借りてきた猫


昨日、ネウロイに基地の間近まで迫られた。
なんとか撃墜に成功したものの、ネウロイの破片が基地に直撃し、宿舎は半壊。
修繕が完了するまでの間、私たちは新たな部屋割りで生活することになった……


…※…※…※…

「無事な部屋は……私、バルクホルン、宮藤、シャーリー、エイラ、サーニャの5部屋か……どうする、ミーナ」
坂本少佐が顎に手を触れながらミーナ中佐に視線を向けた。
「そうね……」
言われたミーナ中佐がぐるりと私たちを見渡す。しばらく考える素振りを見せた後、再び口を開いた。
「……バルクホルンはハルトマン、シャーリーさんはルッキーニさん、宮藤さんはリーネさん、エイラさんはペリーヌさんをそれぞれしばらく受け入れてくれるかしら?」
一部を除き、了解という返事を返す。
「……あのっ」
『一部』に当たるサーニャが、珍しく声を発した。
「私は…どうしたら……」
「ありがとう、サーニャさん」
俯き気味に言ったサーニャに中佐が柔らかな笑みを向けた。
「あなたは哨戒任務等で生活リズムが他と異なることが多いでしょう?だから気にしなくていいわ」
「はい……」
そう言うサーニャの横顔は、ちょっぴり寂しそうで。
あぁ、私の部屋も吹っ飛べはサーニャの部屋にいけたのになぁ。
よりによってツンツン眼鏡か。ま、仕方ないな。

…※…※…※…

「失礼します……」
私の部屋に、今日からしばらく居候が住み着く。妙にしおらしくて、思わず笑ってしまった。
「な、何がおかしいんですの!?」
「何でもないッテ」
その笑いをなんとか抑えながら、ペリーヌを宥める。
プンスカしてるようだけど、実際には他人の部屋に間借りすることに緊張するあまりに普段よりツンツンが控え目。
からかうにはもってこいだな。
ま、ホントにからかったらしばらく居心地が悪くなる恐れがあるし止めておくけど。

そんな感じで、私はこの間借りについてあまり深く考えていなかった。
とある重要なことに気付いたのは、サーニャを見送って戻ってきてからだった。

…※…※…※…

部屋の扉を開けると、ペリーヌが部屋を右往左往していた。
「まだ寝てなかったのか」
私がそういうと、ペリーヌは困ったような顔を私に向ける。
「……?どうしたんダヨ」
「ベッド……」
「ベッドならそこに……あ」
うっかりしていた。
他の連中は『仲良し』だから、きっと気にせず――バルクホルン大尉だけは表面上嫌がりながら――同じベッドに入るだろう。
しかし私たちは少なくとも『仲良し』ではない。
女同士とはいえ、なんだかな……

「わ、わたくし床で寝ますわ……」
唐突にペリーヌがそんなことを言いだし、床にぺたんと腰を下ろした。
「ちょ、待てよペリーヌ!」
今でこそ軍人だけど、お嬢様育ちのお前が床で寝れるわけないだろ、と言い掛け、堪えた。
そんなことを言えばコイツは意地を張って本当に床で寝ようとするだろう。
「今日はお前がベッド使え」
「あなたのベッドなのですから、あなたに使う権利があるはずですわ」
「その持ち主が良いって言ってんだ」
「……でも」
ちょっと上目遣いで私を見上げてきた。
「じゃあこうしよう。明日、何かベッド代わりになるものを貰ってくる。一日置きに、それとベッドを交互に使う。どうだ?」
「……わかりましたわ」
ぷいっと顔を背け、ペリーヌは立ち上がってそのままベッドに腰掛けた。
やれやれ。
「……がとう」
「え?」
「なんでもありませんわっ!」
突然ぷんぷんし始めたペリーヌはそのまま横になった。
何か言ったような気がしたんだけどな。そう思いながら、私も硬い床に横たわる。
何も敷かずに寝るのは初めてだ。

…※…※…※…

さすがに床で寝るのは辛い。何度か目が覚めた。
しかし最後の目覚めは寝苦しさに依るものではなかった。
「ぐえっ……」
何者かに踏まれた衝撃のためだ。
しばらく床の上をゴロゴロとのたうち回った私は、床に撒き散らされた見覚えのある衣服に気が付いた。
そういえば辺りが若干明るくなっている。もうすぐ朝だ。
サーニャは今日も私の部屋に迷い込んできたらしい。

……と、いうことは。
ハッとして、ベッドを見た。
思わず鼻から何か飛び出そうになる。
「ん……」
なんてこった。ペリーヌに抱きついたサーニャが耳元で甘く囁いている。
ホントなら私が抱きつかれていたはずなのに……
嫉妬に燃える私の目の前で、今日のサーニャは一味違った。
「!!?」
思わず目を見開く。
「い…いけませんわ坂本少佐……」
そんなバカな。サーニャがペリーヌの耳をはむはむし始めただなんて。
……コレは見ていて良いモノなのだろうか。
ゴクリ、と生唾を飲み込んだ。

サーニャは更にエスカレートする。
ペリーヌのネグリジェの裾から手を差し入れたのだ。
「ああっ……」
その手は果たしてどこに触れたのか。ペリーヌが艶っぽい、小さな嬌声をあげた。
「ふふっ」
「ひゃうっ」
サーニャが小さく笑った次の瞬間、ペリーヌの身体が小さく跳ねた。
心なしか、二人とも息が荒くなってきたような。
「ひゃぁっ!!」
再び、ペリーヌの身体が弾んだ。先程よりも遥かに大きく。
直前、サーニャが舌先をペリーヌの耳に触れさせたのが辛うじて見えた。
「さ……か…しょ…さっ」
「かわいい……」
チロチロとペリーヌの耳を責めていたサーニャが、愉しそうに笑う。
……本当に寝てるのか?
そう思ってしまうほど、サーニャはペリーヌを鳴かせ続け―――

「にゃ……あっ…」
いよいよペリーヌの顔が、トマトのように真っ赤に染まってきた。
身体は痙攣しているように小刻みに震え、鳴き声は一向に鳴り止まない。
「耳しかしてないのに……」
サーニャが、本当に愉しげに呟く。
「―――えっち。」
「ちが……にゃうぅぅっっ」

…※…※…※…

荒い息を繰り返すペリーヌの横で、満足げにすやすやと寝息をたてるサーニャを見つめる。
さっきのは夢か、はたまた現か……

それはさておき。とりあえず、ズボンを履き替えたエイラだった。


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