エース #01


 終戦を迎えて以降も、事後処理や各国の復興等でウィッチーズ隊の面々が原隊へ復帰するのは難しかった。結局、第501統合戦闘航空団が使用していた
基地は修復されて機能を取り戻し、今でも現役で活躍している。それどころか、ストライクウィッチーズそのものが未だ事実上解散していない。世界の
混乱は戦争が終わっても根強く、戦いが終結した今でも怪我の悪化や伝染病等で命を落とす人が少なくない。この混乱に乗じた犯罪の発生も多く、まだ
ウィッチーズ隊の活躍の場は残されていると言えた。『ネウロイが居なければ、今頃人間同士で戦争を始めていた』『さながら世界大戦だ』―――あの
言葉が現実にならないように。ストライクウィッチーズは今日も、訓練と出動の日々を繰り返していた。出動の内容こそ戦時中と異なってはいるが。
それでも復興支援や治安の大幅に悪化した運河の警備など、戦争がなければ必要なかったことであることに変わりはない。

 だが大きく変わった点もあった。軍隊のシステムそのものが一部変わったのだ。それは存在価値が実験的とすらいわれるウィッチーズ隊がまず真っ先に
導入させられ、徐々にそれも馴染みつつある。
 無線機の発展・普及に伴い、もっと高性能なものを各軍隊にも配備しようという動きが世界中で活性化しつつある。その無線機の性能を試すために、
ウィッチーズ隊が先だって実験を行っていた。何しろ通常飛行時でさえ耳は風切り音であまり聞こえないのだ、実験には持って来いの環境である。
また無線による会話を円滑にするため、それぞれには『コールサイン』――無線で呼び合う名前がつけられた。或いは、戦場(『実名ではない別の名で
呼び合う、日常とはまったく違う場所』)と日常生活(『名前で呼び合える平和な時間』)とを精神的に明確に区別するという意味もある。形式が変わることで、
精神を入れ替え実戦に真剣に取り組めるようにという一つの配慮だ。またコールサインとは別に、同じ部隊内で呼び合う愛称として『TACネーム』と呼ばれる
ものも出現した。
 コールサインは主に所属部隊と本人の位を示すものである。隊長であれば部隊名とともに『****1』と、「****部隊の一番機である」ことを明確に示している。
それと違い、TACネームは本人の希望や特徴などからつけられるものだ。部隊内等で呼びやすい名前で呼び合うために使用される。日常と大きく区別される
戦場において、常に気が張って気疲れしてしまわないようにとのこれも配慮の一つである。緊張した実戦の中にも、多少肩の力を抜ける余地は必要なのだ。
 そうした無線とその関連が発達し、技術は徐々に新しい時代を迎えようとしている。それも、ウィッチーズ隊の実験による成果が上がっているからこその
動きであった。



「こちらチャーリー3、訓練終了……帰投します」
『了解、気をつけてね』
「はーい……あ゙ー、づかれだ……」

 訓練を欠かすことのできない日常。教官による直接指導を受ける『訓練生』からようやく卒業した芳佳は、それでも甘んじることなく日々訓練に励んでいた。
これまでと違って遠くで見守るだけになった美緒も、彼女の様子に半分満足しているといったところだ。残り半分は無論、数多く転がる課題点についての指摘だ。
但し美緒の手を離れた以上、芳佳が望んで訊ねにいかない限りは美緒も特に自分から言うことはないのだが。

 ……それより何より。ストライクウィッチーズ隊を一変させたとある一人の隊員の訓練に、最近は美緒も芳佳も出ずっぱりだった。芳佳は芳佳で自分の訓練が
あるのだが、それが終わると今度は教官として教える立場に立つ。美緒は美緒でようやく訓練生の面倒見から解放されたかと思えば、また訓練である。どちらも
忙しいのに変わりはないが、それでも悪いとは思わなかった。

「遅い! もっと早く走れ!」
「は、はいーっ!」
「……少佐、厳しすぎな
「お前は黙っていろ」
「はーい……」


 ちなみに今日は芳佳は教官から外れている。たまには休みも必要だ、とはゲルトルートの言葉。その代わりとして今日はゲルトルートが教官に入っているの
だが、如何せん過保護さが目に余る。芳佳も美緒も、最近のゲルトルートには頭を抱えることがしばしば。
 ……まあ、訓練生の立場を考えれば仕方ないのかもしれないが。

「クリス、がんばれ! あと二往復だ!」
「は、はいッ!」
「……バルクホルン、お前本当に訓練させるつもりあるのか?」
「あ、当たり前だ! 強くなってもらわなくては困るッ!」
「ハハハ、そうだな。もしお前からあの子を取り上げたら壊れそうだ」
「こ、壊れるって……」

 そう、何がどう間違ってどんな歯車がどんな形で組み合わさってこうなったのかはわからない。が、今ここで美緒の訓練を受けているのはゲルトルートの
妹、クリスティアーネだった。ある日突然、「坂本少佐に引っ張ってこられた」と銃を握って緊急出動時の空に乱入してきたのだ。そのときの彼女の態度は
当時基地全体を凍らせたほどである。近くに居た者は後にこう語る、『クリスちゃんに手を出したら間違いなく命がない(エーリカ・ハルトマン中尉より)』と。
 ともあれそうしてストライクウィッチーズ隊の一員になったクリスだったが、芳佳同様ほとんど訓練なし(今回は僅かばかり、美緒が最低限防御の仕方ぐらい
教えたが)で突然実戦に乱入してきたのだ。体力はほとんどないに等しく、年齢的に幼いことから芳佳よりも酷かった。それを気遣ってゲルトルートは
いつも『もうちょっと優しくしてやってくれ』とミーナにも美緒にも芳佳にも泣きついているが、本人たちはまるで相手にしていない。芳佳も地味にスパルタ
なので、最近ゲルトルートから敵視されているのが日ごろの悩みだ。

「お、クリスちゃんだ、がんばれー。ただいま帰りましたー」
「おぉ、宮藤、訓練ご苦労だったな。どうだ、成果は上がったか?」
「うーん、いまいちですね……何発か外しちゃいました」
「まあ焦らずじっくりやることだな。射撃練習は詰め込んで上手くなるモノでもない、私も二丁同時に狙いをつけるのには苦労したものだ」

 苦笑気味に話すゲルトルートだが、芳佳には到底信じられなかった。あんなクソがつくほど重たいマシンガンを二丁も構えて、照準器を使わずに正確に
狙えるのだ。才能がなければそうそう簡単にできるものではない、と芳佳は二丁扱うことを早々に諦めている。
 クリスの様子が多少気になったが、まあ美緒がついていればまず問題はない。……いつかゲルトルートも、厳しく訓練してもらえるよう説得しなくては。
内心ため息をつきながら、芳佳はハンガーへ向かった。明日からは久々に休みだ、楽しみなものである。

「それじゃ、お先にー」
「ああ、ご苦労さん」
「ゆっくり休めよ」
「はぁ、はぁ……お、お疲れ様ですぅー」
「お、クリス終わったか! 疲れただろう、ほらタオ
「よし次だ!」
「少佐ぁぁ……」



 ……芳佳が頭を抱えながらハンガーに入っていったのは言うまでもない。

 - - - - -

 最近の芳佳の日課は、訓練を終えた後に欠かさず訓練結果の自分用レポートを作成することである。前から訓練記録の提出は規則としてあったのだが、
それとは別に自分で思ったことや感じたことを一つ一つ書き出している。こうすることで自分で把握している欠点を改めて確認し、それを直すよう
意識することで悪いところを克服していく。芳佳はもともと運動が得意ではないため、体を動かす実習に加えて理論的な考えを付け加えないと直感では
動けないのだ。ただ一つ、特殊な戦闘機動においては見よう見まねで案外できてしまう。これは彼女の運動面における数少ない特技だった。まあ、実戦で
確実に活かせるレベルに昇華するにはやはり訓練が必要なのだが。
 これを始めてから芳佳の成長は目覚しいものとなっている。訓練での撃墜スコアは一気に伸び、階級も昇進。徐々にエースとしての頭角を現し始め、
長い教導を経てきた美緒からは『お前はこの勢いで行けば確実にエースになれる』と賞賛されている。さすがにそれは気恥ずかしいが、芳佳自身としても
目標はゲルトルート級のトップエースだ。そのためには、こんなところで油を売っている暇はない。今はとにかく、自分にできることを可能な限りやって
成果を出すのみだ。当然、休暇を定期的にとって体を休ませることも「自分にできること」である。常に全力ではいつか倒れてしまうのが人間だ。
その為にも、明日はしっかり休まなくてはいけない。

「何しようかなぁ……久しぶりにストライカーの整備もいいかも」

 ……ストライクウィッチーズ隊にはもう一つ、終戦を迎えて大きく変わった点がある。ミーナがウィッチーズ隊以外の人との交流を容認したのだ。
戦争が終わり、身近な人を失う危険が大幅に減ったことから許可したのだという。それに、元々は『大事なものを失わない努力』として『大事なものを
作らない』という道を選んだ。だがそれはあまりに悲しいことで、いつか孤立していってしまうのが目に見えていた。芳佳の進言や美緒のアドバイス等から、
ミーナがようやく考えを改め始めたのは終戦を迎えて一月経ってからだ。
 そのお陰で整備班の人たちとの交流が許可された芳佳は、規則が撤回された初日から以前やったような菓子の差し入れを持っていった。最初こそ整備の
人たちも困惑していたものの、今では慣れっこだ。持っていくと大抵、蟻が砂糖に群がるように押し寄せてくる。それを抑えてまず手袋を外させるのが、
ハンガーにモノを持っていったときの最初の芳佳の仕事だ。騒がしくて大変だが、ああいった騒々しさは芳佳の好きな部類である。
 そして交流を深めるうち、『エースたるもの自身の得物は自身で整備できなくては』という整備班長やゲルトルートの言葉を受けて整備を教わり始めた。
最初のうちこそ手や服が汚れると言って避けていたものの、ゲルトルートから作業着を貰ってからは諦めて顔を出すようにした。それ以来暇を見ては
ハンガーを訪れるようになり、今ではオーバーホールも自分でできるほどになった。と言っても、普段の整備は整備班の人に任せているが。

「んー……でもそれじゃ一日つぶせないなぁ」

 芳佳は休暇だが、部隊そのもののスケジュールは変わらない。つまり朝食の時間やら何やらは変わらないわけで、ということは朝起きるのもいつも
通りの時間である。朝食を終えてからは暇になるので、それから整備に時間を費やしたとしても――まあ、まず午前中で終わってしまう。午後を埋める
予定が無いのだ。

「なんかいいの無いかなぁ」

 そうぼやいた直後、部屋のドアがノックされる。気の無い返事を返すと、小気味いい音を立てて開くドアの向こう側に半分あきれた顔のエースが立っていた。

「お前なぁ……折角来た客に対してやる気が無いぞ」
「お客さんなんて私の部屋に来ませんもん。来るのって言ったら皆同じ仲間だけですから」
「そういう問題でもないだろうに」
「だってお客さん以外の人が用事あって来るんですから、問題ないじゃないですか」

 胸を張って、『面倒臭さの正しさ』を立証してみせる芳佳。対してゲルトルートは疲れたのか、もういいやと手をひらひらと振りながら勝手に芳佳の
ベッドに腰掛けた。大抵ゲルトルートが部屋に来るとこんなものなので、芳佳もまったく気にしていない。ちなみにゲルトルートの中ではすでに芳佳は
良い妹分から良い妹に昇格されている。……これにクリスが絡んでくると話は別だが。

「それで、どうなさったんですか?」
「あぁ、明日なんだがな」

 実は明日はゲルトルートとエーリカも休みらしい。それで折り入って、エーリカの部屋の掃除を手伝ってほしいと言うお願いだ。……こう見えて彼女も
随分苦労しているんだな、と芳佳は胸中でゲルトルートに向けて手を合わせた。できるだけそれを表面上に出さないようにしつつ、しかし表情は思いっきり
『可哀想な人を見る目』になっていた。

「あぁ……心中お察しします」
「……まったく、なぜあいつはあんなに部屋が汚れるんだ……大体、部屋の片づけがなぜ私の仕事になってるのかが分からん」
「あ、あはは……まあ、実際の仕事に影響が出てなければ―――
「実際に私の仕事にエーリカの部屋の掃除が入っているから嘆いてるんだ」

 ……芳佳の中でゲルトルートの哀れみ度がアップした。

 - - - - -

 それからしばらく談笑していたが、ひとまず明日の朝からエーリカの部屋掃除に行くことは確定した。丁度半日程度で終わるだろうし、残り半日を
ストライカーユニットの整備でつぶせば一日きれいに消費できる。夜には毎晩夜間飛行訓練を自主的に行っているので、それだけやって一日締めれば
有意義な休暇が過ごせそうである。

「いやー、丁度よかったですよー。明日ストライカーユニットの整備しようっていうのは決めたんですけど、半日で十分終わっちゃうんで残りどうしようかと」
「それは良かった。あいつの部屋も、半日あれば十分終わるだろう。もし良かったらその後模擬戦でもやってみないか? 整備ついでに」
「あー……勝てる気がしないんで遠慮しておきます。それに、もしやるとしたら休暇は避けたいです」
「はは、正論だな」

 そう言われるのはそれはそれでシャクだが、相手がエースなのだから自分が言ったとおり勝ち目が無い。芳佳は内心自分にため息をつきながら、いつか
ゲルトルートにも勝てるようなエースになろうと改めて思った。

 その後は事務仕事やら何やらで一日潰れた。今日の夕食はリネット製で、いつも通り美味だった。夜の夜間飛行訓練も特に異常なく順調に進んだが、
最近力を入れているタイムアタックはここのところ記録が出ていない。そろそろ最初の技術的な壁にぶつかってきたのもそうだが、やはりストライカー
ユニットもオーバーホールなしでの連続稼動の限界に来ている。この休みに直してしまおうと思いつつ、風呂でゆっくりと湯に癒された。
 ……風呂の中で寝てしまい、気がついたらリネットが隣に浸かっていたのはまた別の話。

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 翌朝。




「……起きて……来ないな」

 atエーリカの私室前。起きてこないのはエーリカ・ハルトマン、及び宮藤芳佳。エーリカはいつものことながら、芳佳は珍しい。まあ、たまに寝坊は
してきていたが。それにしてもまさか今日がその『たまに』とは、なかなか自分もついていない。そんなことを考えながらゲルトルートは止む無く
まず助っ人を起こしに行った。エーリカなんて、片付けついでに起こせばいいのだ。扱いが酷いが、これでも付き合いはだいぶ長くなる。気心も知れれば
こんなものだ。

 かくして無事にMIYAFUJIと書かれた部屋の前に到着したゲルトルートは、特にためらうことなく部屋をノックした。ノックして三秒、状況を改めて
把握して遠慮も無くドアを開ける。……ベッドの上で掛け布団が可哀想なことになっており、ついでにちょこんと芳佳が居た。まったく、この女はたまに
寝相が悪いから困る。ちなみに寝相が悪いときは大抵寝坊するか、ベッドから落ちて顔を真っ赤にしてくる。普通ベッドから落ちても、顔全体が真っ赤に
なることはそうそう無いと思うのだが。まああのおかしな宮藤のことだ、どうせろくでもないことを考えているのだろう。二秒でそう結論付け、とりあえず
芳佳の掛け布団を取り上げた。

「んうぅ……」
「起きろ、宮藤。起床だ」
「あとちょっとだけ……あと四十分……」
「どっかで聞いたような台詞に近いがそんなちょっとがあるか!」

 まずい、これはあの展開に限りなく近い。まさかとは思いつつ、ゲルトルートは警戒しながら芳佳との戦いに備えた。

「あと二十分……」
「いいから起きろッ!」
「うー……」
「いいか、軍人たるもの、一に規律、二に規律、三に規律で、四から十まですべて規律、だ!」
「……十一は?」
「……宮藤。今日は何の日だ?」
「お休みの日ー」
「だーっ、お前はハルトマンか!! 今日はハルトマンの部屋の掃除だ、昨日お前も承諾していただろうが!」
「んぅー……じゃあお昼までー」
「お前はどこまでハルトマンなんだっ!! いいから起、きッ、ろッッ!!」

 かつて見たそのままの光景が目の前で起こっているが、とりあえず胸倉をつかんで無理やり起こしてみせる。芳佳は随分と不服そうにしていたが、
知ったことか。ゲルトルートはとりあえず二度寝はしなさそうな様子に胸をなでおろした。

「むー」
「朝食の時間だ、さっさと着替えて降りて来い!」
「はーい……あれ?」
「……どうし―――――わ、私は先に行くぞッ!」
「あ、ま、待ってくださッ――わわっ、あ、あっ、ああああああっっ!!!」

 嫌なことが思い出されてすぐ逃げようと思った。……のだが、それを追いかけようとした芳佳が、先ほどゲルトルートが床に投げ捨てた掛け布団に
足を取られて盛大に転んだ。さすがにそれを放置するわけにも行かず恐る恐る部屋を覗き込むと、頭から床に突っ込んでいる女の子が転がっていた。

「……何をやってるんだ、まったく」
「いたた……あ、それよりっ」

 ……ひしひしと嫌な予感がするが、今の状況がすでに半分嫌な状況だ。もう諦めたゲルトルートは、いくつか思い浮かんだ予想がどれも良い方向に
外れてくれることを願いつつ芳佳に訊ね返した。この時点ですでにゲルトルートの運命は決まったと言える。

「……で、どうした」
「あ、あのー」
「なんだ、いいからはっきり言え」
「……昨日、インナー全部洗濯しちゃいました」
「つまり現状、服が上着しかないと」
「あ、あはははは……」

 ……ぴきぴきぴき。そんな音が、どこからか聞こえてきた。それが自分のものだと気づいたときには、すでに口が動いていた。

「ばか者ーーーっ!!! 何が『あはははは』だ、お前はなぜそうハルトマンの悪いところばかり見習うんだッ!!」
「……ごめんなさい」

 苦笑気味のごめんなさいに謝罪の意が感じられず、ゲルトルートは頭を抱えたくなった。とりあえず朝っぱらに寝巻きで外に出てもらっては困るので、
止む無く上着と下着だけ着てもらうことにした。ズボンはまあ、自分のを貸せばいいか。しばらく自分が下半身を曝け出すことになるが、まあこんなところに
男連中が来ることなどそうそう無い。女同士で見られる分には別に問題も無いので、それでよしとする。

「まったく……さっさと服を着ろ。仕方ないからズボンは私のを貸してやる」
「えええぇぇぇぇ!? まま、待ってくださいぃー!」
「気にするなと前も言っただろうに……構わんから履け」
「ええ、遠慮しますぅぅー!!」
「何、見られて減るもんでもなかろう」

 とりあえずさっさと押し付けないと芳佳が上着で必死に隠しながら廊下を歩く羽目になる。自分はあいにく、同性の者に対して隠すほどの羞恥心は
持ち合わせていない。そりゃあ、異性にはそう簡単には見させないが。
 ともあれ、脱ぐだけ脱いで部屋に放り投げる。そのまま『さっさと履け、履くまでそこで待っててやる』と言い残して部屋を出た。遠慮深い芳佳なら、
下半身丸見えの人を廊下に立たせて待たせるなんてしないはずだ。そうすれば後はこちらのもの、さっさと洗濯室まで取りに行って着替えればいいまでだ。
どうせ昨日洗濯したのなら一晩でカラカラに乾いているだろう、この夜の間は快晴だった上にあそこには乾燥用に暖もある。
 しばらくもしないうちにドアが開き、恐る恐る出てくる芳佳の姿がそこにあった。いじらしくて可愛らしくはあったが、とりあえずもうそろそろ
朝食の時間になるので腕を引っ張って引きずり出した。

「もうすぐ朝食だ、時間が無い。さっさと行くぞ」
「ええ、で、でもバルクホルンさんは……」
「だから見られて減るモンでもないだろう? それにこんなところに男連中など来はしない」
「え、でも今はもうウィッチーズ隊との交流はどの部隊も許可されてますけど」






 ……そうだった。





「い、急ぐぞ宮藤!」
「うぇえええ!? わ、忘れてたんですかああぁぁあぁ!!??」
「わ、私に外の連中でつるむやつなんてほとんど居ないんだ! しし、仕方ないだろうが!!」


 あぁ、横から宮藤のため息が聞こえる。

 そんなことをぼんやりと思いながら、ゲルトルートは全力で洗濯室まで向かった。

 - - - - -

「すみません、ありがとうございました……」
「全く……全部洗濯に出すなんて、何をどうすればそうなるんだ」
「いや、あの格好のまま取りに行けばいいかなーなんて……あはは……」

 就業時間とかそういう考え方はコイツには無いのだろうか。ゲルトルートは何故こんなやつが訓練成績を上げられるのか甚だ疑問だったが、もう
考えるのに疲れたので何も考えないことにした。朝起きて一時間程度で既に疲れているあたり、今日はロクなことがなさそうである。
 ともあれ無事着替えを終えた二人は、時間が時間なのでさっさとエーリカを引っ張って食堂に行くことにした。一人よりは二人で行ったほうがきっと
起こしやすいはずだ、そのままエーリカの部屋へ向かう。





「で、お前は相変わらず起きないんだな」
「だって眠いんだもん……」
「阿呆か! いいから起きろ、もう食事の時間を五分も超過しているぞ!」
「五分なんてたいしたこと無いじゃんかー……」
「いや、時間厳守ですよ? まあ、私がいえたことじゃないですけど」
「とにかく起・き・ろッ!!」

 無理矢理、掛け布団代わりのシャツを剥ぎ取る。今日はさすがにちゃんと下着を着けていたようでほっと一安心である。このまま変にゴネられる前に、
さっさと引っ張っていくのが賢明だ。無理矢理服を着せてしまい、引きずっていくことにした。

「宮藤、手伝ってくれ」
「はいはーい」
「なにすんだよー!? ちょ、ちょっと!? こ、この変態ー!」
「お前は放っておいても着替えないからな」
「だったらそう言ってからやれよー?!」
「言ったら言うこと聞かないじゃないですかっ」
「電撃戦だ」

 かくしてエーリカは引きずられるようにして食堂に行ったのだった。
 後に「夫婦の共同作業」とエーリカから馬鹿にされて弄ばれるゲルトルートの姿を見かけるようになるのはまた別の話である。

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 今朝の朝食はシャーリー製だった。サンドウィッチ数個とコーヒーで、見た目さほど料理できそうでもないが美味だった。リベリアンに対する意識を
改める必要がありそうだ、と内心思ったゲルトルートであった。

 ともあれ朝食を終えた三人は、エーリカの部屋へ向かう。芳佳が『部屋掃除が仕事に回されているなら、なにも休暇にやる必要はないんじゃ』と
ゲルトルートの身を案じていたが、仕事はそれだけではないのだ。しかもあの散らかり具合で言うと、確実に半日はかかる。それを仕事をしながらなんて、
到底無理だった。
 そして扉をあけて再び絶句。この部屋の恐ろしいところは、下手に足を踏み入れると瓶を踏んづけて転んだり柏葉騎士鉄十字章を踏んづけて壊したり
トロフィーに足の小指をぶつけたり床に染み込んだ酒で足がべとべとになったりしそうなところである。

「って最悪だな、部屋とは思えん」
「ま、まぁ、だから片付けに来た訳で……」
「二人ならすぐ終わるでしょ? ほらさっさとやっちゃってー」
「……ハルトマン、そんなに死に急ぐ必要はないんだぞ? あ?」
「スミマセンデシタワタシガワルカッタデスユルシテクダサイ」

 部屋を見ただけでげんなりなゲルトルートだったが、芳佳を連れてきた以上はやるしかない。気合をひとつ入れると、もってきたゴミ袋を広げて目に付いた
ごみを片っ端から捨て始めた。エーリカがそれは捨てるなそれはこっちだとギャアギャア騒いでいるが、彼女の言うことを全部聞いていたら片付きなどしない。
とにかくまずは部屋をすっきりさせることが先決だ。何か必要なものがあれば、後でごみを漁ってもらえばいい。

「そういうわけだ。宮藤、手加減はいらんぞ」
「わかりました、とにかく全部捨てればいいんですね」
「よく分かっているじゃないか」
「コラー! なんでもかんでも捨てるなーっ! あ、それは―――」
「構わん、捨てろ」
「はーい」
「ちょっと、それ訓練報告書なんだけど!」
「そんなもの下においておくな阿呆がああ!!! さっさと提出しろバカ!」
「……ゴミみたいになってるから出せませんけどね。書き直しですね、これじゃ」
「だからとっておいたんじゃんかー!」
「お前は何でも捨てないだろう」
「とっておく……っていうか、さっさと書き直して早く出しましょうよ。これっていつの……あれ、明日で一週間じゃないですか」
「だから今日やろうと思ったらトゥルーデが部屋の片付けするって言い出すし」

 ちなみに報告書の提出期限は一週間だ。

「お前……そんなに撃たれたいか」
「グーで勘弁してください」
「了解」

 重量物が思い切り何かに激突する音が部屋に轟き、エーリカの頭蓋骨が嫌な音を響かせる。そのままエーリカは死んだように服の山に倒れこみ、しかし
ゲルトルートは気にかかった風もなくゴミ捨てを再開した。

「え……?」
「安心しろ、エーリカは私のパンチじゃ殺せない」
「そ、そんなもんなんですか?」
「それが世の常だ」

 自分で言っててよく分からない。が、とにかくさっさと終わらせなくてはこの量じゃ終わりが見えない。何しろ床がほとんど見えないのだ。しかもただ
散らかって見えないだけではない、服やゴミが積もってこの部屋だけ積雪状態なのだ。足を踏み入れるとまるでクッションがあるかのようにやわらかい。
歩き心地はある種最高ではあるが、それが服やゴミじゃあ気分も悪い。はてさて、この服の中で酒が染み込んだものは果たしていくつあるだろうか。そして
きちんと洗濯して畳んでおけば、いったい何日間下着姿で行動しなくて済むのだろうか。

「……萎えた」
「は、早すぎですよ!?」
「トゥルーデー、しっかりしてよー」
「貴様のせいだ!」

 ……しかも当の本人は本気で何もしてないし。

 一人だけ休暇気分を満喫しているのがいる辺り納得がいかないが、もういちいち相手にしてたらやってられない。時間的にもそうだが、なにより気が
持たない。仕方ないのでもう相手にしないことにした。

 - - - - -

「んーと、これがこっちで……あれ?」
「どうした?」
「これ何ですか?」
「あぁ、それ柏葉剣付騎士鉄十字勲章の台座」
「なんでそんなものが床に転がってるんですか……下手したら壊れますよ」
「そんなもんだ。私はもう慣れた。見てみろ、コイツ今まで私と並んで300機近く撃墜しているはずなのにどこにも勲章が見当たらない」
「どっかいった」
「ええええええぇぇぇぇぇ……」

 恐るべしエーリカ・ハルトマン。芳佳は改めてこのエースの恐ろしさを思い知った。

 片付けは今のところおおむね順調である。エーリカは近くにあるものを片付けているように見えてただ弄んでいるだけだが、邪魔をしないだけマシだ。
もうそろそろ第一層目が片付き、第二層目に行こうかというところだ。……四~五層に積み重なっているあたりが恐ろしいが。
 大体、エーリカが服を着ているところなどほとんど見たことがない。なのになぜ、こんなに服が積もっていくのかが理解できない。まあ片付けていない分
何がどこにあるのか分からず、探すと結果こうなってしまうのかもしれないが。それでもせめて勲章はとっておけ、と言いたい。というかこんな奴に勲章を
渡すぐらいなら芳佳に渡したいぐらいである。下手に言うと芳佳が調子に乗るため口が裂けても言わないが。

 しかしまあ、こうして片付けながら思う。

 ――――あぁ、なんて平和なんだろう、と。

 馬鹿騒ぎができるのも、『敵』が存在しない故のこと。撃墜数がどうのこうのというのが無くなってしまったのは寂しい思いもあるが、それで人が
死なないなら万々歳だ。
 正直、他人の部屋の片付け自体は面倒くさくてとてもやっていられない。それを自分からやろうと思い至ったのは戦が終わったことで、自分自身
肩の力が抜けたのだろう。緊急出撃なんて、そうそう来るものではなくなったのだ。あったとしても月に一~二回程度だろうか。それも戦争の傷跡、治安が
ある程度快方向で安定すればなくなるはず。そうなってしまうとこの第501統合戦闘航空団も解散になってしまうので、それはすこし寂しい思いも
あるのだが。
 ま、いずれにしろコイツとは同じだ。宮藤や少佐やリネットや、別れるに惜しい人はたくさんいるが……死ぬわけでもなし、いつかまた会えるだろう。
クリスだってそうだった。
 ……そこまで考えて、クリスのことを思い出す。いきなり空戦の最中に飛び込んできたときは度肝を抜かれ、本当に失ってしまうのではないかという
恐怖で理性が保てなかった。お陰で帰還してからはひどいものだった、と自分で自分を叱り付ける。あれはなんだ、と。
 それでも、これ以上何かを失うのは嫌だった。クリスが寝込んで目を覚まさなかったあの時間の苦しさは、もう二度と来なくていい。あんなもの、二度と
体験したくない。そのためなら、戦争がなくなった故のストライクウィッチーズ解散も悪くはないと思えた。

「どうしたのトゥルーデ、なんか嬉しそうだよ」
「いや、ちょっと考え事をな」
「何考えてたんですか?」
「野暮なことだ」
「へー、そーなんだー」

 ……いまいち、エーリカが納得していない様子だった。別に隠したいわけでもないが、改まって言うほどの内容でもない。正直どうでもよかったのだが、
後々変なネタにされるとかなり面倒なことになるので誤解は招かないようにしておく。

「……平和だなと思ってな。極稀にならこんなのも悪くないかと思った」
「まあ……そうですね」
「へー、じゃあまたやってくれる?」
「阿呆か。単に戦のない日常が良いと言っているだけだ、他人の部屋の掃除なんて年に一回の大掃除で十分だ」

 全く、コイツはいつまでたっても口が減らない。多分、カールスラントに復帰しても変わらんだろう。……それはえらく魅力的で、楽しそうに思えた。
どこか頭がおかしくなったかと思ったが、こうやって騒げるのが幸せなのは確かだ。そう思ったとき、一瞬ガラでもないとその考えを振り捨てようとした。
だが逆にそれが自分のキャラではない気がして、やっぱりやめた。……こんな葛藤をするのは、あいつのお陰か。ちらりと目線だけ、横で作業を続ける
妹分に目をやった。

 芳佳が入ってくるまでは誰に対しても厳しくて、だからシャーロットやルッキーニなんかは正直大嫌いだった。それでよくカタブツだのなんだのと
言われていたが、これ以上身近な人を失うのは耐えられなかったのだ。何故戦乱の中にあって、周りが騒いでいられるのかが心底不思議でたまらなかった。
 だが芳佳が入ってきて、それが大きく変わった。敵に初めて撃墜されたときのあの屈辱と痛み、そしてなにより味方に助けてもらえたときの暖かさ。
それまでずっと周りの連中など視野にいれず突っぱねてきたゲルトルートにとって、誰かが自分のために助けに来てくれるなんて思っても見なかった。
そもそも、自分は他人に嫌われていると思っていた。そう思われるような行動ばかりしてきたのだ。何に対しても規律だ軍規だ、そればかり。最近は随分
マシになった方である。かつては自分の顔に笑いなんてなかった。
 ……あの日認められたのは、芳佳だけではなかった。確かに芳佳がこの基地で認められたのは事実だが、ゲルトルートもまた味方に認められた。あの時の
芳佳が言ってくれた『仲間じゃないですか』の一言は、今まで生きてきた記憶の中で最も心を揺さぶられた台詞だ。

 それからはゲルトルートも笑うようになった。仲間と言ってくれる人が、近くにいてくれるのだ。何も大事なものを失いたくないのは自分だけではない
ことに、あの日ようやく気づいた。そしてそれを失わないために、皆が皆できることをやっているのだと。シャーロットにしても、あれだけのスピードは
他の誰にも出せやしない。彼女が音速を超えたあの日、あのネウロイを撃墜できる可能性があったのは彼女だけだったのは疑う余地のないことだ。それに
ストライカーユニットの開発を促進させるという意味では、もっと広く大きな意味合いを持っている。自分自身、口では『軍規を無視して趣味に走って
いる』とか言っているがそうは思っていない。あれも、半分は冗談のつもりだ。
 そうやって冗談を言えるのは、とても楽しいことで。今まで自分が経験したことのないもので、何か心が満たされていくような気がした。クリスと
笑い合っていたあの頃がまたやってきたようで、むやみに毎日が明るい。そこにクリスが目を覚ましたと一報入れば、自然と笑みも増すものである。

 自分自身が『失われたくないもの』であることに気づいて、誰かに守られていることを知って。だからこそ、終戦を迎えたこの今の日常が幸せで堪らない。
皆に守られて、皆を守って。一人も欠くことなく、戦いのない平和な日常を得たのだ。仲間の絆を見たから、今こうして仲間同士で笑い合える。

「……トゥルーデ、ホントに考えてんのそんな上等なコトかぁ?」
「は? いきなりなんだ」
「だってすんごいニヤけてるんだもん。宮藤のことでもかんがえてんじゃないのかよー」
「へ? 私ですか?」

 ……前言撤回。やっぱコイツはダメだ。

 ゲルトルートはため息をつきながら、もう考えることはやめようと掃除に集中した。でないと考えが顔に出て、エーリカにイジられてしまう。
 正直なところ、エーリカはこういう悪戯をするときは限度をかなり正確に読み取れるので困らない。今だって冗談で通じているからいいものの、これが
長く続けば嫌気が差して怒気が蓄積してしまうだろう。それを、エーリカは適度なところでやめてフォローするのだ。自分で苛めているくせに、自分で
慰めている。そのアンバランスさが丁度よくて、だから何度でも許してしまう。彼女の不思議な魅力だった。
 だからといって、せっかく片付けに来てやっているのにイジられる筋合いはないのだが。

「……」
「……?」
「ハルトマンさん、さっきからじーっとバルクホルンさんのこと見てますけどどうしたんですか?」
「いやー、変なこと考えてそうだなーって」
「なんでそうなる!」
「だってずーっと黙々と手動かしてるんだもん。一言もしゃべらずに」
「別に普通だろう!」
「いーや、普通じゃないね。なにか邪なこと考えてるに違いないっ」
「そ、そうなんですか?」
「宮藤、お前……」

 あぁ、疲れる。

 コイツら、本気で疲れる。

 ……ま、いっか。



 そう思ってしまうあたり、自分は相当お人よしなのかもしれない。そんなことをぼんやりと考えながら、しばらく片付けのときは続いた。

 - - - - -

「で?」
「んー?」
「なんでまだ終わらんのだ!」
「そりゃ、トゥルーデがサボってるからでしょ」
「サボってねぇ!!」
「ま、まあまあ……」
「全く……」

 現在、昼食中。

 芳佳、ゲルトルート、エーリカという微妙に見慣れない組み合わせがひとつの机を囲んでいた。ちなみに今日の昼食はルッキーニ製。というか
正確にはリネット製だ。ルッキーニは作り方は分かるが実際に作れないので、レシピだけ教えてリネットに投げた。まあ、美味しければなんでもいいと
言うのが隊員たちの共通見解だが。ちなみにピザとパスタである。

「ほらー、あんまりピリピリしてるから口の周りにソースついてるー」
「お前な……そんなことで
「あ、ホントだ」
「え゙」
「あら? トゥルーデがそんななんて珍しいわね」
「な、ホントか」

 試しに、見える範囲にある鏡を覗き込んでみた。……唇の下に、確かにちょっとだけだが残っていた。

「くッ……ハルトマン、貴様計ったな!!」
「ふっふっふ、甘いよトゥルーデ……今回の首謀者は宮藤だ!」
「えええぇぇぇ!?」

 もう、疲れる連中だ。
 それに律儀に返事をする自分も、周りからしたら大して変わらないのだろうが。こんな連中と同じには見てもらいたくないものだ。

「で、あとどのぐらいで終わりそうだ?」
「まだ半分ぐらい残ってますね」
「……ハルトマン中尉、お前にはいい加減罰則が必要なように思えてきたぞ」
「な、なんだってー!?」

 少し話に興味を持った美緒が声をかけてきた瞬間、ゲルトルートは自分の時代が来たと確信した。エーリカに一泡吹かせてやろうという目論見だ。
まあ、掃除なんてやらされているのだから多少は許されるだろう。というか許させる。

 しかし結局、エーリカに罰は下らなかった。

「ちぇ、つまらんな」
「……バルクホルンさん、なんか子供みたいですよ」
「む」
「いや睨まないでください、怖いです」
「そんなことより、すまないな」
「え? 何がですか?」

 何がって、コイツは前の日に言ったことも忘れたのか――――と考えようとして、途中で改まった。そういえば寝坊して昨日言ってた予定を半分忘れて
いるんだっけか。芳佳は芳佳で扱いにくいものである。

「ストライカーの整備なら大丈夫ですよ、普段の整備はお願いしてあるので飛ぶのに支障はありませんし」
「ん、そうか」

 ……前言撤回。ちゃんと覚えていたようだ。



 談笑しながら食事を進めていたが、やがて完食すると早々に芳佳とエーリカをつれて席を立った。半日で終わるものと見くびっていたが、この様子では
一日かかっても終わるかどうか不安である。さっさと進めないと終わらない。午後からはエーリカにも手伝わせて、もっと気合を入れてやらなくては。
ゲルトルートは袖を捲り上げると、再びエーリカの部屋へ入っていった。



――――続く



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