フュージョン:01
巨大なディオミディアがブリタニアを目指して驀進していく。
彼にドーバーを越えさせれば、市街は火の海にされてしまう。
このままでは罪のない大勢の市民が犠牲になってしまうのだ。
凶悪な白鯨に挑むオルカの様に、501のウィッチたちが懸命に食い下がる。
しかし白鯨の装甲は厚く、彼女たちの武器では傷つけることも難しい。
更にハリネズミのような防御火器が、無数のアイスキャンディを吐き出しており、近づくこともままならない。
サーニャは執拗な照準のアイスキャンディをどうにか振り切ると、態勢を整えるため一旦上空へ待避した。
「サーニャ、大丈夫カ?」
エイラが同僚を気遣って接近してきた。
サーニャは横目にそれを確認すると、直ぐに巨鯨に視線を戻す。
全力攻撃でも敵はビクともしていない。
悠然とした鯨を見るサーニャの目がどんどん厳しくなってくる。
「どうした? どこか被弾したのカ?」
サーニャはおどおどしたエイラを一瞥し、意を決したように呟いた。
「このままでは勝てない。エイラ……合体するわ……」
「お、おう……えぇっ? 合体?」
釣られて頷いたエイラが、思わずサーニャを二度見する。
エイラは意味が分からずポカンとしてしまう。
「合体するしかアレを墜とす手はないわ……するの? しないの?」
「い、いや。合体って……こんなところで……その……ヤルのカ?」
エイラは真っ赤になって上下左右を見回す。
あちこちで501のみんなが必死で戦っているのが見えた。
「何してるの……さっさとして……」
サーニャが冷たく厳しい声で命令してくるが、エイラはどうしたものかとオロオロするばかり。
「もういい……合体は芳佳ちゃんとするから」
イライラきたサーニャはプイと横を向いてしまった。
サーニャを怒らせてしまったと気付き、エイラはいよいよテンパッてくる。
「けど……いや、分かったヨ」
エイラはサーニャに嫌われたくないので、慌てて制服の前をはだけさせ始めた。
それを見たサーニャが眉を吊り上げる。
「な、何をしてるの?」
「い、いや……だから合体を……サーニャが言ったんダロ」
「それって違う……私が言ってるのは……合体してエイラーニャに……」
真っ赤になって怒るサーニャの傍らを、赤い流星が駆け抜けていった。
ミーナとバルクホルンの合体したフュージョンスタイル、ゲルミーナである。
ゲルミーナは弾幕をかいくぐると、必殺の37ミリ砲を鯨に浴びせかけた。
至近距離からの痛撃に、さしもの巨鯨もグラリと身を崩した。
次の瞬間、翼の根元から炎を噴き上げた鯨は、真っ二つになって墜落していった。
「あなたがボヤボヤしてるから……」
訳が分からず、エイラは目を丸くしてキョロキョロするだけ。
「もうヘタレとは合体しないわ……さよなら……」
背面ダイブて降下していくサーニャを、エイラはただ黙って見送ることしかできなかった。