無題
今日、お姉ちゃんがエーリカさんと一緒にお見舞いに来てくれた。
でもなんだかおかしかったの。
いつもなら、お姉ちゃんの普段の生活やお友達の事をたくさん話してくれて、ときどきエーリカさんが突っ込みを入れてお姉ちゃんが怒ったりして、すごくおもしろいんだけど…
今日のお姉ちゃんはあんまり喋らなくて、そわそわしてた。
どうしたのかなぁって思ってたら…
「ちょっと私、トイレ行ってくるね~」
そう言ってエーリカさんが病室を出た途端、お姉ちゃんが顔を上げた。ベッドに手をついて、私にぐぐっと近寄った。
「く、クリス。ちょっと聞いてもいいか?」
「なあに?お姉ちゃん」
首を傾げると、お姉ちゃんはドアをちらっと見て、ひそひそ話で言った。
「あの…もし、もしだぞ。クリスが私と揃いの物を誰かに貰えるとしたら、どんな物だったら嬉しい?」
「お揃いのもの?」
突然の質問に目をぱちぱちさせたら、お姉ちゃんは慌てて続けた。
「あ、いや…その、知り合いに贈り物をする予定なんだが、そいつが双子なんだ。それで…」
あっ。
ぴーんときた。
確か、エーリカさんって双子だって言ってたっけ。
もしかして、誕生日とかなのかも。
「う~ん、そうだなぁ…」
私は気付かないフリをして、首を捻った。
「…ぬいぐるみがいいな。私とお姉ちゃん、今は一緒に暮らしてないから、離れててもお揃いなら寂しくないでしょ?」
半分、ほんとの思いが入っちゃったかな。
「そ、そうか…ぬいぐるみ……」
お姉ちゃんは顎に手を当ててブツブツと考え込み始めた。
う~ん…考えてみたら、ぬいぐるみとか選ぶのってあんまりお姉ちゃんは得意じゃないかも。
「…あ、そうだ!お姉ちゃん写真上手だから、写真立てもいいな。一緒に撮った写真飾るの」
そう言ったら、お姉ちゃんはバッと顔を上げた。
「…そうか、写真立て…それはいいかもしれないな」
お姉ちゃんの目がきらきらと輝く。
えへへ、お姉ちゃんってほんとにエーリカさんが好きなんだな。
「ただいま~。…トゥルーデ、何キラキラしてんの?」
「え、エーリカ!な、なんでもないぞ!」
エーリカさんが帰ってきて、お姉ちゃんは真っ赤になった。
「そろそろ帰らないとね」
「あ…あぁ。じゃあクリス、また来るからな」
「ばいば~いクリス」
「うん!ばいばいお姉ちゃん、エーリカさん」
出ていく二人に手を振る。
ドアを閉める時、お姉ちゃんが小さく「ありがとう」って呟いてた。
どういたしまして。
がんばれ、お姉ちゃん!