土曜ストライク劇場~リネットは見ていた・甘味編~


私、リネット・ビショップ。
階級は軍曹で、趣味は家事全般です。
今日は天気も良くて、とっても気持ちいい日和です。
何かお菓子でも作って、芳佳ちゃんを誘ってお散歩でもしようかと思い、キッチンへ向かっています。
そして、意気揚々と扉を開けるとそこは――

「……ペリーヌさん……今、なんて……」
「くだらない、と言ったんです!」

扉を開けるとそこは、修羅場の現場真っ只中でした。

「くだらないってなんですか!」
「くだらないは、くだらないですわ! 扶桑の豆知識だか何だか知らないけど、そんなものは扶桑でだけ披露してなさいな!」

バチバチィッ!

エフェクトなのか、実際に飛んでいるのか、机を挟んで睨み合う芳佳ちゃんとペリーヌさんの間に火花が散っている気がする。
辺りを見回してみると、他の皆は気にしていない様なそぶりをしつつ、二人の言い争いに耳を傾けている様であった。

「だいたいペリーヌさんは分かっていないんです!」
「な、何ですって?」

突然芳佳ちゃんは、机を両手で叩きながら叫ぶように言い放った。

「枝豆は大豆なんですよ!?」
「……は?」

『ブフッ!?』

芳佳ちゃんの突然な超展開発言に、目を点にするペリーヌさん。
部屋の奥の方では、何故か坂本少佐とミーナ中佐が肩を震わせながら俯いていた。

「そ、それが、なんだって言うの!」
「はぁ、ペリーヌさんは駄目駄目ですね」
「なっ!? っ、何なんですの、この豆狸!!」

オーバーアクションで首を振る芳佳ちゃん。
キッ、と睨むペリーヌさんに対し、勢い良く指を向けて言った。

「それです、その豆狸。「まめ」、と言う言葉は「まじめ」だとか「健康なようす」だとか言う意味なんですよ!?」
「……はぁ、それが何?」
「ペリーヌさんは私を褒めてるんですか!? ツンデレのデレ期が分かり辛いんですよ!!」

……最近、芳佳ちゃんが遠くに感じます。
でも、見ている限り、芳佳ちゃんはおお真面目で。
ペリーヌさんも口をぱくぱくさせている。
ちなみに今ので、シャーリーさんとハルトマン中尉、エイラさんが机に突っ伏せた。
何やらツボにはまった様だ。
……ところで、一体二人は何について言い争っているのだろうか。
私は、一番近くで壁に背を預けて立っていたバルクホルンさんに近付いた。


「あの、芳佳ちゃんとペリーヌさんは何について口論しているんですか?」
「あ、ああ……あー、いや、それなんだが……」

何やら歯切れの悪そうなバルクホルンさん。
そうバルクホルンさんが言い淀んでいたその時、ペリーヌさんが机を叩きあげ、反攻の狼煙をあげた。

「さっきから訳の分からない事を!! ですが、最後にもう一度だけ言っておきますわ!!」
「言いましたね!? 坂本さんにも言われたことないのに!!」
「言って何が悪いんですの……ってまだ言ってませんわよ!! そのボブカットのウィッグを片付けなさい!!」

『……くふッ…!』

サーニャちゃんとバルクホルンさん、撃沈。
ネタを仕込むなんて……芳佳ちゃん、恐ろしい子っ!!
一方で、ルッキーニちゃんは……よく眠っている様だった。
そうした後、ペリーヌさんは小さく息を吐くと、ビシィッと芳佳ちゃんに指を突き付けた。

「食事に納豆を出すまでは妥協して差し上げます! で す け ど、納豆に砂糖を入れるなんて、有り得なさ甚だしい事は即刻お止めなさい!!」
「粘り気に磨きがかかるんですよ!?」

負けじと食い下がる芳佳ちゃん。
……でも、いやまさか、この言い争いの発端って言うのは……。
ポン、とバルクホルンさんが私の肩に手を添えた。
まだ、微妙に口元が緩んでいた。

「……っ、ふふ…ぁ、すまない。こほん、聞いての通りだ。もうかれこれ一時間近く似たよなやり取りが続いていて……ッ、くふっ……」

再び口元を押さえ、俯きながら肩を震わせるバルクホルンさん。
何か思い出してしまったらしい。
そうして再び、その笑いの発信源に目を向ける。
今はどう話が流れたのか、カレーにリンゴとハチミツがどうだとかで言い争いが展開していた。

なんだかんだとありますが、結局は今日も今日とて平和です。
とりあえず話を聞いていただけで、違うベクトルでの糖分の過剰摂取が期待される事は良く分かった。
お菓子の甘さも今は不要。
私も皆さんに習ってコーヒー(無糖)を入れ、こんな二人のよく分からない言い争いを眺める事にしたのであった。



おわり


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