Inversione
「んー、朝か」
太陽の光とともに、シャーロット・E・イェーガーは目を覚ました。
「おっと、まだ時間あるじゃん」
時計を見ると、起床時刻より30分ほど早い時刻を指していた。
「ま、いいか、着替るかなっと……あ、あれ?」
寝間着のボタンに手をかけると、何かいつもと感触が違う。
なんというか、やわらかな感覚がないのだ。
まるでルッキーニの胸に触っているかのようだ。
そして、下を見たシャーリーは驚愕した。
「な、な、なんだこれはああああああああ!!!!!!」
あ、あたしの胸が、隊の中で一番の大きさを誇る、あの自慢の胸が、
平らになっていた。
そして、身長が縮んでいた。
-Inversione-
「たたたた大変だぁ!!!!」
あわてて外に飛び出すと、外にはフランチェスカ・ルッキーニが立っていた。
「あ、シャーリーおはよ。いきなり叫んでどうしたの?」
「ルッキーニ!! 大変だ! あたしの自慢の胸が……ってええええ!!!???」
ルッキーニは、かなりおっきくなっていた。
あたしより身長が頭1つ分くらい高くなっている。
それに、胸が大変な主張をしている。なんというか、あたしと同じくらいになっている。
「どしたのシャーリー? そんなにあわてて」
「いやいやおかしいでしょ! なんでそんな体になってるんだよ!?」
「へ? あたしはいつも通りだよ? あ、ひょっとして怖い夢でも見たー?」
そういうと、ルッキーニはあたしを抱き寄せ、自分の胸にうずめた。
「よしよし、怖くないよー」
あ……やわらかい……
ってそうじゃなくて!
なんであたしのが小さくなって、ルッキーニのがこんなに大きくなってるんだよ!
これは夢だ。夢に違いない。
ほっぺたを引っ張ってみる。……痛い。
ひょっとして、夢じゃない?
「な、なあルッキーニ。あたしは何歳だっけ?」
「12歳でしょ? 変なシャーリー」
あたしが12歳!? そんな馬鹿な、あたしは間違いなく16歳のはずだ。
それじゃまるで、あたしとルッキーニの立場が入れ替わったみたいじゃないか。
……でも、そう考えると2人の体型にも納得がいく。
「シャーリー、汗びっしょりだよ。まだ時間あるし、お風呂入りに行く?」
「う、うん……」
頭が混乱して、うずを巻いている。
どうしてこうなってしまったのだろう。
「ほら、頭洗ってあげるからおいで、シャーリー」
放心状態で、ルッキーニに頭を洗ってもらう。
ルッキーニの胸……やっぱり何度見ても大きい。
それに比べてあたしの胸……何十回見ても、いつも見るルッキーニの胸と変わらない。
「ほら、流すよー」
ざばー、と頭を流してもらい、体も洗ってもらう。
ああ……気持ちいいなあ。
それより、どうにかして元に戻らないとなあ。
でも、こうしてもらうの、なんだか悪くない。
そのうち、だんだんとまぶたが重くなってきた。
「よし、終わったよ」
「ありがと、ルッキーニ」
今までのが全部夢で、これが現実なんてとても考えられない。
だから、いつか向こうに戻らなければならない。
……でも、しばらくはこの状況に甘んじてもいいかもしれない。
今すぐ何とかなるようなものじゃないだろう、この状況は。
それに……
ルッキーニに甘えられるなんて、なんだかうれしいし。
湯船に浸かり、まぶたを閉じる。
「シャーリー、眠いの?」
「……うん」
「ほら、おいで」
ルッキーニの胸に、頭をうずめる。
「よし、それじゃあたしが子守歌を歌ってあげる!」
「うん……」
♪シルフィデのWaltz 麗らかにBounce
♪眠り姫に眠る夢
♪くるり ふわり
目が覚めると、そこはあたしのベッドだった。
「んー、朝か」
横を見ると、ルッキーニが眠っていた。
「うじゅー」
「ってこら、あたしの胸を枕にするな!」
「んー……。あ、シャーリー、おはよ」
といいつつ、あたしの胸をもにゅもにゅと揉む。
「やっぱり朝はこれだよねー」
「なんじゃそりゃ。それより汗びっしょりだし、お風呂にいかないか?」
「ん、行こう行こう!」
2人寄り添って歩く。
「なぁ、ルッキーニ」
「んー?」
「あたしの頭、洗ってくれないか?」
「いいよ! あたしが洗ったげる!」
「サンキュー」
やはり、さっきの体験は夢だったようだ。
夢とはいえ、この胸を失うなんて二度とごめんだ。
でも。
またルッキーニに甘えられるなら、見てもいいかな。
「さ、シャーリー頭出して!」
「おう、よろしくー」
Fin