one room disco


テラスでくつろぐ、穏やかな午後のひととき。
お茶とお菓子が振舞われ、皆がのんびりと、かしましくお喋りする。
ここだけ見ると、まるで学校か同好の集まりに見えてしまう。
だが、彼女達は紛れも無い“天翔る戦乙女”であり、ブリタニア防空の要。
連合軍第501統合戦闘航空団「ストライクウィッチーズ」なのである。

「お黙りなさい豆狸!」
「芳佳ちゃんをいじめないで!」
「あわわ、リーネちゃん……」
「ウジャー またやってるよ」
「仲が良いって事だろ~ほっとけほっとけ~」
「サーニャ、ベリーのケーキあるゾ。食べヨウ」
「うん。エイラ、選んで」
「イチゴ? それともブルーベリー? それとも……」
「エイラの好きな方で」
「ううッ……ど、どれがいいカナ」
隊員達がめいめいのテーブルでお茶の時間を過ごす中、美緒はふと呟く。
「しかし、珍しく平和だな、今日は」
「そうね。ネウロイもこの前来たばかりだし……もっとも、いつ来るか最近は分からなくなってるけど」
「最近の予想はアテにならんからな。それどころか防空網のレーダーまで抜けてくる始末だ」
「油断は出来ないわね」
二人して考え込んでしまう美緒とミーナ。だが、美緒が笑って言った。
「すまん。午後の休憩なのに、堅苦しい話をしてしまったな」
「良いのよ。前に貴方も言っていたでしょう、『備えあれば』何とかって」
「休憩時間位は、少し頭を切り替えないとな。ネウロイが来てからでも別にいい」
「そうは言うけど」
「せっかくの美人が、もったいないぞミーナ」
笑う美緒。ミーナも美緒に押されたのか、苦笑いした。
「そう言えば、ウチのエースふたりはどうした?」
「あら、言われてみれば居ないわね。いつの間に……でも、お茶とお菓子は無いけど」
「まあ、良いか」
呆れ半分、諦め半分で呟く美緒。

そのエース二人はと言うと……お茶とお菓子を持って、トゥルーデの自室にこもっていた。
「はい、あーん」
「ん……うまい。よく出来てるな。さすがリーネだ」
「トゥルーデ、クリーム付いてるよ」
ぺろりと頬についたクリームを舐めるエーリカ。そのまま唇を這わせ、トゥルーデと口吻する。
今日のキスは、ケーキ味クリーム風味。
とろんとした瞳でいとしのひとを見るエーリカ。トゥルーデも目の前で一緒にケーキを食べ、
そして身体を密着させる愛する人を見、何とも言えぬ気分になる。
「トゥルーデ、あーんして」
「あーん」
ケーキの上に乗ったイチゴを、クリームをたっぷり付けてトゥルーデに食べさせる。
「今度は私に、して?」
「ほら」
「あーん」
同じ様に、クリームいっぱいのイチゴを頬張るエーリカ。
子供に近い雰囲気で、ケーキをべとべとと食べる。くっついたクリームは、気付いたところから
ぺろりと舐めて行く。最終的にはお互いの唇へと回帰する。
「ケーキ、もう無いよ」
エーリカが空になった皿を見せた。
「貰いに行くか?」
トゥルーデが聞く。
「こんな顔で?」
「……無理だな」
「また後で食べれば良いよ」
「そうだな」
「私は……」
「エーリカはこう言う、『トゥルーデ食べたい』って」
「よく分かるねトゥルーデ。エスパー?」
「お前の考えてる事はお見通しだ」
「私もだよ、トゥルーデ。同じ事考えてたっしょ」
「まあ、な」
「なら、もう決まってるよね」
「ああ」

お互いの指についたクリームを舐め合う。唇に指が触れ、舌が指の間を舐る。
あらかた綺麗になったところで、ふたりはお互いをゆるゆると抱き合い、キスを交わした。
目を閉じ、感覚を研ぎ澄ます。触れ合う部分の知覚を高め、気持ちも昂る。
舌を絡ませ、雫がつうと垂れるのも構わず、お互いを味わう。
顎の奥がじわりと疼く様な、狂おしい感覚に襲われる二人。もっと、キモチヨクナリタイ……そんな気持ちのスイッチの合図。
「エーリカ」
「トゥルーデ」
二人は目を開け、名を呼んだ。瞳は潤み、お互いの姿しか見えない。視野狭窄ならぬ、感情、感覚、情熱、情欲の集中。
お互い、服を半分脱ぎ……はだけた状態でベッドに横になる。所々で感じる直接の肌の温もりが、また心地良い。
「愛してる、エーリカ」
「私も愛してる、トゥルーデ」
エーリカに覆い被さるトゥルーデ。両腕一杯にトゥルーデを受け入れるエーリカ。
キスを繰り返し、頬についた残りのクリームも舐め、もう一度ゆっくりとお互いの唇の膨らみ、温かさを感じる。
そして絡み合う舌、吐息。混然となったのは口元だけでなく、捉えて離さないお互いの瞳、そして腰と脚も然り。
「トゥルーデ、もっと、して?」
「ああ。エーリカ」
ふうと息を吸い、エーリカの弱い部分に唇を這わし……片手がエーリカの腰、その奥へと伸びる。
甘い声と、浅く熱い吐息がトゥルーデの顔をかすめる。
興奮しているのはエーリカだけでなく、同じ事をされているトゥルーデも一緒。
嗚呼、と声を出し、エーリカの秘蜜の部分を自分のと密着させ、ゆっくりとリズムを打った。
「ああっ……トゥルーデ、トゥルーデぇ……」
「エーリカ、愛してる、だから、だから一緒に……」
リズムは次第に早まり、やがて欲情が全身で弾け、お互いびくっと身体が反応し、がくがくと痙攣にも似た震えに打ちのめされる。
そのままぎゅうっと抱き合い、荒い息のまま、何度もキスを交わし、余韻を全身で味わう。
「はあっ……もう一回、する?」
「何度でも、何度でも……」
言葉は続かなかった。エーリカにきゅっと抱きしめられ、濃ゆいキスをされた。
それだけでもう、くらくらと眩暈にも似た感覚に揺さぶられる。
「エーリカ」
「トゥルーデ」
お互い、再び名を呼んだ。そして、愛する行為に没頭した。

時計の短針が二目盛り程進んだだろうか。
毛布をふんわりと身体に掛け、抱き合ったまま微睡むトゥルーデとエーリカ。
トゥルーデは、ふと目覚めた。結局ふたりは何度も愛し合い、何度も頂点を極め、そして堕ちた。
でも、こう言う日も悪くない。特にお互い非番の日位は。
気を失っている様にも見えるエーリカの寝顔は思わずキスをしたくなる位に愛おしく……
そっと髪を触れる。
はらはらとストレートの金髪が手からこぼれる。
ふと気付く。トゥルーデの髪縛りも、いつの間にか解かれ、緩やかなストレートの髪がベッドに広がっている事も。
エーリカだなと思うも、特に悪い気はしなかった。
同じ様に、エーリカもトゥルーデの髪を玩んだに違いない。それはそれで嬉しく思えてしまう。
そっと、唇を重ねる。
「ん……トゥルーデ」
唇に触れた感覚に起こされたのか、エーリカが薄目を開けた。
「エーリカ」
優しく呼び掛けるトゥルーデ。そっと頬に触る。
「ねえトゥルーデ、愛してるから……もうちょっと寝かせて」
「何だその言い訳は」
トゥルーデは苦笑した。
「起きろ、エーリカ。もうすぐ夕食だ」
「トゥルーデ、持ってきて~」
「持ってきて、ここで食べるのか?」
「そそ。たまには良いじゃない」
「で、さっきみたいになるんじゃないのか?」
「トゥルーデも、そうしたいんじゃないの?」
「……」
少し考えた末、トゥルーデは顔を赤らめて頷いた。
「じゃあ、宜しく。簡単なの少しで良いから~」
「まったく。じゃあ少し待ってろ」
トゥルーデは起きると、乱れきった服を体裁だけ整え、髪を縛ろうと髪縛りを探す。
「あれ? 髪縛りがひとつ無い」
「たまにはひとつで十分だよ~」
「私は二つないとな」
「ひとつで十分~」
そう呟くエーリカの手には、髪縛りのリボンが有った。
「エーリカ、いつの間に」
「いってらっしゃ~い」
目を閉じたまま、にやけるエーリカ。
「全く、仕方ない」
トゥルーデはひとつの髪縛りできゅっと束ねると、エーリカの頬に軽くキスをして、部屋を出た。
エーリカは楽しくて仕方ない。食堂へ行くトゥルーデも同じ気持ちだ。
トゥルーデの部屋で繰り広げられる“第二ラウンド”と、その行く末が。
今夜は何だか面白い事になりそう。
二人のリズムに揺られたい。二人だけの時間、空間で。

end



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