武子の誕生日プレゼント


 南リベリオン大陸の南端にあるノイエ・カールスラント。
 ここにはネウロイに母国を追われた多数のカールスラント国民、皇帝一家、技術者や産業が疎開している。
 疎開前に同国の守りについていた加藤武子も皇帝一家の護衛任務に当たり、船団に付き従ってここまでやってきた。
 そして、彼女はそのままノイエ・カールスラントにとどまり、臨時政府の防空指揮官を任されている。

 南リベリオンは前線から遠く、後方と言って差し支えない。
 たまに小規模の空襲があるくらいだが、それも嫌がらせ程度のものであり、武子の指揮する航空隊で充分対応できた。
「仲間が欧州で苦戦しているのに。私だけがこんなことでいいの?」
 焦燥に駆られた武子は何度も政府に転属を願い出ているが、今だ色好い返事は貰えていない。

 武子は世界でも有数のスーパーエースである。
 彼女ほどのエースを獲得することは困難であり、掌中の玉をみすみす手放す馬鹿などいるはずもない。
 政府高官は何かと理由を付けては武子の申し出を断り、また色々な餌で彼女を引き止めようと必死になっている。
 今日、武子が招かれている皇帝主催のパーティーも、そんな引き止め工作の一環と思われた。
「パーティーより戦場だわ。今の私に必要なのは……」
 不快感を露わにする武子だったが、それでも皇帝の招きを断ることはできない。
 やむを得ずパーティードレスに着替えた武子は、送迎車として回されたベンツに乗り込んだ。

 皇帝のお召し車なのであろうか、乗り込んだベンツは最高級車であった。
 エンジンはストレスなく回り、サスペンションやシートに至るまで高品質なものが使われている。
 秘密の会議室としても使われるのだろう、運転席と後部座席の間はアクリルの遮蔽版で仕切られていた。
 全席には厳めしい軍服を着た親衛隊員が座り、無言の威圧を放っている。
 彼らのことを余り好いていない武子には、遮蔽版の存在がありがたかった。
 皇帝フリードリヒ四世は善人だが、親衛隊と陸軍の一部には危険な臭いがする。
 カールスラントが世界に冠たる国家という、選民思想が見え隠れするのだ。
 ネウロイを撃退して世界に平和が戻った時、今度はカールスラントとの戦いになるのでは、とまで武子は考えてしまう。
「考えすぎかもね」
 何にしても、現在のカールスラントは味方であり、ネウロイに勝つためには必要不可欠な友邦国なのである。

 ふと、我に返った武子はおかしなことに気がついた。
 臨時政府の入ったホテルとは違う方向に、自分の乗った車が走っているのだ。
「運転手さん。道が違うようですけど?」
 武子がアクリル板をノックすると助手席の親衛隊員が振り返る。
 その顔を見た武子は思わず息を飲んでしまった。
「これでいいんですよ。フロイライン」
 そう答えた親衛隊員の顔はガスマスクで覆われていた。

「ひっ?」
 武子が腰を浮かしかけると同時に、床と天井から白い煙が吹き出してきた。
「うぅっ? ゴホ、ゴホッ」
 咳き込みながら窓を開けようとするが、ウィンドのハンドルは固定されていてビクともしない。
「ゴホッ……と、智子……」
 意識を失う寸前、武子の脳裏に浮かんだのは端正な戦友の笑顔であった。

                            *    *   *

「う……うぅ~ん……?」
 暗闇に光明が差し込むと同時に、武子は徐々に意識を取り戻した。
 ガスの影響なのか、まだ空を飛んでいる時のような浮遊感があった。
「ガス? そうだ。私、車に乗ってて変なガスを吸わされて……アァーァッ?」
 その時になって、ようやく武子は自分の置かれている状況を正確に把握できた。
 ドレスは脱がされ、下着も全て剥ぎ取られている。
 そして後ろ手に縛られた上、天井から鎖で吊られているのだ。
 先程感じた浮遊感の正体はこれであった。

「お目覚めですか、フロイライン」
 背後から呼び掛ける声がして、武子は反射的に振り返る。
 その動きの反動で、体がブラブラと不安定に揺れた。
 背後に立っていた親衛隊員たちが、武子の体を押さえて揺れを静める。
「あなた達は何者なのっ。私をどうするつもりなのっ?」
 もちろん礼を言うこともなく、武子はガスマスクを着けたままの隊員たちを詰問する。
「見ての通りの親衛隊員です。今日はあなたの誕生日を祝うために一席設けさせてもらったのですよ」
「お誕生日、おめでとうございます」

 隊員たちがガスマスクを取ると、驚いたことに女の顔が現れた。
 いずれも大柄で屈強そうであるが、金髪も豊かなゲルマン美人である。
 低くくぐもっていた声もガスマスクのせいであった。
「あなたは現在のノイエ・カールスラントにとって必要な逸材。決して国外に流出させてはならぬとの厳命が下っているのです」
 親衛隊員は着ている制服を脱ぎながら説明した。
 鍛え上げられた筋肉が露出していく。
 これではたとえ戒めを解かれても、とてもではないが逃げ出せそうにない。
「そこであなたに新たな悦びを覚えていただくことにしたのです。本物ではないから物足りないかもしれませんが……」
 親衛隊員たちは全裸になると、禍々しい形の張り型を取り出した。
 それを自分の股間に押し当てると、革ベルトを使って腰に固定する。

 彼女らの企みに気付き、武子は怖気を振るった。
 あんな巨大なモノで突かれたら、とてもではないが無事では済まない。
「いやぁっ。それ、おっき過ぎるぅ」
 武子は真っ青になった顔を激しく左右に振る。
 それでも目だけは極太のモノに釘付けになっている。
「大丈夫ですわ。潤滑剤を使用しますから」
「ワセリンはありませんけど。代わりに阿片クリームをタップリと塗って差し上げますわ」
 金髪の隊員は妖艶な笑みを漏らすと、己のモノに強烈な習慣性を持つ麻薬のペーストを塗りたくっていく。

「いやぁ。阿片なんて嫌ぁっ」
 ガッシリと尻を抱えられた武子が悲鳴を上げる。
「いやぁっ、堪忍してぇ」
 狙いを定めさせまいと、武子は尻を振り乱そうとする。
 それでも怪力の前にはどうにもならない。
「それじゃ、行きますわよ」
 もの凄い圧迫感がアヌスに襲いかかったと思うや、身を切られるような痛みが脳天にまで突き抜けた。
 一気に貫かれたのである。
「ギャアァァァッ」
 大きく開かれた武子の口から絶叫が迸った。

                            *    *   *

 それから数時間後、武子の意識はとろっとろにとろけていた。
 2人の超絶テクニックと、直腸の粘膜から吸収してしまった阿片の影響であった。
「おちんぽぉ……もっとぉ……」
 開きっぱなしになった口からは、譫言のようなおねだりとヨダレが止めどなく漏れ出ている。
「こうなっては扶桑のエースもかたなしね。もう使い物にならないんじゃないかしら」
 金髪フィットネス女が嘲笑し、醒めた目で武子を見下ろす。
「あら。お薬欲しさに、今まで以上に頑張ってくれるんじゃなくて?」
 揃って浴びせられた嘲笑は、武子の耳には届いていなかった。

「武子。お誕生日、おめでとう」


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