愛する君へ


街で見かけたそれに、ひと目で私の心は奪われた。

考えたことはひとつ。


これを、あのひとに。



 ◆



 窓の外にはもういくつもの星たちがきらめいている。
いつもの如く美緒はミーナの部屋で穏やかなひとときを過ごしていた。

 ミーナが両手に包みを抱えてもってきた。美緒に手渡すと、プレゼントよ、とウインクする。
「今日はなにか特別な日だったか?」
「そうね、一般的にはおそらく特別な日ではないわね。でも、好きな人に贈り物をするのに特別な理由なんていらないでしょ?」

「ねぇ、開けてみて」

 シンプルだけれども華のあるベビーピンクの包装を解けば、純白の衣服。
ちりばめられたスパンコール、首元や袖口にあしらわれたレース。それらもすべて白一色である。

「あなたに似合うと思って」
「――ドレス?」
「お姫さまみたいでしょう?」
 ミーナはまるで夢の世界をみているかのように瞳を輝かせた。
「私のがらじゃないだろう」
 そう言って笑う美緒。照れくさそうにしているのはきっと、恋人からのプレゼントがびっくりするほど豪華なものだったから。
そしてそれが、うれしかったから。

「なに言ってるの、美緒だって女の子なのよ」
「そんな歳か…?」
「歳なんて関係ないわ」
「まあ一応は扶桑の女だからな、撫子とはいうが、おんなのこ…、私とはずいぶんかけはなれているように感じるな」
「サムライ、だものね」
「ふ。違いない」

「ん…。なあ、私がこれを着るのか?」
「当然! そのために買ってきたんだから」

「…なんだその笑顔は」



  “愛する美緒へ――ミーナ”
ドレスの裏地に刺繍された文字。


「…美緒。愛してるわ」

「ありがとう、ミーナ」

美緒は、やさしすぎるキスをミーナの唇に落した。



 ◆



戦いはいずれ終焉を迎える。
たぶんこのドレスは、指輪のようなものなのだ。
私とミーナを結ぶ、たいせつなもの。

好きな人に贈り物をするのに、特別な理由などいらない、と彼女は言った。
果たしてそうだろうか。
人を好きだと思い、そしてその人と自らとを結ぶ証を得たいと思う気持ち、それこそが何より特別な理由だと私は思う。


私もミーナに贈り物をしよう。



Fin...


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