流になっているが疎かにはできん」
「そうね……って、今日は任務の話はしないんじゃなかった?」
「ああ、すまん。つい」
「まあ、私もそう言いつつ、機動を見たりしちゃうんだけどね」
二人してくすりと笑う。
「なあ、ミーナ」
美緒は手摺に手を掛け、大空を見上げて言った。
「なぁに、美緒?」
「前に、話した事が有ったな。戦いなど関係なく、二人で一緒に空を飛びたい、と」
「ええ。覚えてるわ。忘れもしない」
「今もそう、思っているか?」
「もちろん」
「そうか」
しばしの沈黙。
どうしたの? と微笑んで首を傾げるミーナを見て、美緒は笑顔で答えた。
「その言葉が聞きたかった。いつか、叶うといいな」
「そうね」
「この状態では飛べないが……ミーナ」
美緒はミーナと肩を寄せ合った。ふたりの距離がごく僅かまで近付いたところで、美緒はそっとミーナに口吻をする。
ベッドの上でするものでなく、ほんの軽いものだったが……場所が場所だけに、ミーナは心臓が踊り、
天にも舞い上がる気分になる。
「私からのプレゼント……これだけじゃダメか?」
照れ笑いをする美緒。
「もう一度、良い?」
「あんまり人前では……まあ、今日だけなら」
「有り難う」
何度も、唇を重ねた。
二人を見守り、包み込む空の青さは突き抜ける程に美しく、太陽の輝きは曇りなく眩む程。
しかし、幾ら陽の光と言え、彼女達の“熱気”には勝てる筈もなく……
午後ののどかな基地を、ふたりの姿が眩しく照らす。
誰にも邪魔できない、思い人同士の時間。

end


前話:0891

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