world's cooking show
さて。今日は我が愛するミーナの為に料理を作ろうと思う。
ここに用意したるは、……そう、扶桑の米だ。
もう炊いてあるって? ああ、宮藤に頼んだ。……ダメ? 一人で最初からやれ?
そんな固い事言うな。私がやると米が固くなるんだ。なんでか知らんが。多分照れてるんだろ米が。
なんだミーナ、そんな顔して。ここは笑うところだぞ? 大丈夫、心配するな。
今から作るのは、何たって私の得意料理、そう、扶桑の携帯食……なんでそっち見るんだミーナ。
……そう、今から作るのは扶桑の誇る携帯食、戦国の世から……いやもっと前からか……
とにかく長い歴史を持つ扶桑の……ええっと……おにぎり。そう、おにぎりだ。
何で言い忘れそうになったかって? 地方によっては「にぎりめし」だの「おむすび」だの
色々言い方が有るからな。どれにしようか迷ってたんだ。決して忘れた訳じゃあないぞ。
ホントだぞ、ミーナ。何笑ってるんだ。お前の為に作るんだからな。何度も言わせるな。
さてさてお立ち会い、これからまず具を……ああ、もう用意してあるな。
うむ、流石は宮藤、実に手際が良い。うむ、それでこそ扶桑の……なんだミーナ、今度は何が不満だ?
これからが本番だぞ? 決して手抜きしてる訳じゃあないぞ。
えっ? 「そもそも料理は禁止にした筈」だって? 今更固いこと言うな。
米まで固くなるし、第一ミーナ、お前の不機嫌な顔は……うん、それはそれで美人だな。私は嫌いじゃないぞ。
でもミーナにはいつも笑って居て欲しいんだ、私としてはな。
せっかくのカールスラント美人が台無しだぞ。
……早く続きをやれ? 大丈夫、手順を忘れた訳じゃないから。
さて、まず用意したボウルに水を張って……顔を洗う訳じゃないぞ?
ここで手をよく湿らせて、……こうして、と。
さて、うまく握れるようにこうして手指を柔軟に……何事もリラックスだからな。
リラックスか。どうも緊張するな。ちょっと一杯。
……これは何かって? 勿論、扶桑酒だ。ワインも有るぞ?
ガリアのワインもなかなかいいが、カールスラントのワインもまたオツなもんだ。
飲んでないで早くやれって? いや、これでも真面目にやってるつもりなんだがな。
まあ、慌てる何トカは貰いが少ない、とは扶桑の諺でな。まあゆっくりやろうじゃないか、ついでにもう一杯。
ふう。なかなか胃に染みるな、色々な意味で。
ああ緊張する。妙な気分になってきた。
さて、いよいよ本題。
この、炊いた米を……あっつっ!!! 宮藤、これ熱いぞ!? ミーナも何笑ってるんだ。
普通に腹抱えて笑ってるじゃないか。リアクション芸の披露じゃないんだぞ。
料理だ料理。
さて、今度は慎重に……あちちっ、……こうして、こう。握って、少しくぼみを作って……
中に具を詰める! そんな力入れなくて良い? 練習したんだがな。まあ良い。
それで次に、海苔を巻いて……その前にもう少し握れ? 宮藤、そこまで指図するならお前が……
えっ、それじゃあ私がキッチンに立ってる意味がない? ふむ、確かにそうだな。
じゃあ続きを。もう少し、握って、握って……ふんぬっ! よし、こんなもんだろう。
そして海苔を……なんだ、海苔が切れてないな。一枚豪快に使おう。ミネラルたっぷりで肌にも良いぞ。多分。
さて、完成だ! 題して「おにぎり ブリタニア風」どうだ? 良いだろう?
では早速、ミーナ、来てくれ。せっかくお前の為に作ったんだ、遠慮せずに。
辺りを見回したって無駄だぞ。何故か皆居なくなってお前一人だけだ。
きっと美味い筈だ。何度も練習したからな。何たって、お前の為に作ったんだからな。
どうだ、味は?
……なんでワインばっかり飲んでるんだ?
end