スオムス1946 霞の濃いサウナ室の光景
その夜、サウナは異常な緊張と驚くほど濃い湯気に包まれていた。
この向こうで展開しているであろう事象は、普段のあたしなら嬉々として踏み込むであろう状況ではあったのだが張り詰めた空気がそれを許してはくれなかった。
さして広くも無いこのサウナの中の現状を擬音であらわすなら「ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!」とでも言った所だろうか。
とにかく、今サウナに踏み込むのはヤバイ。
それだけは断言できる。
空飛ぶ鉄槌の5、6発は覚悟の上で踏み込まなければならないだろう。
流石のあたしだってこんな所に踏み込んでいく勇気は無い。
無いがしかし、好奇心を殺しきる事はできなかった。
狩猟で鍛えたストーキングスキルでサウナへと潜入する。
まるでブリタニアで失業した湯気を集めてきたとしか思えないほどの濃さで狭い空間を満たしていた。
そして、明瞭に声が聞こえ始めた。
まずはあたしの嫁たる愛すべきヘタレの声だった。
「さささささささーにゃ……ほんとに、ソノ……スルノカ?」
全く情け無いヤツめ。チャンスはしっかりモノにしろ!
次に響いてくるのはサーニャちゃんの声だ。
「……だって、約束、してくれたよ、エイラ」
声が、殆ど同じあたりからする。
これはかなり近接しているな。
そう、二人は今、追加された日課をこなす為にサウナで見詰め合っているはずだ。
っていうか、お姫様抱っこなんて色々うらやましいことを日課にしてるくせに更に追加とは……へたれだと思っていたら意外と侮れん奴だな、イッル。
しかし……サーニャちゃんも大胆な提案をしたもんだぜ。
「な、なんだか、いつもよりも湯気が濃いね」
「ウ、ウン、あの、あんまり見えすぎてると色々緊張しちゃうだろうから、トントゥにお願いシタンダ」
湯気が濃いのはそういうことかよ!
「うん……ありがとう、エイラ」
「ととととりあえず、どちらが先に、ししししようカ?」
「え、ええと……エイラが先に、わたしので、いいよ……」
「ゐっ!」
バスタオルがはだけられる気配!
こ、こここここから先はっ、ちょっと聞くのに集中するとしようか……。
「エト、あの、ソレはっ、ソノッ!」
「……エイラ……」
「は、はひっ!」
「わ、わたしも……す、すごく、そのっ……」
「ささささささーにゃ」
「……面と向かってると、湯気が濃くても、ちょっとはずかしいね……」
「ウ、ウンッ……じゃ、じゃあアノソノっ……う、ううう後ろから、トカ?」
「……うん」
「そ、それじゃその、い、イク……ゾ……」
「ひゃ」
「ふぁん」
「え、えいら……背中に、その……」
「う、うんっ、ゴメン。あ、当たった……」
「えいらっ……あのっ」
「はひっ!」
「や、やっぱり前からで、その、一緒に……同時に、とか……どう、かな?」
「ッ!」
「お互い見えてないし、公平だと思うの……どうかな……エイラ」
「ウンッ」
「そ、それじゃ、その、エイラ……いく、ね……」
「お、おう……わたしも、イクゾ……サーニャ」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
お、おいっ! なんだか動きが無いぞっ!
いったい何がどうなった!?
って、オイッ!
と、いうわけであたしは両手の運命線合わせたままのぼせて行動不能になった二人を一人づつお姫様抱っこで水浴び場までつれてったわけだ。
安心してくれ、二人の日課はあたしが代わってこなしておいたからな!
フフン、今日はツイてたぜ!