ブリタニア1944 format by LYNETTE RTB


 意識は、何度も浮き沈みを繰り返す。
 時に夢を見、気がつけばそのビジョンは失われて、幾つものデジャビュの中を彷徨い、渡り歩いて、同じ一瞬へと何度も辿り着き、過ぎ去っていく。

 それは、おぼろげな夢の記憶。

 私は暗闇の中で手を伸ばす。
 延ばす先は光。
 光は大好きな大好きな芳佳ちゃんの笑顔。
 でも、笑顔はだんだんと遠くに霞んで届かなくて、ただわたしだけが暗く深い闇の底に堕ちていく。
 悲しみに胸がいっぱいになって慟哭しながら、心のどこか冷静な部分が何がいけなかったのかと自分に問いかける。
 私は間違ってない。
 だって、こんなにも私は芳佳ちゃんの事を思っている。
 でも、芳佳ちゃんは私の事を解ってくれなかった。
 解ってくれなかったから、心を開いてもらう努力をした。
 私の恥ずかしい所も含めた全てをさらけ出しながら、私にも同じ事していいんだよ、して欲しいんだよってメッセージを込めて、身体と心を重ねたつもりだったのに……。

「はぁ、はぁ、はぁ……リーネちゃん……ぁぁん……大丈夫……あぁん……きっと……あぅ……すぐに……」

 切なそうな芳佳ちゃんの声が、遠くに、近くに、どこかから響く。
 それは私の事を思う声。
 わたしが一人でえっちな事をして自分を慰めていた時に出すのと同じ声。
 声と共に伝わってくるのは柔らかく私を包み込んでくれる光。
 そんな光と共に意識はまた浮揚をはじめる。

「ううっ……くぅ……また、またきちゃうよぉ……こんなの変なのに……おしりがいいよぉっ……ああっ、りーねちゃぁん……」

 上擦った声は未だ夢の中にいる私を身体の芯を昂ぶらせ、魂を翻弄する。
 だって、そこに私の望んだ、私のように乱れる理想の姿があるんだもの。

「だめなのっ!わたしが……しなくちゃ……できる、こと……しなくちゃ……んくぅっ!でもっ、きもち……いいよぉ……がまん、できない……」

 私の恥ずかしい大きさの双球の向こう、癒しの淡い光につつまれた芳佳ちゃんの相貌は、とても淫らに蕩けて見え隠れする。
 その手は、時にその身体を支える為に床へと伸ばされ、時に私の胸の真ん中へと添えられ、そして少しだけ乳房にも伸ばされて、頬ずりやそこへの触れるようなキスを交えて、懸命な行為が続いていく。

「はぁっ……や、わら……かい、うしなわ、ない……よ。ぜったい……たすける、から……あぁんっ……ああああっ! はあああああああんっ!!!」

 何でこんなにえっちでステキなんだろう?
 ああ、そうか……唐突に、思い出した。
 私が入れてあげたお尻の道具が動いてるんだ。
 そんなに魔力をこめたら、どれだけ凄い動きをしているのかな? 想像するだけで身体の奥、心の深いところから熱い疼きが湧き上がってくる。
 でも……私にはきっと無理。
 だって、途中で気持ちよくて……気持ちよすぎて魔力を出せなくなるに決まっているもの。
 アレを私に入れて、芳佳ちゃんの魔力で思い切りお腹の中をかき回して貰えたらどれだけ凄い事になるんだろう。
 泣いても叫んでも気絶しても、目を覚まさせて芳佳ちゃんのクリトリスを弄り続けた時とは逆に、今度は私がそうしてもらえたらいいな。
 限界を超えた先の快楽を、ねぇ、私に見せて、私に与えて欲しいよ、芳佳ちゃん。

「ふぅああぁぁっ! こんなんじゃ……だめぇ……くっ、あっ、あっ、あぁっ! きちゃぅっ! も……らめえええええええええええええっ!!!」

 わたしの身体の上で、芳佳ちゃんは絶頂を迎えてた。
 同時にその肢体からは力が失われて、静かに私の胸に顔を埋めると、そのまま意識を手放して瞳を閉じた。 

 そんな芳佳ちゃんを、私はただ見ているだけだった。
 手を伸ばしたくても、声をかけたくても、何もできず、ただ見ているだけだった。
 だから、きっと頃は夢なんだと思った。
 理不尽でよく解らない事が起こる、夢だと思った。

 そう結論付けるかつけないかのタイミングで、意識はまた沈んでいく。
 何故、こうやって意識の浮き沈みを繰り返しているかの理由にも気づけないまま。
 


 ……………………。
 優しい温もりを感じて、目を覚ました。
 胸元をくすぐる規則正しい寝息。
 サラサラの……少しだけツンツンとした感触で乳房を撫で刺激するその髪の毛。
 右の手は左の乳房に軽く添えられていて、左の手は脱力して床へと零れている。
 脚は私の太ももの辺りをまたぎ、包むようにして軽く広げられ、全身の素肌と素肌、体温と体温が密着している。
 芳佳ちゃんはそんな姿勢で私の胸元に顔を埋めるようにして寝ていた。

「芳佳ちゃん」

 その名を呼んでみる。
 寝起きのぼんやりとした頭で半ば無意識に視線を巡らせる。
 背中には石畳の感触。どうやら床に寝ているみたい。
 本来ならひんやりと冷たいはずの石畳がすっかりと体温で暖まっている。
 ちょっと離れた所にベッドが見る。
 ベッドにはシーツが無くて、更に回した視線の左手側にはいろいろな道具の詰まった箱。
 そして右手側には、無造作に散らばった重そうな鎖、滑車、鋼鉄製のフック、赤黒い色のついたシーツ……。

 ハッとなった。

 眠気なんて一瞬で吹き飛んで、何があったかを思い出す。
 そうだ、私は芳佳ちゃんの荷重に逆らって上半身を起こす。

「んくっ……」

 胸の中央に鈍い痛みを感じて、呻く。

「ん……」

 私の動きに反応して、芳佳ちゃんが身じろぎする。
 芳佳ちゃんの覚醒が近い事を直感的に感じながら、私の中で断片的な夢の記憶が繋がっていく。
 そうだ、私は転んで、その時に落ちてきた鋼鉄製の滑車とフックで胸を強く打ちつけて気を失ったんだ。
 魔法の保護も無くあんなに重いものが胸に当たったというのに芳佳ちゃんの頭の下にある私の胸には痣一つ無いように見える。
 それが示す事は一つ。
 芳佳ちゃんが、助けてくれたんだね。
 改めて体を起こしながら、胸の狭間のその頭に手を載せ、優しく髪を撫でる。
 まだじわりとした痛みはあるけれど、それももうわかっていれば全然なんともない程度の痛みだから苦も無く身体を動かす事ができる。

「んんっ……」

 私の身体の動きに反応して、芳佳ちゃんが身をよじる。
 それはまるで、私の胸に顔を押し付けるような動き。
 相変わらずわたしのおっぱい大好きなんだね。嬉しいな。
 その細い背中の先、なだらかな局面を描くお尻の、発展途上の丸みの向こうには尻尾が見える。
 本来なら尾てい骨の辺りから生えるはずなんだけれど、芳佳ちゃんに気持ちよくなって欲しくて私がお尻に入れてあげた道具の効果で、尻尾はそこから出るようになってる。
 ウィッチ用の責め具であるそれは魔力に反応して振動、蠕動して快感を与える上に、一旦魔力を使い始めると強制的に発動状態を維持する機能も持っている。
 だから、今の芳佳ちゃんはこうやって意識のない状態でも気持ちのいいところをとろ火で炙られているような状態のはず。
 目覚めた後、また素直に蕩ける様な表情を見せてくれるといいけど……でも、私は芳佳ちゃんを怒らせてしまった。
 そうだ、私は二人きりの世界を望んで、芳佳ちゃんはそれを否定した。
 突き飛ばされた私はバランスを崩して鎖を引き、転び、落ちてきたフックと滑車で怪我をして、意識を失った。
 だけど芳佳ちゃんは優しいから、それでも私を助けてくれたんだ。
 夢の中のおぼろげな記憶が浮かび上がる。
 芳佳ちゃんは確かに感じていた。
 表情を蕩けさせ、嬌声を上げ、恥ずかしい場所をびしょびしょにしながらも私を癒し続けたのは、きっと夢なんかじゃなくて現実の芳佳ちゃんだったんだと思う。
 じゃあ、記憶が断片的で、芳佳ちゃんが絶頂を迎えて力尽きる度に私の記憶も途切れたのは……?
 そのことの真実に気づいて、ぞくりとした。
 あの器具を抜く事もできないままに芳佳ちゃんは治癒の魔法を使い続けたんだ。
 私が少し魔法をこめただけで驚くほど暴れていたあの責め具にお尻の奥深くまで侵入されたままで……。
 制御しきれない程の大きな魔力を入力されたそれは一体どれだけの快感を芳佳ちゃんに与えていたんだろう?
 想像もできない。
 きっとそれは快楽を通り越して苦痛といえるようなレベルに達していたかもしれない。
 芳佳ちゃんはそんな快楽と苦痛の波に飲まれて何度も力尽きそうになりながらも、その度に自分を奮い立たせて私を救う為に頑張ってくれた。
 だから今、私は傷一つない身体で芳佳ちゃんを抱く事ができてるんだ。
 敵わない……敵わないよ、芳佳ちゃん。
 私にとっての芳佳ちゃんは、私の全てで、だから芳佳ちゃんにとっての全ても私であって欲しくて、一緒に気持ちよくなることでずっとお互いが一つになれることを目指してここまで来たのに、なのに芳佳ちゃんは私を否定した。
 みんなを思いたい。みんなの為に何かし続けていたい。そんな思いの芳佳ちゃんにとって、みんなというのはきっと等しく大切なんだ。
 でも、だからこそ、そんな芳佳ちゃんの尊い思いを否定した私にさえ等しく救いの手を差し伸べてくれる。
 ……本当に、私なんかじゃ敵わない……私なんかじゃ独り占めに出来ないんだね、芳佳ちゃん。
 ああ……どうしよう?
 私、目を覚ました芳佳ちゃんにどうやって向き合ったらいいんだろう?
 全部の思いを言葉にも行動にもしてぶつけて、その結果つい手を出してしまうほどに怒らせてしまったというのに、それでも優しく包んでくれるなんて……。
 世界中から間違っているって言われても、どんなに自分で歪んでしまっている事に気づいていても全て飲み込んで芳佳ちゃんへの思いを貫こうと思っていた。
 同じ女の子だからキモチイイ事に勝てなくて、最後は自分と同じ場所に落ちてきてくれると思っていたのに、でも今は「ごめんなさい」を言いたくて胸がいっぱいになってる。
 芳佳ちゃん、私が間違ってたよ、って、そう言いたくて。
 許してくれなくたって……ううん、きっと芳佳ちゃんは赦してくれる。
 そうして許しを乞うことで自分が救われたいだけなんて、本当に私、イヤな娘だよね。
 私みたいなのが好きになってゴメン。本当にゴメン。
 自分が情けなくて死にたいぐらいなのに、芳佳ちゃんのことが好きだから、芳佳ちゃんが何度も救ってくれた命だから、この命を手放せない。
 何も出来ない。
 心の中でゴメンナサイを繰り返すこと以外に何も出来ない。
 だから、速く目を覚まして芳佳ちゃん。
 本当にゴメンナサイを言わせて。
 この苦しみから、私を救い出して。

「んぁ……」
「芳佳ちゃん?」

 私の胸で、芳佳ちゃんがその目を開いた。

「リーネ……ちゃ……ん……」
「芳佳ちゃん……あの、私……んむっ」

 ごめんなさい、といいかけた私の口は、温かく湿った柔らかいものに塞がれた。
 芳佳ちゃんからの、キス。
 驚きで無防備だった私は積極的に侵入してくる舌を受け入れ、最初は遠慮がちに、すぐ後には積極的に絡ませてしまう。
 戸惑いながらもずっと望んでいたシチュエーションに、私のなかのいやらしい部分が熱く滾る。
 欲情に任せるまま、二つの絡み合う舌は二人の口の中をいったりきたりする。
 少し身体を起こした姿勢のまま、左手を床について私と芳佳ちゃんの上半身をささえ、右手はその背に回す。
 芳佳ちゃんの右手は私の顎に添えられて唇を貪るための支えにし、左手は私の右のおっぱいに触れ、乳首を摘まんでこね回している。
 何で? どうして? 何があったの?
 浮かぶ疑問符は喜悦と快感に流され、芳佳ちゃんの優しさに打ちひしがれて希薄になっていたイヤラシイ私が、再び濃度を取り戻していく。

 芳佳ちゃんに、謝らなきゃ……。
 
 右手でその髪を撫でてからうなじへと滑らせ、性感帯を呼び起こすようにその背をなぞって一気にお尻の谷間の寸前までおろす。
 そのとき、今までの態度が信じられないほど積極的にディープキスを楽しんでいた芳佳ちゃんの身体が、ビクンと小さく跳ねて止まった。
 薄いけれど柔らかい谷間を掻き分けるように、それでいてその谷底に触れないような微妙なタッチでやわやわとその素肌を刺激する。
 芳佳ちゃんの動きの変化を感じ取った私は、左手を床から離してゆっくりと背中を床につけながら、その左手をお尻へと這わす。

「んはっ……」
「ふぅっ……」

 数分振りに二つの唇が離れ、お互いの唾液が銀の糸をゆっくりと引いてから千切れ、近すぎて行過ぎていた視線が絡み合う。
 どうして?
 瞳に疑問符をこめて問う。
 でも芳佳ちゃんは私の疑問に応えないままに呟いて、私の胸へと舌を這わした。
 微かな声を伝えた唇の動き……、「もっと」と、芳佳ちゃんは今確かにそう言った。
 わからない。
 何だろう。コレは間違いなく私の求めた結果なのに、胸のずっと奥のほうで何かが燻ってる。
 それでも、こんな間違いなく私の求めた結果を、私は受け入れて快楽を貪ろうとしている。
 なんて弱いんだろう、と心のどこかで諦観を抱いたひとかけらの私を、私の両の乳房を揉みしだいて自由にこね回し、中央に寄せるようにしてからかわるがわる左右の乳首をついばむ芳佳ちゃんの姿に心躍らせる私が飲み込んでいく。

「んっ、ちゅ……ちゅぱ……あむっ、ちゅう……ちゅ、ぺろ……ぴちゃ……」
「あっ、んっ! ああんっ! んうっ! そ、んなっ……すっちゃ、だめぇ……」

 目の前で展開される余りにも情熱的な乳首責めにあっというまに上り詰めそうになり、芳佳ちゃんのお尻をもみ、撫で回していた手が止まってしまう。
 すると同時に芳佳ちゃんが顔を上げ、今度は聞こえるように言った。

「ねぇ、もっと!」
「ん……、うん」

 責められて切羽詰ってるのは私なのに、私よりもよっぽど追い詰められたような声での懇願。
 言わなくてもわかる、「もっと」の後に続く言葉は「気持ちよくして」だ。淫蕩に彩られたその瞳は雄弁に語る。
 もっと、そうもっと気持ちよくなりたい!
 理由はわからないけれど、芳佳ちゃんが気持ちよくなりたいって言ってるから、私にはその願いを叶える義務がある。
 だから少し乱暴に腰を抱き寄せて密着させてから一言を告げる。

「解ったよ芳佳ちゃん……。いっぱい……いっぱい気持ちよくしてあげる!」

 未だに芳佳ちゃんのナカに深々と埋め込まれたままの器具右手で触れて、魔力を注ぎ込む。
 遠慮なんて無かった。
 何よりも淫らに上気した芳佳ちゃんの表情に引き込まれた私は、今まで出一番強い魔力をこめる。
 触れてる指先が震え、薄いお腹を通して私の下腹まで振動が届くほど責め具が暴れているのに、私ならもうとっくに駄目になってしまいそうなのに、芳佳ちゃんはその快感を全て受け止めて、更にその先を求める。

「あああああんっ!! もっと! ねぇもっとだよリーネちゃん!! あはぁん!」
「えっ……ひぃんっ!」

 想像の先を行くその行為に、私は驚き、そして翻弄される。
 貪欲に叫んだ芳佳ちゃんは私のおっぱいを痛いくらいに強く握り締めながら少しだけ身体をずらすと、私の左足を持ち上げ、自分の左足も持ち上げて女のこのえっちなところが密着するように腰を突き出した。

「ひああああっ!!!」
「くううううんっ!!」

 あっという間に集中が切れて魔力を途切れさせてしまったにもかかわらず、芳佳ちゃんの腰がありえないほどの細かい振動をしているのは芳佳ちゃん自身が魔力を使ってるから。
 振動はお尻から薄い粘膜を通して前の方へと伝わり、密着した二人のピンクの粘膜も震わせる。
 乱暴に腰を揺らし、ぶつけ、すり付ける。
 狙いも何も無くて、どうしていいかが分かってしてるんじゃない、身体が先走って肉欲を求める稚拙な行為。
 きっと自分の指の方が的確な性感帯を刺激して気持ちよくなれるはずなのに、なのに何でこんなに凄いの? こんなにキモチイイの?
 声、息遣い、匂い、感触、表情、そして剥き出しの感情。
 それら全ての相乗効果で愛しさと快感を加速させていく。

「ね、へ……ねぇっ……リーネ、ちゃん……また、アソコっ、して……」
「あ、は、ん……くっ、ア、ソコ?」
「いっ、いっぱい……してくれた、あの……オマメ……」
「はぁっ……クリ……トリス」
「ああんっ、そうなのっ! くりとりす! くりとりすいっぱいしてぇっ!」

 頭が、くらくらする、
 芳佳ちゃんが小さな突起への責めを懇願する。
 流されていく思考の中で一瞬だけ遠い思考がよぎる。
 でも、謝らないと……謝る?
 何を、謝るんだろ?

「ねぇっ!! リーネちゃんっ!! はやくっ! ずっとアレして欲しくて、アレで気持ちよくなりたくて頑張ったのっ! お尻だけじゃヤダッ!! ね、くりとりすもしてっ!」

 ああ、そうか……。
 随分と長くお預けさせちゃった事、謝らなきゃ。

「ご、めん、ね……よしか……ちゃぁん」

 ふふ、謝れたよ。そう、私ごめんて言えたよ。
 後は、行動で示さないとね。
 二人の密着する粘膜へと少し乱暴に右手を滑り込ませる。
 傷つきやすい粘膜を爪が引っ掻いてお互いに悲鳴とも嬌声ともつかない甘い声を上げるけど、もうその全てが心地よくてたまらない。
 粘膜と、粘膜と、指先のやりとりは数瞬続き、その先端は目的のものを探り出す。
 少し身体を持ち上げるようにして優しくやわやわとそこを撫でる。

「ひうっ! ソコぉっ! ソコ、欲しかったのっ!」
「芳佳ちゃん、ね、私も……」

 自分で思っていた以上に上擦った声の懇願。
 その願いは遅延無く届いて右手を股間へと移動させる。
 手元を見ないでも同じ女の子同士だからわかる、お互いの弱い場所……そこに、私よりも少しだけ時間をかけて愛しい人の指が到達する。
 その左手はおっぱいを掴んだまま離さず、羞恥と興奮で真っ赤にしているその顔は照れ隠しなのか赤ちゃんのように左の乳首に吸い付いたまま起こさない。

「はぁ、はぁ、はぁ……ねぇ、芳佳ちゃん……。ここを……」

 芳佳ちゃんの望んだ場所、女のこの小さな突起、クリトリスを指の腹で軽く押し込む。

「んっ!」
「ああっ」

 押し込まれた拍子に乳首を軽く噛まれ、その指が触れる私のクリトリスも圧迫されて甘い刺激が腰全体に広がる。

「ね、せーの、で……一緒に、ギュって……しよ」

 乳首をくわえたままの顔で芳佳ちゃんは小さく頷く。

「くはっ……!」

 それは動きとしてはとても小さいのに、快感の波に翻弄されて濡れた瞳の上目遣いと相まって破壊力は抜群だった。
 逝ってしまうのを我慢できたのは、二人で一緒に果てたいというより強い肉欲のお陰だったと思う。
 だから、私は言葉を繋ぐ。

「はぁっ……ね、よしかちゃん、いくよ……」
「んっ……」
「うふふ……せーのッ!」
 
 ギュッと、容赦ない抓り上げがきた。
 勿論、私も爪を食い込ませる様に抓った。

『ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッッッッ!!!!!!』

 二人の絶叫がシンクロして、逝くのが止まらなくなる。
 痛いけど気持ちいい。
 芳佳ちゃんが与えてくれるものだから、きっとどんな刺激だって気持ちいい。
 何秒間絶頂から降りてこれなかったんだろう?
 その強すぎるけど甘い刺激を余す事無く味わった私の意識は、脱力した身体がはしたなくも尿道を緩ませてお漏らしをするのを感じながら、意識を閉じた。


 ……………………。
 肌を拭う布の感触で目が覚めた。
 目の前で、濃い色の髪と犬耳が揺れている。

「芳佳ちゃん?」

 思わず声をかけると、ちょっとだけ控え目な返事が返ってきた。

「リーネちゃん……その、おはよう……」

 返事と同じ様に、遠慮がちな動きで芳佳ちゃんが顔を上げる。
 首には私のつけてあげた赤い首輪、上半身にはいつものセーラーだけれどその下には何も着ていなくて、手には今までわたしの身体を拭ってくれていた濡れタオル。

「芳佳ちゃん、私……」
「リーネちゃん、ごめんなさい!」  

 わたしの言葉よりも早くに、芳佳ちゃんが謝罪と共に頭を下げる。

「リーネちゃんを傷つけて、ごめん……」

 解らなかった。
 私の記憶が混乱しているのかな?
 今の芳佳ちゃんと、さっきまでの蕩けきっている芳佳ちゃんのイメージがつながらない。
 きっと、夢でもなかったと思う。
 だって、まだ身体の奥底に、おっぱいに……そしてえっちな所に、あのひとときの熱い感覚がまだ残ってる。
 特に噛まれた乳首や、思い切り抓られたクリトリスにははっきりとわかる痛痒感がある。

「芳佳ちゃん、私傷ついてなんかないよ」

 出来るだけ優しく、笑顔で告げる。
 でも、芳佳ちゃんはうつむいて無言で首を左右に振ると、やや間を置いてから言葉を繋げた。

「傷つけたよ……突き飛ばして怪我をさせて……それで、目覚めた後もあんなことしちゃった……」

 最後の方は、涙声だった……。

「芳佳ちゃん!?」
「わ、わたし……あんなことするつもり無かったんだよ……。でも、気持ちよくなりたいのが止まらなくて、どうにもならなくてっ!」

 泣きながら、芳佳ちゃんが叫ぶ。

「い、今も、お尻がぶるぶるしてて……ずっと気持ちいの……でも、もうそれだけじゃ我慢できなくて……だから、どうしようもなくて……私、きっとまたリーネちゃんにひどい事しちゃう」

 告白を聞きながら、胸が痛む。
 これは、身体の傷の痛みなんかじゃなくて、精神の痛みだ。
 あの時私を拒絶して、私の心を打ち負かして、それで居て私の命を助けてくれた芳佳ちゃんはきっとあの時だけの存在で、私を助ける過程であの強い芳佳ちゃんは、そう、きっと死んでしまったんだ。
 今私の目の前に居るのは、私と同じ場所まで落ちてしまった弱くてえっちな少女。
 自分がどれだけえっちなのかと言う事を告白して、彼女にとっての被害者だと思ってる私に対して許しを請う仔犬。
 曖昧な記憶をつなげていって、一つの答にたどり着く。
 きっと芳佳ちゃんは、私を治療する過程で快楽に取り付かれ、溺れ、その底に沈んでしまったんだ。
 哀れみ、痛みに苛まれながらも、想像するだけで私のえっちな身体の芯が疼いてしまう。
 大怪我をして死にそうだったわたしを必死で癒している間、それに何時間かかったかなんてわからないけれど、その間中ずっとずっとずうっと媚薬を塗りこまれて敏感になったお尻の穴を奥の奥まで揺さぶられていた。
 勿論その前のクリトリスの連続絶頂も芳佳ちゃんの中に深い傷を刻み込んでいたんだと思う。
 イヤだ。
 解ってしまう。
 芳佳ちゃんの堕ちる過程が簡単に想像できてしまう。
 そんな事思っちゃ駄目なのに……。
 駄目なのに想像して昂ぶる。
 昂ぶるのがとまらない。
 止めて欲しいのに、そんなことしか考えられない。
 だから必死に呼び覚ました理性で呼びかける。
 違うよ。
 違うんだよ芳佳ちゃん。
 芳佳ちゃんは悪くないんだよ。
 悪いのは私なんだよ。
 私のわがままが、あんなに強かった芳佳ちゃんを殺して、輝きを奪ってしまった。
 胸が罪悪感でいっぱいになっていく。
 だというのに……何もいえなかった。
 既に言葉を失い、嗚咽する芳佳ちゃんに声をかけることができなかった。
 その代わりに、優しく抱きしめて、わたしも泣いた。



 ……………………。
 それからどれだけの時間が流れたんだろう?
 お互い泣き止んで少し落ち着いたけれど、余りにも愛しすぎる体温と離れる事を全身が拒絶していた。
 芳佳ちゃんも私と同じことを考えてくれてるといいなと、この期に及んでまでもそんなことを考え続ける自分が嫌いになる。
 でも、当の昔に堕ちていた私は、今更後戻りなんてできない。
 さっき、謝罪を告げられなかった、ううん、告げなかったのは、あの強い芳佳ちゃんに負けたと感じようとも、痛い程胸を締め付ける罪悪感に苛まれようとも最後の最後でこうして芳佳ちゃんを自分だけのものに出来ると確信してしまったから。
 もしかして……もしかしなくても私は狂ってる?
 でも、それでも……。

「芳佳ちゃん」

 なるべく優しい声で、その名を呼ぶ。

「リーネちゃん?」

 その、静かな名前だけの返事を待って、ひと呼吸置いてから続ける。

「まだ、気持ちいいのが止まらない?」
「え!? ……ぅ、うん……」

 抱き合った状態から少しだけ、ほんの少しだけ身体を引いて、耳元で、と息でその耳をくすぐるように囁く。

「お尻が、痺れてるんだね」
「うん」

 言葉を紡ぐたび、興奮で上擦りそう。
 そして芳佳ちゃんから返る声も、また私と同じかそれ以上に震えてる。

「何で、抜いて欲しいっていわないの?」
「!!!」

 その一言で芳佳ちゃんの体が硬直する。
 ドキドキしてるのがわかる。でも、私も同じくらいドキドキしてる。

「ね、どうして?」
「それは……」
「そうだね、それがあれば言い訳になるよね、気持ちがイイの止まらないっ、て」
「わ、わたし……」

 返答に困る質問と、手に取るようにわかるその心の代弁。
 私、本当に最低だ。
 まだ自己嫌悪できる感情が残ってる。
 でも、芳佳ちゃんを独占したいという想いがそんなまだまともな部分を塗りつぶしてく。

「いいよ」
「え?」
「私が発端だから、私が芳佳ちゃんをえっちにしたから……だから、いいよ」

 冷静な自分が無茶苦茶なことを言っているって叫ぶけれど、芳佳ちゃんに溺れたい私は心からも耳を塞いで、なるべく優しい声で芳佳ちゃんと私だけのために言葉を作り続ける。

「リーネちゃん……」

 私を呼ぶその声の中に、色んな感情が混じっているのを感じる。
 ああ、いまの芳佳ちゃんの中には、私でいっぱいなんだなって思えるのがたまらなく幸せで、だからもう少し身体を引いて、3インチの距離で視線を合わせてから、多分今の自分に出来る最高の笑顔で言った。

「私、芳佳ちゃんの欲望の捌け口になるよ」
「!」

 息を呑むのが解る。
 私は、このステキな一言を伝えた事で幸せでいっぱいになっていく。
 幸せだから、思い浮かんだことを口にする。
 想像を交えながら、無邪気に。

「おっぱい揉みたくなったら、どんな所でだってしていいよ。キスだってそう、いつだって舌を絡めて欲しいの。クリトリスをして欲しかったら、みんなの前でだって舐めるよ」
「り、リーネちゃん!?」
「ほ、ほら、芳佳ちゃん……」

 手をとって、私のすっかりグショグショになった股間へと誘導する。
 芳佳ちゃんは抵抗せずに、その手を引かれ、私のえっちなところをまさぐる。

「リーネちゃん、すごい……凄く濡れてる」
「あああああん……ね、わたし……凄く、幸せ……ね、だから……好きな事を言っていいよ。えっちになった芳佳ちゃんのために、もっとえっちな私が何でもするよ」

 至近距離で少しだけ私を見上げる瞳は、すっかり欲望に染まって怪しい輝きを宿していて、手は股間のいやらしさを確かめるように何度も何度も前後にすられ、弄られていた。
 開き気味にした脚のその付け根に芳佳ちゃんの視線が移動して、ゴクリと喉を鳴らす音が、やけに大きく響いた。
 そしてもう一度ゆっくり視線を私の顔に戻すと、一旦手の動きを止めてから妖しい輝きの目に真剣さを湛えて言った。

「だったら、お願い……わたしのはじめ手を奪って!」

 狂ってしまった私にとっても、予想外だった。
 ウィッチであるためには大人であってはいけないから、そこは護るべき場所のはずだったのに……。
 でも、どんなに驚いたとしても私は今ひるむ訳には行かなかった。
 だって、私は芳佳ちゃんの性欲の捌け口になりたいなりたいんだもの。
 それでもやっぱり確かめずには居られなかった。

「本当に、いいの?」
「……あのね、お尻の奥ずっとぶるぶるされてて凄いの……。でもキモチイイのがビリビリ響いてるのに、お尻からだと後ちょっとだけ届かない所があって……だからきっとソコは前の方だと思うから……だから、だからソコをリーネちゃんに満たして欲しいの!」

 何かに取り付かれたような目だった。
 多分、それはわたしと同じ目をしてるんだって、そう思った。
 立ち上がって、座ったまま私を見上げる芳佳ちゃんへと手を差し出す。
 芳佳ちゃんが私の手を掴む。
 私はその手を引きながら、発動した魔力で芳佳ちゃんを持ち上げて横抱き……お姫様抱っこをする。

「芳佳ちゃん……その、私がオトコノコ役だね」
「う、うん……私より、おっぱい大きいけど」

 抱き上げられて一瞬だけ戸惑っていたけれど、遠慮がちなわたしの言葉に赤らめたままの頬を私のおっぱいに寄せ、冗談を返す。
 ゆっくりと歩を進めてベッドへと芳佳ちゃんを横たえる。

「あのね……私、今からオトコノコだから……だから……」
「うん」
「どんな事になっても、絶対に責任を取るよ」
「リーネちゃん……うん」

 真剣な顔で見詰め合う。
 どんな事……それは具体的に言うと、魔法を失う事。
 魔法は大人になれば消えてしまう。
 年齢? 心? 体? 大人の定義も子供である事の定義も曖昧なまま私たちは魔法を使う。
 だから、ウィッチには極力その文化の中での「大人」とされる行為は避けられる傾向がある。
 その中でも万国共通で最たるものが今から私たちがしようとしている事……処女を奪う事。
 芳佳ちゃんの家系ならもしかすると魔法を失わないかもしれない、でも、失ってしまうかもしれない。
 魔法をみんなの役に立てたいと思って輝いている芳佳ちゃんが好き。
 好きだから芳佳ちゃんから万が一にも魔法を奪うような行為なんてしたくなかった。
 そっか……そうだよね、もうこの時点で私が変だ。
 皆の為にがんばる芳佳ちゃんを独り占めにしたいなんて思った時点で、きっと私はおかしくなってたんだ。
 もうこんなに後戻りできない所まで来て、そんなことに気づいちゃうなんて、私って本当に駄目だよね。
 そんなことを思いながら、私もベッドへと上がる。

「リーネちゃん……」
「芳佳ちゃん……」

 互いの名を呼んで見詰め合う。
 ゆっくりとその足元に移動して、付け根から開かせ、その間へと進む。

「ど、どうするの?」

 不安そうな芳佳ちゃんの問い。不安の中にも淫蕩な色が滲んでる。もう、欲しくてたまらないんだ。
 初めから、いつかそうするつもりはあったし、その前にお尻でしようと思っていたから手は考えてある。
 考えてあるどころか、何度もその時を妄想しながら自分を慰めてたから……だからきっと大丈夫。

「こうして……ね」

 さっき魔力を発動したままの身体にはスコティッシュフォールドのネコミミと尻尾が生えている。
 その長い尻尾を下に回して、股の間をくぐらせる。
 尻尾の毛がそこにある粘膜に擦れてちょっとちくちくする感触が、敏感な身体にたまらなく気持ちよくておもわず声が出そうになる。。

「こうすると、ちょっとオトコノコみたい、かな?」

 そんな姿で芳佳ちゃんの前に膝立ちで居る事が、凄い恥ずかしい。でもその恥ずかしさが、イイ。
 見られていることが落ち着かなくて無意識にくねくねと動いてしまう尻尾。
 その動きにえっちで恥ずかしい場所を刺激されて、なんだかことに及ぶ前に崩れ落ちてしまいそう。

「えと、その……うん。でもオトコノコとは違うかな……でも、リーネちゃんの身体なのが、嬉しい」

 目線を逸らし、戸惑いながら返ってきた芳佳ちゃんの言葉がわたしの思いも加速する。

「大切なコトだから、ちゃんと私がする。全部私がして、全部責任を取るよ。心も、身体も、全部……」
「うん」
「芳佳ちゃん……大好き」
「私も大好き、リーネちゃん……」

 身体をゆっくりと倒して、軽く触れるだけのキス。

「服は、脱がさないで。このまま……」
「うん」

 一度身体を戻し、少し後ずさってからその股間へと顔を埋める。

「ああっ、恥ずかしいよ……」

 声を返さずに、まずは太ももから舌を這わせる。

「んっ……」

 進んで、少し戻って、進んで、少し戻って、じらすように繰り返しながらその中心へと近付いて行く。
 芳佳ちゃんの身体は、既に快楽に敗北してる。
 その証拠に、その場所は私が触れるまでも無く濡れそぼっていて、準備も要らないくらいだったから。
 でも、私は舌をソコへと向ける。
 だって、触れたかったから。
 もっと声も聞きたかったから。

「ひぃんっ」

 粘膜と粘膜が触れて、ぬるりとした感触を伝え合う。
 嬌声が大きくなる。

「ああああっ……そこぉ、いいよぉ……あんっ」

 中心からくつろげる様に外へと舐め広げていく。
 溢れた私の魔力がお尻に差し込まれたままの器具へと流れ込んで芳佳ちゃんの快感を加速する。
 芳佳ちゃんが去れるのを大好きなクリトリスにも責め手を向ける。
 包皮を下でずらしてその中の一番敏感な肉芽に、はじめはちょんちょんと触れてその後は下で押しつぶすように強く舐める。

「んっ、くぅっ、はぁんっ! あああああんっ! だめぇっ! くぅ……何かきちゃうよぉっ!」

 逝きそうになってる気配を感じて、一旦クリトリスから舌を離す。

「はうぅ……んんっ、なんでぇ……」

 なるべく焦らしてえっちなままで居てもらって、少しでも初めての痛みを和らげてあげたい私の優しさだよ。
 口では応えずにそんなことを考えながらその下の穴へと向かわせる。
 ソコでもはじめは優しく、そして少しずつ刺激を強くしていく。

「んぁっ! だめぇ、そこっ! ほんとにだめぇっ! でちゃうよぉ」

 緩めてしまいそうなのを、羞恥心と私の顔にかけてしまうからという理由で一生懸命堪えてるのがわかる。
 そんな緊張感を楽しみながら舌をさらに下へと移動させ、改めて丹念に舐める。
 ぴちゃぴちゃと音を立て、涎をたっぷりとまぶした私の舌が、襞の奥へと浅く侵入しながら芳佳ちゃんの快感を掘り起こす。
 今から、ここに、するんだ……。
 そう思うと、悦び、不安、緊張、興奮……それ以外にも言葉で言い表せないイロイロなものが胸の奥に湧き上がってくる。
 股間から前に回したままの尻尾が無意識に動いてしまって私のクリトリスを擦り上げて脱力。

「んっ」
「ああああああああっ!」

 そこでいつのまにか芳佳ちゃんが大きな声を上げている事に気づく。
 危なく逝かせてしまいそうだったみたい。
 お互いにもう盛り上がりすぎていて身体がえっちな方向に敏感になっている。
 気をつけないと多分なんともない刺激でも果ててしまいそう。
 だから私は、名残惜しいそこから舌を離して顔を上げる。
 涎が伸びて千切れ、顎からおっぱいにかけて垂れる。
 あっという間に気温と同じ温度まで冷やされて冷たさを伴った粘液を拭き取りもせずに両手を芳佳ちゃんの身体の左右について顔を近づける。

「リーネちゃん」
「芳佳ちゃん……するね」
「うん」
「手、繋ぐ? それとも、キスする? きっと怖いでしょ。私だったら怖いから……だから、芳佳ちゃんが怖くないように、私なんでもするよ」
「リーネちゃん……うん、それじゃ、あのね……おっぱいに、顔をうずめてていい?」
「うん、勿論だよ」
「あと、くりとりす……弄ってて欲しい……」
「うん、ずっと気持ちよくしててあげるよ」

 そう言ってから、軽くキス。

「きて、リーネちゃん」
「いくね、芳佳ちゃん」

 芳佳ちゃんが私の顔に胸を埋める。
 私はその股間へと左手を這わせて粘膜の頂点にある芳佳ちゃんの触り続けていて欲しい場所、クリトリスへと触れる。
 右手で尻尾を掴んで、そこへと誘導する。
 自分で触れてみて驚いた。
 なんだか、想像以上に尻尾が敏感になってる。
 まるで自分の性器に触れてるみたい。
 意識しすぎて、魔法が変な方向に働いてるのかな?
 でも、これで本当に芳佳ちゃんにとってのオトコノコになれそうな気がする。
 これで、芳佳ちゃんの中に入るんだ……。
 緊張が高まる。
 先端が触れる。

「はぁんっ」
「んんんっ」

 案の定、感じすぎて思わず腰が引けてしまう。
 でも、それは芳佳ちゃんも同じみたいで、唇から零れる声が私の胸の谷間を震わせる。

「はぁ、はぁ……いくね、芳佳ちゃん」

 もう一度宣言。
 芳佳ちゃんはさらに胸へと顔を押し付ける事で応える。
 尻尾と誘導する手に少しずつ力を込めていく。
 狭い狭い襞の谷間を進んでいく感触。
 尻尾自体は細いけれど、全体を覆う毛が粘膜とはまた別の感触を与えながら進んでいく。

「くぅっ」

 尻尾から伝わる感覚と芳佳ちゃんの反応から解る、
 今、処女幕へと触れた。
 きっと、痛いんだろうな。
 顔が見えないのが幸いだったかもしれない。
 余りに痛々しい表情を見せられてしまったら、きっと躊躇してしまったから。
 だから、進む。
 想像以上の快感に抗いながら進む。

「んんっ……うううっ……っ……ッ…………」

 くぐもった声は切羽詰っていて、苦痛と快楽の判断がつかない。
 キュウキュウと締め付けてくる感覚、何かを引き剥がすような感触、
 強張る身体をほぐすように、左手の腹で芳佳ちゃんのクリトリスを強く撫で、右手は胸に抱いたその頭を優しく撫でた。
 そして、尻尾は……ううん、私のオトコノコは、芳佳ちゃんのその奥へと抜けた。

「ん苦あああああああああああああああああああっ!!!!!」

 芳佳ちゃんが一際大きな声を上げて仰け反る。
 処女を失って大人になってしまったその頭には、真っ赤な首輪に似合うマメシバの耳がツンと立っていた。

「芳佳ちゃん、偉いよ。よくやったよ」
「り、ね……ちゃぁん?」

 息も絶え絶えの芳佳ちゃんを抱きしめる。
 オトコノコは動かさずにじっとする。

「ね、ホラ」

 耳をツンツンとつつく。

「え? あ、耳がある……。それじゃ、魔法……消えてない?」
「うん、消えてないよ、芳佳ちゃん」

 これからも、芳佳ちゃんはウィッチで居られるんだ。
 それが凄く嬉しくて、無意識にオトコノコが動いてしまう。

「ひぅんっ」
「ご、ごめんなさい、芳佳ちゃん……まだ痛かったよね」
「ん……ううん、違うの。今の、そこ……凄く良かったの……」
「え、と……ここ?」
「ひゃあああんっ! そこぉっ!」
「あは、感じてる芳佳ちゃん、カワイイよ……それじゃあ、もっと動かしてあげる、ねっ」
「え……だめっ、そんな急にいいいぃっ!」

 芳佳ちゃんとの交わりを決めたその瞬間からずっと「芳佳ちゃんの魔法を奪ってしまったらどうしよう」というネガティブな思いに締め付けられていた胸が軽くなった今、私は大胆になっていた。
 そんな状態の自分を、痛みよりも快楽が先立っている芳佳ちゃんが後押しして貪欲な私が加速する。
 さっきの無意識の動きをなぞって、同じポイントへ向けてオトコノコをクイクイと動かすと芳佳ちゃんの声のトーンが跳ね上がる。
 声と同時にキュッと締め付けてくる。
 それはオトコノコを押し出されるような、引き込まれるような、なんともいえない感触。
 凄くキモチイイ。
 もっと感じたい。
 もっと感じさせたい。
 十分深みの一番の底にいたと思っていたのに、今この瞬間にももっとずっと深い場所まで落ち込んで言ってる気がする。
 もう、錯覚なんかではなく自分の股間にあるその尻尾が本当にオトコノコその物なんじゃないかって心の底から思い始めてる。
 熱に浮かされたたった二人だけのこの世界で、だから私は腰を振る。

「ああああああんっ! おくがっ……おくがすごいよぉっ!」
「はぁ、はぁ……おくっ、すごいの……わかるよ……だから、もっと……ホラッ!」
「きゃうっ……は……はふぅ……ひっ! ひぃいいいいいいんっ!」
「芳佳ちゃん……ふふ……もっと感じていいんだよ……。もっと、可愛くなっていいんだよ……ね、ホラ、もっとぉ……んっ」

 一番奥まで届かせて、オトコノコをうねらせる。
 その動きとほぼ同時に発生する、オンナノコにぎゅっと抱きしめられるオトコノコそのものから伝わる直接的な感触。
 先端がオトコノコと化した尻尾の毛先が敏感な股間を擦る感触。
 意識があるのかわからない状態で私のおっぱいにむしゃぶりついてくる唇の感触。
 鼓膜を震わせる交じり合った高い声の感触。
 舌先で味わう涙と汗の感触。
 お互い求め合う心と心が触れて溶けて一つになっていくような感触。
 気持ちよくなる事で、こんなにも幸せな気持ちに成れるんだね、芳佳ちゃん。
 もう、意味のある言葉を作れる気がしなかった。
 だって、気持ちいいとか、好きとか、そんな言葉は既に意味の無い所まで来てるから。
 お互いの気持ちいいところを探り出しては獣のようにそこを貪りあう。
 そんな幸せに足先から頭の天辺までどっぷり浸かって沈んで、辿り着いた底が抜けてまた堕ちて……。

「あはぁんっ……きもちいいの、だいすきぃ……またっ、あふっ、いくっ! 逝っちゃうのおおおおおおおおおっ!!!!!!」
「わたしもっ……しめつけられるのいいっ! ああっ、これ……わかんないっ! でもきちゃうっ、きちゃうのっ! ああああああああっ!」



 ……………………。
 どちらからとも泣く目を覚まして、汚れて皺だらけのベッドの上で、横になったまま見つめあう。
 私は左、芳佳ちゃんは右へと首を回した姿勢で、お互いの左手と右手が握り合ってる。

「芳佳ちゃん」
「リーネちゃん」

 同時に、互いの名を呼ぶ。

『おはよう』

 続く言葉は朝の挨拶。
 芳佳ちゃんを見つめ続ける私の視線の先で、その顔が天井を見上げた。

「リーネちゃん、私、やっぱり皆の所に帰らなきゃいけないと思う」
「うん」

 帰ろうというその言葉に、私は素直に頷く事ができた。
 だって、私には確信があったから。

「で、ね……リーネちゃん」
「うん」

 芳佳ちゃんが、私と反対側を向く。
 身体ごと向こうを向いてしまったけれど、その手は私と繋がれたままだ。

「あの……」
「うん、聞いてるよ」

 ずっと芳佳ちゃんを見つめてるわたしには解る。
 今、芳佳ちゃんは耳まで真っ赤。
 きっと恥ずかしいことを言おうとしてるんだね。
 それに、はじめは入ってるだけで大騒ぎしていたお尻の器具の事よりも、今言おうとしてる事が大事なのもステキ。
 もうすっかりお尻にそれが馴染んじゃったんだね。
 とってもカワイイよ、芳佳ちゃん。

「戻った後も、え、えっちな気持ちになった時には……その、してほししいの……」
「ふふ、私、言ったよ。『欲望の捌け口になる』って」
「リーネちゃん……ひゃうっ!!」

 私はうっとりとした声で返す。
 返しながら身体全体で芳佳ちゃんの側を向いて、左手をそのままに、右手を芳佳ちゃんのお尻へと当て、底に埋まったままの器具を押し込むようにしながらぐりぐりと動かす。

「だから、言って。その時は何でも言って。して欲しい事全部するよ」
「ああんっ、リーネちゃん……」

 もう、どんな所へ行っても芳佳ちゃんの心は私から離れない。
 どんなに取り繕っても、その本質は私と同じ場所にある事がわかるから。
 もしかしたら、元々そこにいた芳佳ちゃんを私の手の届かなかった芳佳ちゃんを失ってしまった事は悲しむべき事なのかもしれない。
 実際、心のどこかでそう考える事ができるのだから、本当はこれは悲しい事なんだと、なんとなく理解できる。
 でも、今の私には悲しみよりも悦びが先に立っていた。
 私と同じ世界、同じ場所に立ってくれている芳佳ちゃんが、今まで以上に愛おしい。
 愛おしいから抱きしめて、もっと二人で堕ちて行きたいと願ってしまう。
 でも、それは駄目。
 幾つ物自分の中で、対立する自分がある。
 それは今を楽しみたいという思い。
 今の危うい状態を芳佳ちゃんと二人で楽しみたい。
 どちらへ転んでも倒錯的で既に壊れてるかもしれないけど、今のところは現状を維持して、堕ちる過程を楽しみたいと思ってる。
 それにはきっと、私たち二人を現実に繋ぎとめる鎖が必要だ。
 だから、部隊のみんなには、関係する人々には、私たち二人が今を楽しむための枷になってもらう。

「私のせいでとってもえっちになったんだから、全部私が受け止めるよ」
「り、ね……ちゃあん……」

 私の右手の動きになすがままにされて、お尻を突き出すような姿勢のまま何とか振り返って流し目で私の名前を呼ぶ。

「それじゃ、手始めにすっかりコレが馴染んだお尻をどうしたいか教えて、芳佳ちゃん」

 手首を捻る。

「ひぃんっ!」

 甲高い声が上がる。

「ふふ、言ってくれないと……して欲しい事教えてくれないと何も出来ないよ、芳佳ちゃん」

 嬉しくて楽しくて笑みがこぼれてしまう。

「う、うん……リーネちゃん、あのね……ソコは……」
「うん」

 大好きだよ、芳佳ちゃん。
 愛してる。
 愛してるから、お願いされた以上に、えっちな心と身体を受け止めた。



 ……………………。
 帰還する。。
 そう、私たちは皆の所へ帰ることを決めたけど、それにはもう少しだけ時間がかかりそうだった。

 END



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