お仕置き


全く、この人ときたら。
本当に何も分ってないんだから。今回ばかりは許せない。私の居ない間に好き勝手なことをして。

私が居ない時を見計らってリーネさんの体を触ってる事だって知ってるんだから。
本当に一度、きついお仕置きが必要みたいね…


~お仕置き~


すっかり大人しくなったエイラを引きずり、彼女の部屋まで連れて行く。
エイラを床に正座させて、私はベッドへ。

さーにゃぁ…
そんな情けない声を出すものだから、なんだか少し腹が立った。
何も言わずにエイラを見下ろす。

「ウゥ…やっぱり怒ってるノカ…?」

上目遣いで私の顔色を伺ってくるエイラ。戦闘中の凛々しく引き締まった顔は面影もない。

「…そうね」
笑顔で簡潔にそう答えたら、エイラの顔がみるみる強張っていく。私そんなに怖い顔してるのかしら?
少しショックかもしれない。

「…ほ、本当に違うンダヨ、サーニャ!!誤解だっテ!ミヤフジの言い方が悪かったンダ。イヤ、元々
は私が悪いンだケド…でもさっきも言ったケド、誓って何もしてナイ!信じてクレ」

焦って捲し立てるように話すエイラ。
信じるも信じないも、私はエイラの事を誰よりも信頼している。
引っ込み思案な私でもエイラが居たからこそこの隊でやっていけたし、オラーシャに居た時の様に
寂しい思いもしていない。

たまにお父様やお母様の事を思って泣いたりするけど、抱きしめてくれるエイラに独りではないと改めて
実感させられる。
…何よりも私がエイラ以外の人のベッドに潜り込むなんて考えられない。


……それなのにこの人は

足が痺れてきたのか、プルプル震えているエイラを改めて見る。


「ねぇ…エイラ」
「な、何ダ?サーニャ」
「どうして私には触れてくれないの?」
「…え?」
「私、知ってるのよ…?」

エイラの震えが止まった。

「な、何ヲ…?」

エイラの頬を汗が伝う。

「聞きたいの?」
「……。」

足の痺れからくるものか、私が紡いだ言葉によるものか、はたまたその両方か。
エイラは滝のように汗を流しながら何か言おうと口をパクパクさせている。

少し苛め過ぎたかしら?
これくらいで参るようじゃ、今から考えているお仕置きには絶えられないかもしれないわね。
でも、今日の私は本当に怒っている。
エイラがヘタレても絶対に止めてあげないんだから。

「…足。」
「へ?」
「足、痺れたでしょう?ベッドに座ってもいいわよ」
「あ、あぁ…」

言われた通りに私の隣に座るエイラ。凄く動揺してるみたい。私の方をチラチラと見てきて、私
よりも年上なのに、その姿はまるで怒られている子供のよう。
実際、私は怒っているのだけれど。

隣に座るエイラの手を取り、私の胸に押し当てた。

「さっささささーにゃぁあ!?」

予想通りの反応。声も手も震えてる。それを無視して彼女に語りかける。

「私の体、震えるほど触りたくないの…?」

違う。
私は知っている。エイラは私の事を、本当に大切にしてくれる。私に触れないのも、きっと私を
傷付けたくないから。……ヘタレなのもあるかもしれないけど。

でも、私はエイラになら何時でも触れられていたい。支えられるだけじゃなくて、抱きしめられる
だけじゃなくて、もっともっと…


本当は芳佳ちゃんと何も無かったことぐらい分ってる。
許せないのは、一緒に寝た事。私の指定席を易々と差し出した事。
実際にはそうでない事は分っていても、エイラにとって私はその程度だと言われているようで悲しくて、
寂しくて。ついつい本人に八つ当たりしてしまったのだ。
言わばこれは、私の我侭。

「…!!サーニャ!大丈夫カ?どっか痛いノカ?!」
「どうして?」
「だってサーニャ、泣いてる…」
「…え?」

色々と思案していたら何時の間にか泣いていたようだ。
空いている手でエイラが拭ってくれる。ああもう、この人は…
自分の事よりも、私の事ばかりで。怒られていると言うのに、私が泣き出すと心配して震えなんてなくなって
オロオロして。

本当にもう、エイラなんか…

「ねえ、エイラ。私が泣いているのはエイラのせいなのよ」
「エェッ!ナ、ナンデ…」
「だから、ね。エイラ。キス…して?」
「エェッ!キッキス!?」
「してくれるまでこの手、放してあげない。これはお仕置きなんだから」

エイラの手は未だに私の胸にある。もちろん私がしっかり捕まえた状態で。
たっぷり5分。耳まで真っ赤にして唸り続けるエイラ。

出てくる言葉は2つに1つ。
でも今日は最後までゆるしてあげないんだから。だって私は怒っているんだもの。

「…ゥゥウゥ…」
「嫌、なの…?」
「ちっ違」
「じゃあ早くして」

急かすように目を瞑る。

「キョ、キョウダケ…ダカンナ…」

唇に柔らかい感触。少し震えてるところが可愛い。
約束通り手を放してあげる。その代わり、唇は放してあげない。
エイラの首に腕を回し、深いキス。

舌を割り入れ、硬直している彼女の舌を絡めとり、歯列をなぞる。
「ふぅっ…ん…さ…にゃ……んむっ…」
苦しいのか、顔を真っ赤にして私の服を掴むエイラ。そんな仕草も可愛いと思いながら尚も吸い上げる。

突然何か吹っ切れたのか、今度は彼女の方から舌を絡めてきた。
その以外な行動に驚いていると、そのままベッドへと押し倒される。

あ…ふかふか…
胸の鼓動は早いのに、悠長にそんな事を考える。
エイラに合わせて顔の角度を変え、差し込まれる彼女の舌を受け入れて堪能する。

「んんっ!…えい…らっ…ぷは……えいら………だい…す…き」
「っは……サー、ニャ……私も…モゥ………………ん?」

夜間哨戒明けで寝ていないのと酸欠で、私はそこで意識を手放した。

深い眠りに落ちる寸前
「そ、ソンナ……さ~にゃぁ」
と、何とも情けないエイラの声を聞いたけど、これはお仕置きなんだから続きはまた今度。…と思ったけど
強気なエイラもかっこよかったから、惜しい事したかな…


でも、意気地無しのエイラに火をつける方法は分ったから、それは次回のお楽しみに取っておこう。

今は私の苦手とする太陽がてっぺんまで昇っていて、私はエイラの暖かい匂いに包まれて眠りに付く時間
なんだから…


fin



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