walkie talkie
「ふーっ、しかし今日のネウロイは面倒だったなあ」
「ああ。しかし以前のもの程ではないな」
「とにかく、早く帰って風呂入ってサッパリして、なんかこう、冷たい飲み物でも飲みたいね~キューっと」
「基地に帰還し報告を終えてこそ、戦闘終了だ。まだまだだぞ」
「これだから堅物はぁ。もうこの近くにネウロイは居ないし、大丈夫だって」
「緩み過ぎだ、リベリアン。そう言う油断が隙を生み、事故や撃墜に繋がるんだぞ」
「そういうアンタだって、やけに速度上げてるじゃないか。早く帰りたいんだろ? わかるよ」
「ちっ違うぞ!? あくまでも、戦場からの帰還を可及的速やかにだな」
「要するに早く帰りたいって解釈でいいんだろ?」
「なぜそう取る?」
「あんたの顔が必死だからさ。大丈夫、基地もみんなも逃げないって」
「お前だって、どんどん速度上げてるじゃないか。さてはルッキーニと……」
「おいおい、なんでそこでルッキーニが出て来るんだ? おかしいじゃないか」
「いつもお前の帰りをハンガーで待ってるだろ」
「まあね~。そこがまたかわいいんだけどさ~。そうそう聞いてくれよ、この前なんかさ、ルッキーニの奴、
わざわざハンガーまで『喉渇いたでしょ~』って水筒持って来てくれてさ。それがもうたまんなく可愛くってさ。
でもそれお茶入れてると見せかけてバーボン入っててさ、あたしそれ気付かずにぐいーっと一気飲みしちゃって、
もう報告書どころじゃなくなっちゃって、ルッキーニ横で大笑いしてるし……」
「……」
「ところで、堅物さあ」
「何だリベリアン」
「堅物とハルトマンって、いつ結婚するのよ?」
「もうしてる」
「してるって、そりゃ婚約だろ。法律的な『結婚』はまだだろ?」
「今は戦時中だ。仕方ない」
「そういうもんかね。勢いでしちゃってもいいんじゃないの?」
「仮にも私達は501を、いや、ブリタニアの防衛と言う重大な任務を背負ってるんだ。そんな気軽な事は出来ん」
「でも、基地の中ではあっちこっちで……」
「やめんか!? てか貴様見てるのかっ!?」
「そりゃあ、あっちでイチャイチャ、こっちでイチャイチャされたら嫌でも目に飛び込んで来るって話だよ」
「……すまん。今後は自重する」
「別に責めてる訳でもやめろって言ってる訳でもないよ堅物。前はあんなにカチコチで張り詰め過ぎ、規則の塊だったのが、
今じゃでろんでろんになってるのを見るのも悪くないつうか、あたしとしては少しホッとしてるとこもあるんだ」
「何だそれは。何故お前に安心されないといけないんだ」
「同じ先任尉官だからさ。ま、それはいいとして」
「流すな。リベリアンだって、ルッキーニとよく……」
「見てない様で見てるねえ、堅物も」
「その嫌らしい笑みを止めろ。こっちだって見たくて見てる訳じゃない」
「まあ、お互いそう言う事にしておこうか」
「……」
「で、結婚はいつよ?」
「だからまだだって」
「しちゃいなよ」
「何でそうせかすんだ」
「その方がお互い区切りも付くんじゃないの?」
「私は、今のままでも十分だ。一緒に居るだけで良いんだ。それにエーリカと二人で話して決めてあるんだ。
『この戦いが終わったら、式を挙げよう』って。……どうしたリベリアン、顔が青いぞ?」
「あんた、……死ぬ気か?」
「はあ? 何故そうなる」
「『戦地で結婚願望を口にすると死に易い』って話、どっかで聞いた事有るぞ」
「最初に話を振って来たのは貴様だろリベリアン! なに縁起でもないことを!」
『シャーリーさん、バルクホルン大尉?』
「中佐?」
「ミーナ、どうした? 敵か?」
『いいえ。敵はいません。ただ、無線で二人の話が筒抜けなんだけど……』
「ありゃ」
「なっ! こ、これは……は、謀ったなリベリアン!」
「なんでそうなるかね~。ほら、見えて来たよ。あたし達の基地が」
「あ、ああ……。もうすぐだな」
「さあ、帰ってお互い、愛しのダーリンだかハニーだか、まあどっちでもいいけど、無事の再会を
喜び分かち合おうじゃないか……って何ため息ついてるのさ」
「いや。何でもない」
「あー、腹減ったなあ、喉渇いたな~」
「無線で聞こえるようにわざと言ってるだろ、リベリアン」
「ばれた?」
end