afterglow


 エイラの部屋に戻った後も、サーニャはぼんやりしたまま、上の空。
「ゴメンナ、サーニャ。眠かったダロ?」
「ううん、大丈夫」
「目が半分閉じかかってるゾ。ほら、ベッド。毛布はココ。こっちこっち、ホラ」
「ありがとう、エイラ」
 サーニャは何故かパンケーキを皿ごと何枚か“お持ち帰り”していた。
 もくもくと一枚食べ、首を傾げる。
「サーニャ、もう寝た方がイイゾ。パンケーキは後でまた食べれば良いシ」
 サーニャはパンケーキの皿を傍らのテーブルに置くと、ベッドに腰掛けた。心配そうに見つめるエイラを見る。
「ねえ、エイラ」
「どうしタ?」
「楽しかった?」
「私カ? まあ……」
 サーニャと並んでベッドに座るエイラ。途端にサーニャが体重を預けて来る。
 ふわふわとした、それでいて柔らかな感覚……触り心地、香り、表情……を見て感じているうちにエイラは何とも言えない気分になる。
「エイラ?」
「あ、イヤ、何でもナイ。サーニャが楽しければ、私も楽しイ」
「そう。眠かったけど、楽しかった」
「良かったな、サーニャ」
「ありがとう、エイラ」
 エイラにもたれかかり、次第に身体が斜めになる。
「ねえ、エイラ」
「サーニャ、どうしタ?」
「蜂蜜、ちょっと濃かったかも」
 ちろっと舌を出すサーニャ。どきっとしながら、エイラは答えた。
「ルッキーニだナ。適当にべたべた塗ってたかラ……」
 エイラの言葉は続かなかった。突然、サーニャに手を舐められたのだ。
「さささサーニャ?」
「ねえ、エイラ」
 いつの間にか全体重を預けられ、ごろんとベッドに横たわる二人。
 サーニャはそっとエイラの手と肩を掴むと、そのままエイラに迫った。
「エイラ、べーってしてみて」
「え、ナンデ?」
「ダメ?」
「……こ、こうカ?」
 エイラがおずおずと出した舌を、サーニャが舐める。二人の舌が自然と絡まる。
 余りの出来事に、エイラは硬直したまま。
 サーニャは子猫みたいに、エイラの舌を舐め続けた。
 間もなく、舌が絡み、口吻へと変わる。
 サーニャに身体を覆われたままのエイラは為す術もなく、ただただサーニャを受け容れる他無かった。
「ねえ、エイラ」
「サーニャ、どうしてこんな事ヲ」
「舌にまとわりついた甘いの、直るかと思って」
「ええッ」
「甘かった?」
 サーニャがエイラをそっと抱きしめ、頭を胸に抱いた。
「そ、そ、そりゃモウ」
「もうちょっとだけ、お願い。エイラ」
「さ、サーニャ……」
 エイラは何か言いたかったが、サーニャの瞳を見、何も言葉に出来なくなり……ただただ、サーニャのなすがまま。

 やがて時計の短針がひとつ進んだ頃、二人は抱き合ったまま、眠りに落ちていた。
 部屋には蜂蜜とパンケーキの香りが微かに漂い、名残を惜しむかの様。
 エイラはそっと目を開けた。サーニャは目を閉じ、小さく呼吸している。
「サーニャ」
 ふっと沸き上がる感情。それらが混然となり、ひとつの言葉に完結した。
「誕生日、おめでとナ」
 サーニャが微笑んだ気がした。聞こえているのかは分からない。でもエイラはそれで良かった。
 エイラも目を閉じ、……自然と笑みを浮かべていた。

end


前話:1141

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