triforce
とりあえず落ち着いた一同を前に、美緒は説明を始めた。
「『三方一両損』と言うのは、扶桑に昔居た有名な……裁判官みたいな者が行ったもの、とされているらしい……
私も正確な由来は詳しく知らんのだが、まあとにかく扶桑の昔の美談と言うか、故事、諺みたいなものだ」
「ほほう」
「それでそれで?」
興味津々なシャーリーとルッキーニ。
「つまりだ。この『三方一両損』を、今回の宮藤に例えるとだな……」
美緒はそれぞれの芳佳を指さし、手招きした。
「まず、リーネと恋人つなぎして座っている宮藤をここに。そしてバルクホルンがお姫様だっこしている宮藤もこっちに。
そして私と手を握っている宮藤を集めて、と。これで皆が一人ずつ宮藤を損しているので『三方一両損』、と言う訳だ。
さて、問題はこの宮藤達をどうするかだが……」
何だか納得出来ない様子で見ているミーナを見、美緒は言った。
「やる」
「え!? 私に?」
驚くミーナ。
「何か違うぞっ!」
「ちょっと待った。おかしくないか?」
違和感を口に出す一同。
「おかしい? 何処が?」
首を捻る美緒。
「イヤ、例えバ、宮藤がいつの間にか三人に増えてるとことカ」
エイラのツッコミで、ぎょっとして芳佳を見る501の面々。
「うわ、また一人増えた!」
「一体全体どうなってるんですの?」
「宮藤、なんか変なものでも食ったか?」
「私に言われても困ります!」「どうして私増えちゃったんだろう」「私に出来る事って……」
三者三様の困り顔を見せる、三人の芳佳。
「私も困ったな。どうするか」
美緒も顎に手をやり、ふうと溜め息を付く。
「美緒、貴方の魔眼で……」
「……別にネウロイではないし、特に変わった所もないな」
アイパッチをめくり、三人をちらりと見た上でミーナに言う美緒。
「私も、分かりません……」
サーニャがレーダー魔導針を出して確認する。
「まあ、宮藤が三人に増えたと言う事はだ。つまり単純に戦力が三倍になったと言う事で良いではないか」
豪快に笑う美緒。
「美緒、貴方ねぇ。ストライカーの維持費も戦費も、宮藤さんに掛かる経費とかも全部三倍になるって事じゃないの?」
「第一、ミヤフジのストライカーは元々一機分だけじゃないの?」
比較的冷静なカールスラントの二人から指摘を受ける美緒。
「そこは使い回し……はできんか。でも治癒魔法も三倍、使い放題! 怪我をしてももう大丈夫だぞ」
「あのぉ、負傷前提で話するの止めて貰えませんかね」
シャーリーがぼそっと言う。
「おい、宮藤! 私を姉だと思って呼んでみてくれ。さあ!」
トゥルーデがどうしようか考えている芳佳達に声を掛けた。
「お姉ちゃん!」「姉上」「お姉さま?」
「よし、私はこっちの宮藤を貰おう」
お姉ちゃんと呼んだ芳佳の手を引いて部屋に戻ろうとするトゥルーデ。
「おぉい待て待てバルクホルン! 何処連れてく気だ!?」
「芳佳ちゃん!」
「リーネちゃん、どうしたの?」「リーネちゃん、私に何か用?」
「じゃあ、私はこの芳佳ちゃんを……」
「リーネもやめんか!」
「姉上、私どうすれば」
「うむ。困ったな宮藤。私もどうしたら良いか、とんと見当が……」
「美緒? 貴方も宮藤さんを抱っこしてるじゃないの。何やってるの」
「んっ?」
ミーナの方を見る美緒と芳佳。
「とりあえず宮藤さん? ちょっとこっちへ」
ミーナは芳佳達を一箇所に集める。芳佳が言った。
「分かりました、ミーナ中佐! 『三人寄れば文殊の知恵』って訳ですね?」「流石ミーナ中佐」「ミーナ中佐凄いですねえ」
「……それはどう言う意味かしら、宮藤さん?」
「ええと、確か……」「特に頭が良くなくても三人集まって相談すれば……」「何か良い結果が出る、って事ですよ」
「扶桑には面白い諺が多いナ~。宮藤も面白過ぎるけどナ」
サーニャの手を引いて、様子を眺めるエイラ。
「じゃあ、試しに、貴方達でどうすれば良いか相談してみたらどう?」
投げ遣りなミーナは芳佳達に言った。
「私は、リーネちゃんが良いな」「ええ? 私もリーネちゃんが良い」「私もリーネちゃんが良い」
「そ、そんな……芳佳ちゃん三人も居たら、私、身体が保たない」
聞くなり、ぼっと顔を赤らめて頬に手をやるリーネ。
「待てぇ! 私はどうなる? 宮藤、こう言う時こそ、私を姉だと思って頼れ! 遠慮は要らん、さあ」
「有り難う、お姉ちゃん!」「バルクホルンさん、ありがとうございます」「バルクホルンさん、優しいんですね」
「さあ、行こう宮藤! いやこの際だ、芳佳と呼んで良いか?」
「トゥルーデ、三人連れて何処行く気よ」
「えっ?」
「こら待て! 抜け駆けは許さんぞ!」
「だったら、さっきの少佐が言ってた、三方いちナントカで、いいんじゃない?」
「具体的にどうするんだ?」
「そう言われても……困ったな」
「サーニャちゃんって、肌白いよね~」「いつも黒い服着てるから、余計目立つよね」「美白だよね~」
「三人揃ってサーニャをそんな目でミンナ~!」
end