無題


前略。
報告会でブリタニア本国へ行っておられる坂本さん、ミーナさん。
事件です。
 
エイラさんが、壊れました。
 

 
ネウロイの来襲もないだろうと言われている今日この頃。
私、宮藤芳佳は昼食の準備が出来たので、エイラさんとサーニャちゃんをの様子を見にエイラさんの部屋に行きました。
 
コンコン…

軽くノックをします。
普段ならここで、エイラさんが出てきてくれて「今からサーニャを起こすから先に行ってて」等と話すのですが……
今日はドアが開くやいなや、部屋に引きずり込まれました。
部屋の中には、ベッドに座り込むサーニャちゃんと、仁王立ちにて私を見下ろすエイラさんが……
それだけでも何事って感じだったんです。
けれど、事態はもっと大変でした。
というのも、エイラさんが……
 
「私はサーニャではない」

なんか、いきなり語り始めちゃいました。
 

 
私は部屋に引きずり込まれると、なんだかわからない内に床に置いてあったクッションの上に座らされました。
周囲を見回してみれば、なんだか物凄い上機嫌なサーニャちゃんがベッドの上で、クッションに顔を埋めつつ、エイラさんをチラチラと見ています。
そんな私達を見ているのかいないのか、エイラさんは空き箱の上に立つと、開口一番、先の発言です。

「生まれつきサーニャを好きな者。サーニャを愛す者。サーニャと共に生きる者。サーニャでありサーニャである者」
 
うわぁい。
なんだか目が本気なんですが、言ってる意味が分かりません。
……サーニャちゃん、なんでそんなに頬を染めてるんだろう…?
 
「サーニャのサーニャによるサーニャの為のサーニャのなサーニャであるんダ!」
 
そんな拳を握って言い切られましても……
あぁ、それでもなんだか口調だけはいつものエイラさんだ。
妙な安心感を得たのもつかの間。
そんな気持ちも、即座に吹き飛ばされる。
 
「そう、サーニャは私が愛する為にいる!」
「なんかすごい事言い切りませんでした!?」
 
え?あれ?
言い切りましたよ?
ヘタレってなんですか?
ヘタレじゃないから恥ずかしくないもん?
まだまだエイラさんのターンは続く。

「だからこそサーニャは日々違う発見を私に与え、そこに新たな愛が生まれる。
ヘタレは悪じゃない。ヘタレを見切りそこにある愛を見捨てる事が悪なんダ!」
 
あー…逆切れですか、そうですか。
つまりヤケですね?
ところでサーニャちゃんがベッドの上で悶絶しながら転がってるんですが……
……サーニャちゃん、鼻血…あ、はい。ティッシュね。うん。
 
「寡黙なサーニャはどうダ?アイコンタクトで会話するからもはや邪魔すら入らない。
いつも相思相愛な私達だから、サーニャのしたいことは私のしたいことでもある」
 
……甘やかせ過ぎじゃ…
悦に浸っているのかエイラさんの演説は止まらない。
 
「だが、私の部屋のなかでは違う。
愛を語り、愛を唄い、常にサーニャとにゃんにゃん出来る!
私の部屋の中だけが!私達の愛の巣であるんダ!」
 
両腕を大きく左右に広げた後、ガッと右手を前で握りしめるパフォーマンス付き。
小技効いてますね、エイラさん……
………え?
愛の巣…?
が、私の思考の停止がなんのその。
 
「毎晩部屋にサーニャが訪れるのは、エイラーニャとして私達は一つであるという証」
 
やめて!
芳佳の思考はもうオーバーロードよ!
 
「サーニャ、大好きだ!」
 
ぼひゅん、とサーニャちゃんの枕が真っ赤に染まった気がしたけれど、それ所じゃない。
 
「この部屋で、あの空で、ピアノの前で、いちゃいちゃする。その果てに未来がある!」
 
そしてエイラさんは右腕を荒々しく突き上げ、怒鳴る様に、叫ぶ様に、鼓舞する様に宣言した。
 
「オール・ハイル・エイラーニャァ!!!」

私はこの辺りから意識が途絶えた気がしました。


 
数時間後、私は医務室にて目を覚ましました。
なんでもエイラさんの部屋で何か「オール・ハイル・エイラーニャ!」と、エイラさんと二人で叫んでいたそうで。
横を見れば鼻にティッシュを詰めて、幸せそうに眠るサーニャちゃん。
そして、当のエイラさんは、と言うと……何も覚えていないらしく、いつものエイラさんらしく、疑問顔ながらサーニャちゃんを看病していたのであった。
 
ヘタレメーター。
それはエイラがエイラ足り得る為の必須パラメーター。
ヘタレないエイラはエイラに非ず。
されど、ヘタレ過ぎたエイラの末路とは……。
一定以上の過剰なヘタレを蓄積し過ぎてしまった時に起こる、ヘタレメーターのオーバーロード。
頑張れエイラ。
ヘタレろエイラ。
サーニャは今日も貧血だ。
 
 
おわーり


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