ペリーヌ扶桑へ


ガリア上空のネウロイの巣を倒し、第501統合戦闘団はその役目を終え、ウィッチーズたちは母国へと戻ることになった。
しかし、今だ傷の癒えぬ坂本少佐に同行し、ペリーヌは扶桑へと行くことになった。
(わたくしには家族もいませんし、せめて少佐のお役に立てれば…)
戦争で家族を失い、母国ガリアを奪還した今、ペリーヌは目標を失ってしまった。
だから、大好きな坂本少佐のため、はるか極東の地へと赴く決意をした。
沈没した赤城の乗組員を回収のために来た新鋭巡洋艦「大淀」に乗り込み、芳佳・少佐・ペリーヌの3人は、扶桑への船旅を送っていた。
 
ある夜、士官用の3人部屋で寝ていたペリーヌは、悪い夢でも見たのか、顔いっぱいに冷や汗をかき、うなされていた。
「おとうさま…おかあさま………扶桑…不安…」 
寝言をもらしたかと思うと、ハッと目覚めた。
「いやな夢でしたわ」
額の汗を拭うと、ため息を漏らした。すると
「大丈夫かペリーヌ」
反対側に寝ていた少佐が、上半身を起こして声をかける。
「も、申し訳ありません少佐。起こしてしまいましたか」
慌ててペリーヌが謝ると
「…すまんがペリーヌ、わたしを甲板まで連れて行ってくれないか」
急な申し出に不思議がりながらも、少佐の車椅子を押して甲板へと向かった。
 
甲板に出ると、風もなく穏やかな天気で、空には多くの星が瞬いていた。
暗い海を見つめながら、少佐が口を開いた。
「知らないうちに、わたしはお前に甘えていたようだ」
自分を戒めるように話した。
最初、自分についてくるといったペリーヌに反対した。しかし、ペリーヌの熱意と、献身的な介護に心動かされ、同行を承諾した敬意があった。
「お前が抱える悩みや不安に気づいてやることができなかった。すまない、ペリーヌ」
「そんなことはありませんわ!!」
突然の大声に、少佐は慌てて振り向いた。
そこには、顔をくしゃくしゃにして涙目のひとりの「少女」がいた。
「少佐はわたくしを助けてくれました。大切にしてくれました。いくら感謝してもし足りないくらいですわ」
そういうと、少佐のひざに飛び込み、あふれるように泣き出した。
「少佐…少佐ぁっ…」
ペリーヌが放つ「少佐」の一言には、ときめき・喜び・恐怖・不安…すべての思いが詰まっていた。
すると少佐は何も言わず、美しい金髪をやさしく、やさしく撫でる。
その手はとてもあたたかく、ペリーヌの心を静かに癒していった。
涙も枯れ、やっと平静を取り戻したペリーヌは、真っ赤に染まった顔を上げると、
「も、申し訳ありません少佐。わたくしったらなんてことを…」
「ペリーヌ、前から言おうと思っていたが、わたしを階級で呼ぶのはやめろ。名前で呼べ」
「えっ、そんな、急に言われましても…あの…その…」
いきなりの出来事に、もじもじしながら戸惑っていると
「な・ま・え・で・よ・べ」
どうやら少佐は、ペリーヌが名前で呼んでくれるのを待っているようだ。
「はいっ、…あの…さか…さかもと…さん」
「どうした、よく聞こえないぞ」
「さか…坂本さんっ!!」
ハッキリというと、少佐は嬉しさと暖かさを包み込んだ笑みで
「わっはっは!!これからもよろしくな、ペリーヌ」
日々の鍛錬で鍛えた両腕で、ギュっとペリーヌを抱きしめた。


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